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灰村家の喧騒  作者: 平遥
4/17

灰村家の集会

「今日からテスト週間で部活ができない。だけど私は麻雀が打ちたい。よーし、部長命令だ!清次君の家で打たせなさい!」と萬田さんの一言で急遽麻雀部のメンバーが灰村家(我が家)に集合することとなった。

正直、いい迷惑だ。俺はテスト週間くらい勉強をしたいのに。……もちろん、嘘だが。

・・・・・・

「……お邪魔します。」

「あぁ、どうぞどうぞ。」

「お邪魔するよ。」

「えぇ、どうぞごゆっくり。」

「邪魔するよー!」

「邪魔するんなら帰ってください。」

「はーいっ!……ってちょいちょい!私だけ扱いが違うッ!」

「いや、萬田さんが余計なことを言わなければ俺は今日から落ち着いて勉強出来たハズだ。そう考えると、この扱いも仕方ないだろ?」

「……してたの?勉強。」

「いや、全く。」

「だよね。」

「大体、なんで俺の家なんだよ?」

「それは、私が部長だから!」

「……禿げてしまえ。」

「それ女子に向かって言う言葉!?」


おっと、うっかり。

・・・・・・

「へぇー、じゃあ亮くんは、再来年ウチの高校に入るの?」

「いや、兄さんと同じ学校は嫌なんで。」

「へぇー!だって!お兄さん!」

「……仲悪いの?」

「いやいや、竹内。分かってやれ。男兄弟には色々あるんだよ。」

「……筒井君に兄弟居たんだ。」

「あぁ、それはそれは小生意気な愚弟がね。」

「おお!筒井くんの弟の話も気になるねぇ!亮くん、知ってる?」

「うーん、知らない。」

「そうかい。」


何だ?何なのだこの状況は。一体誰が何をした?俺が飲み物を取りに行っている間に何があった?何故俺の友人は俺の弟と談笑している?っていうかそれ以前に何故亮がここにいる?何故親しげなのだ?俺が何をしたと言うんだ?いかん、疑問が多すぎる。


「あ、兄さん。ジュース俺の分も持ってきて!」

「今この三人の分を持ってきたばかりだよ!っていうか自分の分くらい自分で持ってこいよ!」

「良いから持ってこいって!」

「どっから目線だ!」

「上から。」

「やかましいわ!」

「早くして。早くしないと小学校の卒業アルバムこの人たちに公開するよ?」

「クズだな、お前!ってか俺の卒アルなんか見たい訳が「あ!スッゴい見たい!」」

乗るなよ!萬田さん!


やっぱりこいつは入れるんじゃなかった。


「で?持ってくる?それとも卒アル公開にする?」

「喜んで持ってこさせていただきます。氷はお1つで宜しいでしょうか?」

「3つ入れたまえ。」

「承知いたしました。」


卒アルを守るためならどこまでも卑屈になってやる。

・・・・・・

「ほれ、持ってきたぞ。」

「えっと、兄さんは……これだこれ。」

「おおっ!この頃から口喧しそうな顔してるね♪」

「……おさなかわいい。」

「へー、ほー、ふーん。」


何だ?何なのだこの状況は。一体誰が何をした?俺が飲み物を取りに行っている間に何があった?何故俺の友人は俺の卒アルを見ている?っていうかそれ以前に何故卒アルがここにある?何故約束を反故にされた?俺が何をしたと言うんだ?いかん、疑問が多すぎる。


「あ、兄さんお帰り。」

「よし、全員そこになおれ。手打ちにしてくれる。」

「蕎麦で。」

「じゃあ私はうどん。」

「んじゃあ、俺はラーメンかな。」

「……パスタ。」

「その手打ちじゃねーよ!というかお前ら息ピッタリだな。で?なんで卒アル公開が行われてるんだよ?」

「退屈だったから。」

「どつき回してやろうか、お前!」


どうしよう。なぜか亮の面倒臭さが三割増しだ。

・・・・・・

「さぁ皆、ここに集まった理由を忘れちゃあいけないよ。」

と萬田さんが言ったことで、東風戦でもやろうかい、という流れとなった。


「それにしてもよくわざわざ部室から麻雀セット持ってきたな。」

「まぁ、結構大変だったけどね。」

「……全部、筒井君が持ってた。」

「なんじゃそりゃ。大変だったな、筒井。」

「あれくらい大したことないさ。面倒なだけで。」

「あ、帰りは置いてくから明日部室に返しといてね。」

「……ラスを引いた人が返すって事でひとつ。」

「あ!良いねそれ。」


東一局 親・萬田 (25000点スタート)


「そういえば亮くんは麻雀できるの?」

「いや、アイツはルールすら分からない。」

「なんだ。久々に別の人と打てると思ったのに。」

「ネトマでもやってたらどうだ?」

「ん~、それもいいんだけど……。」

「なにか問題でも?」

「いや、単純にネトマで和了れないとCOMの所為にしたくなるんだよね。」

「そうか?」

「まぁ、そればっかりは気持ちの問題だな。」

「なんか適当に締められた!?」

「……立直リーチ。」

「竹内に黙々と聴牌された!?」

「……萬田が喋り過ぎなだけ。」

「俺もそう思う。」

「俺も。」

「ひどい!というか灰村君も筒井君も同じようなもんでしょう!」

「……ツモ。立直、面前ツモ、混一、白、ドラドラ。8000・4000。」


東二局 親・灰村


「うぅ……何もしない内に親が流れた。」

「騒いでるからだよ。」

「じゃあ黙ってる!」

「そうしてろ。」

「……。」コトッ

「……。」コトッ

「……。」コトッ

「……ポン。」コトッ

「……。」コトッ

「……。」コトッ

「……。」コトッ

「……ツモ。対々和、發、三暗刻。4000・2000。」

「せっかく黙って打ったのに!」

「いや、本来そういうもんだろ。」


東三局 親・筒井

「ところで竹内さんこの前の部活から調子よくない?」

「あー、あの純九連の時な。」

「……それほどでも。」

「いやいや、それほどでもあるだろ。」

「やっぱりあのお祓いが効いたんだね!」

「……多分。」

「いや、竹内さん。たまにはNOといってもいいんだよ?」


ところで突然だがここで俺の手牌をお見せしよう。


1m9m1s9s1p9p東南西北白發中


つまり国士無双13面待ちである。

しかも我が部のルールでは13面待ちはダブル役満ルールを採用している。これなら勝て……。

「おっ!それ、ロンだ。」

萬田さんが牌を河に捨てた瞬間筒井が言った。


「清一色のみ。16000。」


竹内さんの連荘は止まったか。だけど……悔っしいなぁ~……。ん?という事は?


「……トンじゃった!」

・・・・・。

「最終結果!1位竹内さん、2位筒井くん、3位灰村君、そして……4位、私。」

「じゃ、セットの持ち帰りよろしく。萬田。」

「はぁ~。傷心の乙女にそんな扱いをするの?」

「シバかれるぞ?」

「なんか冷たい!?」

「気のせいだ、気のせい。」


ダブル役満潰されて苛つくなんてガキっぽいことしてないよ?ホントダヨ?

・・・・・・

「じゃーねー!お邪魔しました。」

「じゃあな。また明日。」

「……お邪魔しました。」

「へいへい。じゃーなー。また明日。」


「兄さん、皆は帰ったの?」

「おう。ってか、途中からお前どこいってたんだ?」

「部屋に引きこもってた。」

「なんでまた?」

「だって人見知りなんだもの。」

「嘘つけい!本当は?」

「これを探してたから。」

「どつき回す!さっきのぶんも含めてどつき回す!」


亮が持っていたものは……中学校の卒アルであった。

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