第五話 突然の出会い
で、できた。
だんだん更新速度が下がっていく・・・・・・・。
一週間、いや二週間以上は空かないように頑張ります。
一体これはどういうことなのか。
死んで極楽にやってきたと思ったが、どうやら三途の川を渡っていないらしい。
家族との別れは覚えているし、そもそも若返っていることからも此の世ではないことはわかる。
だが、夢というにはあまりにも感覚が鮮明で、試しにその辺の葉を口に含んで見る。
「うっ、苦い」
予想外の苦さにサクラはすぐに、んべっ、と葉っぱを吐き出す。
ともかく、味覚も間違いなく働いていることは確認できた。
「しかし、どうしたもんかのう」
正直、途方にくれている。
森の雰囲気が良いので不安は感じないが、右を向いても左を向いても木ばっかり。
その生え方に規則性はなく、この森には人の手が入っていないことが分かる。
野草の知識はあるし、野宿の経験もあるから、一日二日なら何とかなるだろう。
だが、出来ればそんな普通のご飯を食べたいし、寝床もせめて雨風が防げる所がいい。
「誰かー、誰かおらんのかー?」
大声で呼びかけてみるが、返事はない。
そもそも人の気配がない。
「・・・・・・移動するかの」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それから時々声を上げて呼びかけながら森の中を進んだ。
食料に関しては、野生のプラムを見つけたのでいくつか採っておいたが、人と会うことは出来なかった。
そうこうしているうちに日が傾いてきたので、サクラは大樹の根元に白装束を敷いて腰を下ろした。
ここまで結構歩いた気がするが、景色は変わらない。
サクラは大樹に体を預けると、そういえば似たようなことがあったことを思い出した。
あれは旦那と結婚して二年目のことだ。
二人で親戚の山にキノコ狩りに行ったとき、そこで遭難してしまった。
あの時は今ほど知識も経験もなかったため、不安で不安で、ずっと旦那にしがみついていた。
サクラがそんな状態なのでかえって冷静になったのか、旦那は休める場所を見つけた後は体力を温存するために動かず、救助を持つことにした。
その間サクラを落ち着かせるためにずっと声をかけ、優しい手つきで頭を撫でてくれた。
日が暮れてきたら火を起こし、旦那が余分に持ってきていたお昼のおにぎりと採ったキノコを焼いて食べた。
サクラはお腹が膨れたことで緊張が和らぎ、旦那に体を預けて寝てしまったが、旦那は一晩中起きて火の番をしてくれた。
翌朝起きた時には旦那に背負われていて、救助に来た親戚と一緒に山を下りる途中だった。
この時ほど旦那を頼もしく思ったことはない。
だが、今はサクラ一人。
そのことに気づいた途端、急に心細くなった。
もうあたりは真っ暗で、木々の隙間からは星が見える。
普段なら心奪われることであろう満天の星空も、今は夜であることをサクラに認識させるだけである。
会いたいのう。
小さく呟いた声は、誰の耳に届くことなく消えた。
ただし、それはより大きい音、咆哮によって上書きされたためだ。
グウオオオオオオォォォォォォォン!!
「な、何じゃ今のは!?」
驚いて飛び起きたサクラは、あたりを伺う。
木に泊っていた鳥たちが一斉に飛び立つ。
ドコオン、ドコオン、ドコオオオオオン。
次に聞こえてきたのは、何か大きなものが地を打つような轟音で、その中には木々がメキメキと倒れる音が混じる。
音がだんだん近づいてくることに危機感を覚えたサクラは、いつでも動けるように身構えて、音が近づいてくる方を睨む。
かなり暗いが、幸いにして木々の隙間から差し込む月明かりのおかげで、何も見えないわけではない。
そうして警戒していたため、それにすぐ反応できた。
甲冑がかなりの勢いで飛んできた。
いや、正確には甲冑を着込んだ人がほぼ水平に勢いよく吹っ飛ばされてきた。
サクラは反射的に受け止めるように動いてから、失敗に気付いた。
甲冑の人はかなり大柄で、甲冑を合わせれば百キロは超えるだろう。
そんな人が勢いよく飛んで来ているのを受け止めるなど、小柄なサクラには不可能だ。
しかし、今から避けることは出来ないだろう。
サクラは腰を落として衝撃に備える。
それでも自身も吹き飛ばされるだろうと予想していたが、それは意外なほど軽かった。
子供が大好きな母親に抱きつくために体当たりするくらいだろうか。
かなり不思議なことだが、考えるのは後回しだ。
「おい、大丈夫か、しっかりせい!」
「ぐっ、あ、ああ、大丈夫だ」
甲冑は傷だらけであちこち凹んでいたが、中の人は無事のようだ。
「オレを受け止めるなんて、嬢ちゃん力持ちだな」
「そんなことより、何が起こっているんじゃ?」
「ととっ、そうだった。嬢ちゃん、早く逃げろ!」
「じゃから、何が起こって・・・・・・」
「ガントル、無事ですか!?」
サクラの問いは新たにやってきた人に遮られた。
皮鎧を身につけ、弓を手にした青年が、こっちに慌てた様子でやってくる。
そして、ガントルと呼ばれた甲冑の人は立ち上がり、無事をアピールする。
「おう、何とかな」
「良かった。今、レギン達が足止めしてます。行けますか?」
「行ける、が、盾が吹っ飛んじまった」
「分かりました。所で、その子供は?」
「嬢ちゃん、まだ居たのか!? 逃げろって言ったろうが!」
「そう言われても、何が起きているのか知らねば闇雲に逃げるなる羽目になるからのう」
本当に危険から遠ざかるには、最低でも何から逃げるのかを知らなくてはならない。
じゃなければ、意図せずに虎口に飛び込んでしまうこともある。
「闇雲でもいいから逃げろ!」
「その訳を教えろと・・・・・・」
「そこまでです、来ますよ!」
突如、それは木々をなぎ倒して姿を現した。
全長十五メートル、高さ四メートル、体形は狼のようだが毛ではなく深緑の鱗におおわれており、顔はトカゲに近く、真紅な瞳の瞳孔は縦に割れている。
四肢は太く、おそらくサクラが腕を廻しても半分も行かないだろう。
牙も爪も鋭く、あれで襲われたらひとたまりもないだろう。
竜のような狼、それはサクラのやっていたゲーム中だけの存在。
「ドラゴニックウルフ・・・・・・なのか?」
「だから逃げろって言ったろうが! アルバ、この嬢ちゃんを頼んだ!」
「分かりました! 君、僕の後ろに」
ガントルは腰に吊っていたメイスを握るとドラゴニックウルフに向かって行く。
皮鎧の青年、アルバはサクラを背に庇うように立つと、ドラゴニックウルフの気を引かないよう徐々に下がっていく。
ドラゴニックウルフは向かってくるガントルを標的を定め、前足を縦に振りかぶった。
ガントルは、甲冑を着ているのにそれを感じさせないすばやい動きで、横に跳ぶことでそれを避けるとメイスでその前足を殴打する。
鱗が数枚割れメイスに付いた棘が浅く肌を傷つけるが、ドラゴニックウルフに効いた様子はない。
続く連撃をガントルは大きく後ろに跳ぶことで何とかかわす。
しかし完全には避けられず、爪がかすり体勢を大きく崩してしまう。
それをすかさずアルバが矢を射ってドラゴニックウルフの気をそらすことでカバーする。
ガントルは体勢を立て直すと、再びドラゴニックウルフに対峙する。
「ガントル、アルバ、生きてる!?」
「・・・・・・無事か?」
そこに足止めしていた二人の仲間だろう、軽装でタクトを持った赤い髪の女性と、馬鹿みたいに大きい戦斧を持ったひげもじゃの男がやってきた。
「遅えぞ! つーか、足止め出来てねえじゃねえか!」
「無茶言わないで、あたしとレギンじゃこれでももった方よ」
「・・・・・・テディナ、後にしろ」
ひげもじゃの男、レギンは、戦斧を構えてドラゴニックウルフを睨む。
「そうです二人とも、今は目の前に集中してください」
アルバに言われなくても分かっていたのだろう、赤い髪の女性、テディナとガントルはすぐにドラゴニックウルフと向き合う。
「レギン、ガントルと一緒に前衛を、僕が中衛でフォローします。テディナは後衛で大きいのをお願いします、それと、この子の護衛を」
「何でこんなところに女の子が!?」
「それも後です」
アルバとテディナが入れ替わるように立ち位置を換えると同時に戦闘が再開される。
「いい、絶対に前に出ちゃダメよ」
テディナは言い聞かせるようにサクラに声をかけると、タクトを構えて何やらつぶやき始める。
それに伴って黒い雲が頭上に立ち込める。
「ゲームと同じ詠唱じゃと!? まさか、魔法・・・」
だが、一語一句変わらないそれは、サクラには馴染み深く、その結果もサクラの想像通りだった。
テディナの長い詠唱の間、前衛でドラゴニックウルフを抑えていた二人は、詠唱の完了を見計らったアルバの指示で、さっと離れる。
そこにテディナの魔法が間髪入れずに発動する。
「[イル・サンダー]!!」
夜の闇を切り裂く落雷がドラゴニックウルフに落ち、轟音が起こる。
ギャオオオオオオオオオオオン!!
苦しげな咆哮を上げ、ドラゴニックウルフの足が止まる。
すかさずガントルとレギンが止めを刺そうと間を詰める。
その時、サクラはドラゴニックウルフの瞳が光るのを見た。
「いかん、下がれ!」
瞬間、ドラゴニックウルフは勢いよく回転し、尻尾を二人に叩きつけた。
サクラの叫びのおかげで辛うじてガードが間に合うが、無理をして崩れた体勢では踏ん張りは利かず、ガントルとレギンは大きく吹き飛ばされる。
「ガントル! レギン!」
仲間の安否に気を取られたアルバはドラゴニックウルフから意識を外してしまった。
「っ、しまっ」
それを見逃すような敵ではない。
アルバに跳びかかったドラゴニックウルフは、アルバを地面に倒すと前足で抑え動きを封じる。
一瞬で形勢を変えたドラゴニックウルフは、サクラとテディナの方を向くと大きく息を吸う。
サクラは知っている、この後に何が起こるのかを。
「ブレスじゃ!」
「っ、[シールド]!!」
テディナが防御壁を張るのと、ドラゴニックウルフが熱線を吐くのは同時だった。
半球上に張られた防御壁はブレスを一瞬受け止めるが、すぐにひびが入る。
多分、後一秒も持たない。
このままでは二人とも消し炭、いや、灰すら残らないだろう。
だからサクラは、それにかけた。
テディナの[シールド]を易々と破ったブレスは、今度こそ二人を焼き尽くすかと思われた。
アルバも、テディナも、そしてドラゴニックウルフも。
だが、そうはならない。
なぜなら、
「[イル・シールド]!!」
サクラが張った防御壁が熱線を弾いたからだ。
中級魔法の証であるイルが付いたシールドは割れることなく、サクラの髪を一本も燃やすことなくドラゴニックウルフの熱線を防ぎきる。
ドラゴニックウルフは完全に決まったはずの、自身渾身のブレスを防がれ動揺した。
だから、普段なら反応できたそれの回避が遅れた。
「[アースランス]!!」
ドラゴニックウルフの足元から円錐状の土の槍が生まれ、その体を、心臓を貫いた。
そういえば、他の小説は行間に一行入れるものがありますね。
そっちの方が読みやすいときもあるから、そうした方がいいのかな?
ああ、他人の意見がほしい。






