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その1
「忘れたい記憶に鍵をかけてみませんか?鍵屋にお任せを」
そんな謳い文句の貼り紙を見つけた時、私はよくあるジョークの類いか、新手の宗教の勧誘かだろうと考えた。実際、怪しげなチラシなんて街中に広がっているし。
その貼り紙だって学校から家に帰るまでの道のりで一番疲れる坂道を上りきり、一息ついたところでたまたま見つけたのだ。そうでなければ沢山あるチラシの中の1枚として素通りしていただろう。
もっとも見つけたところで私には関係無いのだが。
どうせ毎日を自堕落に刹那的に生きているのだ。要らないのは確かであるが、だからといって放っておけば過去に埋もれていくようなものばかりなので、消す価値すらない。
しかし、友達に見せて、笑い話にして盛り上がるのも良いかと思いつき、その貼り紙をビリっとはがして持って帰ることにした。
そんな簡単にするなとか思われるだろうが、特に深い考えもないのであっさりできてしまう。伊達にぬるく生きてねーぜ。
はがした貼り紙を丸めて鞄に押し込み、私は帰路を急ぐ。この先に何が待ち受けるかも知らないままに。




