第六話 [銀の矢]との一夜
前回の投稿から一週間経ってしまったので、とりあえず現段階で投稿します。
でも、直したい所いっぱいあるし、何より短いから、改編予定です
「いやあ、嬢ちゃんのお陰で命拾いしたぜ」
「全くです。もうダメかと思いましたよ」
「・・・・・・礼を言う」
「助けてくれてありがとね」
今、サクラはガントル達とドラゴニックウルフの屍骸から少し離れた場所で焚き火を囲んでいた。
あの後、サクラはドラゴニックウルフの下からアルバを助け出すと、三人でガントルとレギンを探した。
二人共満身創痍ではあったが生きていて、テディナが回復魔法をかけるとすぐに元気になった。
ただ、ガントルの鎧は大きく凹んでしまっていて、使い物にならなくなってしまった。
盾も無くしてしまうし、散々な状態ではあったが、ガントルは命があるだけ儲け物と豪快に笑った。
「運が良かったのじゃよ、ワシも、お主らも」
そもそも、サクラが魔力を持っているか分からなかったし、持っていたとしても、魔力が足りなくて魔法が発動しなかったかもしれない。
アースランスはともかくイルシールドなんてゲーム中盤の魔法だ。
魔力が足りない可能性は十分にあった。
「ははは、ちげえねえ。嬢ちゃんと会えたことを女神に感謝だな」
少しサクラの意図したものと違うが、ガントルは同意した。
「さて、こうして一段落出来たわけですし、そろそろお互いに自己紹介ぐらいしませんか?」
「む、そうじゃな」
サクラは彼らの名前くらいは分かるが、向こうはサクラの名前も知らない。
流石にそれは失礼だろう。
まずは、お互いに名前を名乗る。
「サクラ、ですか・・・・・・もしかして、他国の方ですか?」
「まあ、そうなる、かの」
おそらく他国どころの話ではないだろうが、確証があるわけではない。
サクラは話を合わせることにした。
その肯定に、アルバは納得の表情をした。
「そのような服は見たことなかったので、そうではないかと思ったんです」
「ところで、嬢ちゃんは何でこんな所にいるんだ? 俺たちは調査依頼で来たんだが」
「寝て、起きたらここにおった」
「はあ?」
「訳わからんじゃろう? 安心せい、ワシもわからん」
サクラはこれまでの経緯を説明する。
そうは言っても、多くのことはない。
目覚めたらこの森に居たこと、森を出たくて歩いたが日も落ちてきたので休もうと思ったこと、そこにガントルが吹っ飛んできて戦闘に巻き込まれたこと。
「目覚めたらって、なんとも胡散臭いといいますか・・・・・・」
「・・・・・・訳ありか?」
「間違いではないのう」
正直、自分でも胡散臭いと思う。
だが、全部話すと余計に胡散臭くなりそうなので、話さないことにした。
「まあ、いいんじゃない? サクラちゃんが話したくないって言うなら」
「しかしですね」
「サクラちゃんは命の恩人よ、恩人が話したくないなら引くべきでしょ。それに・・・・・・」
「それに、何です?」
「こーんな可愛い子が悪人のわけないじゃない」
テディナはサクラに抱きつくと、頬ずりした。
「あーん、すべすべ。子供っていいわねー」
「こら、やめんか!?」
「わ、髪の毛つやつやのさらさら。どうやって手入れしてるの?」
百五十センチに満たないサクラは、百六十センチを超えるテディナに、その身長差でなすがままにされる。
しばらくテディナはサクラの体を堪能していたが、頃合を見計らってレギンが引き剥がした。
「えー、もうちょっといいじゃない」
「・・・・・・話が進まん」
「まったく・・・・・・ごほん、さて、先ほどガントル殿が調査依頼でこの森に来たと言っておったが、お主らはもしかして冒険者か?」
少し乱れた髪を整えると、今度はサクラが質問した。
「おうよ、俺らは[銀の矢]って言ってな、自慢じゃねえがそこそこ有名なパーティだぜ」
「やはりか・・・・・・もう一つ聞きたい、ここは何処じゃ? 大陸名からたのむ」
「ここはアーシア大陸の東に位置するベルベルト帝国、フィリップス辺境伯領にある黒の森という所です」
「ああ、彼処か」
ん、ベルベルト帝国?
「ベルベルト王国ではなかったか?」
「帝国ですよ。王国だったのは二百年以上前のことですね」
「に、二百・・・・・・す、スマンが今は何年じゃ」
「帝国暦二百三十年、大陸歴で八百七十一年ですよ」
しかし、これではっきりした。
魔法があって、冒険者がいて、聞き覚えのある土地名、ここはサクラのやっていたゲームと同じ世界だ。
ただし、サクラがやっていたゲームでは大陸歴五百十四年だったから、三百五十年以上進んでしまっているが。
まいった、仏になれると思っとったが輪廻の途中だったようじゃの。
じゃが、全く知らない世界よりはマシか。
幸い、中級の魔法は使えるようじゃ、生活には困らんじゃろう。
「サクラちゃん?」
「ん、ああ、すまんな。考え事しておった」
「ねえ、サクラちゃんはこれからどうするの?」
「取り敢えずこの森から出たいのじゃが、道がわからなくてのう」
「じゃ、私達と一緒に街まで行きましょう」
「それは願ったり叶ったりじゃが、よいのか? お主らには調査があるのじゃろ。ワシとしては道を教えてもらうだけでも御の字なんじゃが」
「ああ、それはもう終わったから大丈夫よ」
聞けば、調査依頼の内容は黒の森の異変を調べることだった。
最近、この地域一帯の魔物の被害が急増した。
森の奥地にいるはずの魔物が人里近くまで出没するようになったためである。
しかし、何故急に奥地の魔物が出没するようになったのか。
その原因を調べるために、[銀の矢]が派遣されることになった。
「それでですね、おそらく先ほど倒した魔物、ドラゴニックウルフでしたか? あれが原因だと僕らは考えています」
ドラゴニックウルフはもともとこの黒の森に生息していない魔物だ。
それが突然やってきて森の奥を縄張りにしたことで、もしドラゴニックウルフが弱い魔物であったなら森を追い出されて終わりであったが、もともと居た魔物が外に流れていったのではないか。
そうであるなら、ドラゴニックウルフを倒したことで魔物の縄張りは元に戻り、被害は減るはずである。
「そういうわけで、僕たちは夜が明けたら本格的に剥ぎ取りをして街に戻ろうと思ってます。ですから、一緒に行くのに問題はありませんよ」
「ふむ、なら、お願いしようかの」
その後[銀の矢]の面々は交代で警備し、サクラはガントルが貸してくれた外套を敷いて眠りについた。
サクラも警備すると言ったが、断られてしまった。
「サクラちゃんって、随分古臭い喋り方するのね」
「異国の者らしいですから、帝国語を話せるだけマシなのでは?」
「そういえばそうね」
「きっと、帝国語を学んだ人がご老人だったんですよ」






