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その3


気がつくと私は、すぐにでも学校に行けそうな格好で街をうろうろと歩いていた。よく見ると制服はとても綺麗で染み一つなく、まるでクリーニングから帰ってすぐのようだった。

辺りは薄暗く黄昏時のよう……、いやむしろ夜明け、みたいだ。朝帰りかよ。

なんだか首元に違和感を覚える。

この首を締められている感じは……、ネックレスをしているのか。けど、私こんなの持ってたっけ?鍵がついたものは覚えがない。


あれ……?私、今まで何してたんだっけ?何だか頭ん中がごちゃごちゃしていて全然思い出せない。

えーと、私の名前は、白部恣意子。うん、大丈夫。年齢は?17。現在は……高校生。青銅高校に通っていて友達はそこそこ。その中でも仲が良さげなのが、Yちゃん、Hさん、あと……F。うん、そんなところだろう。

だけど肝心のことが思い出せない。最後の記憶は昨日学校から家に帰ってくるところまでだ。それ以降から今に至る部分が欠落している。

そのことに気づいてしまうと急に寒気がした。―――怖い

たった数時間のことであるのに、少しでも自分という存在の所在証明ができないことがこんなにも怖いなんて思ったこともなかった。

その時間に私が何をして何を考えていたか分からない。なんだこの感覚?ああ頭の中がぐちゃぐちゃだ。思考はマイナスで、そのくせ風邪でもひいたみたいに頭が痛い。分からない。分からない。分か―――プルルルルル

突然の着信音に思わず思考が停止する。な、なに?

発信者を確認する余裕もなく慌てて通話ボタンを押してスマホを耳にあてる。

「―――――――――――――――」

果たしてそこから聞こえてきたのは母親の声だった。

え…………あ、いや、大丈夫だって。何も無いよ。友達、そう友達んちに泊まらせてもらっただけだから。

え?どういうこと?電話がきた?それ大変だよね。うん、私は何も知らないけど。うん、分かった。大丈夫だよ。

そう言って電話を切る。

よく分からないけれど、どうやら大変なことが起きているらしい。

私の友達、F……笛吹絵文が現在進行系で行方不明になってしまっているというのだ。


人間というのは案外異常事態にたいして鈍感らしい。絵文のことを心配なはずなのに感情が全く揺れ動かないのだ。自分の記憶がとんでいるということよりも友達のことを大事であるべきなのに。これじゃまるで私が自己中心的であるかのようじゃないか。いくら自堕落で刹那的でも、そんな簡単に友達を切り捨てるなんて駄目だ。

私が絵文を探してあげないと。そうだよ。それが一番いい。

ならまずは何をすればいい?聞き込みか?情報収集か?うん、それでいこう。

とりあえずのところ私は、学校へ行くことにした。友達のことは友達に聞くのが一番だろうと判断したからだ。


行き先を決めて一歩を踏み出す。

これが私の未来の行き先も決める一歩であることなんて露知らず。



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