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旦那を探して三千里  作者: 磁石
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第九話 大戦争時代

 大戦争時代。

 それはアーシア大陸全土の戦乱と激動の時代。

 始まりはアーシア大陸の中央部にある国で起こった内戦であったとされる。

 数百人程度の人が領地の権利を求めて争う程度であったそれは、半年後に、突如にして大陸全土を巻き込んだ大戦争へと変貌し三十年の月日を経て収束した。

 歴史家達はこの大戦争の始めりについて様々な推察を打ち立てるが、それを証明するような記録は未だ発見されていない。

 ただ、突然にアーシア大陸にある全ての国が戦線布告し、一日にして大陸全土が戦乱の世になったことだけは長寿である竜人族や森人族の口伝からわかっている。


 この大戦争には謎が多い。

 しかし、その中で最も謎が多いのは大戦争が始まってからの十年、今では混沌の十年と呼ばれる頃である。

 先に述べたように、そもそも大戦争の原因も定かではに上に、この混沌の十年には様々な制約があった。

 制約というと語弊がある、暗黙の了解の方が正しいだろう。

 明文化されていないのにも関わらず、この時期は誰もがそれに従った。


「その一つが、相手の国を占領しないことね。領土は奪い合うけど属国になる、属国にする国は一つもなかったの。国同士が同盟を組んで争うこともあったけど、その同盟もどんなに国力差があっても必ず対等な同盟だったし、それに・・・・・・」

「テディナ、前置きが長いですよ」

「おっと、いけない。で、何で大戦争時代の本が貴重なのかというと・・・・・・」


 この大戦争の時代は技、魔法、スキルの大発展時代であり、次から次へと新しいものが開発、発見された。

 それにも関わらず、その技や魔法に関する書物がほとんどないのだ。

 これらの開発発見を行ったのが、書物をあまり残さない冒険者であったこともその原因の一つではあるだろうが、それを差し引いてもあまりにも少ない。

 今存在する大戦争時代の本は、冒険者のお付きの人の手記であったり、ギルドの事務的な記録であったりと、彼ら冒険者が自ら書いた本ではなく、技や魔法が存在することは書かれていてもその習得方法はほとんど分からない。

 それでも、そういった技や魔法、スキルが存在しているということだけでも探究者達には十分な情報である。

 各国、特に軍部が血眼になって探しているが、手記や記録ですら大戦争の戦乱にのまれ消失してしまったものも多く、見つかるのは断片ばかりである。


「長寿種族の人たちも戦争で亡くなった人が多くて、口伝も大した情報が無いの。もし、そのげーむって本が混沌の十年に書かれたものなら売れば一生遊んで暮らせるんじゃないかしら」


 ちなみに、テディナがつけているアイテムポーチも大戦争時代に作られた物で、今では失われた魔法、アイテムボックスが込められた魔道具である。

 比較的よく見つかる魔道具とはいえ、最低でも金貨三十枚はするとのこと。

 この話を聞いた時、サクラは彼らの前でアイテムボックスを使わないでよかったと胸を撫で下ろした。


 しかし、混沌の十年か。

 たしかにこちらから見れば不可解であろうな。


 サクラからすれば実態を知っているから謎でも何でもない。

 始まりの内戦は、βテスト時の事だろう。

 参加人数を制限したクローズドβテストであったため、プレイヤーは数百人しかおらず、設定上で国軍と革命軍との内戦となっていた。

 それが突如、アーシア大陸全土の大戦争になったのは、単にサービスが開始しただけである。

 兆候もなく一日で乱世になったのはそのためだ。

 そしておそらく混沌の十年と呼ばれる頃がゲームのサービスが続いた時だろう。

 サクラが亡くなった時は七年目だったから、その後三年続いたわけだ。

 暗黙の了解も、属国にしないのも、対等な同盟も当たり前。

 ゲームなのだから。

 スキル等の発明発見も、月一であった大型アップデートで追加されていっただけのこと。

 冒険者が残した書物なんかあるわけない。

 全てメニューウィンドウでやり取りされていたのだから。

 現存する魔道具に関しては、多分プレイヤーによって店売りされたものだろう。

 アイテムポーチなんて容量が少ないから、サクラもよく売っていた。


「さて、サクラちゃん、そろそろげーむって本がどれだけ貴重な物なのかわかったかな?」

「うっ、そ、そうじゃな」

「いえ、わかってないようね。ここは、もっとじっくり・・・・・・」

「テディナ、そこまでです。もう街の門に着きましたよ」

「仕方がない、この続きは宿でじっくり話しましょう」


 も、もう、勘弁してくれ

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