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狂いの森  作者: 夢喰い
1/1

・・・喜劇のはじまり。

              ある素敵な夜の出来事です。


     【喜劇の幕開け・・・。幻想的な約束・・懐かしい記憶・・・美しい悲劇。】


        星・・・・星・・また一つ・・・星たちが消えていきます。


『ぁあ!!!お星様が消えちゃう!!!』・・・と駄々を捏ね、幼い少女は、なんとも言えない愛くるしい頬を「ぷっー」・・っとハリセンボンが怒って膨れた時のような顔をしています。彼女は足や手をバタバタと動かしはじめました。


・・・すると・・・彼女の足元のほうから、男の声が・・・まだ声変わりしていないような声で、

「まぁまぁ!!!落ち着いて・・・」・・・苦笑しながらも可愛い彼女をあやします。彼は道端で泣いていた可愛いこの少女を拾い上げ・・肩車をしてやりました。

最初彼女は嫌がって彼の髪の毛を引っ張っていましたが、・・どこか懐かしい記憶を感じ、彼に付いて行くことに・・・。


『だってだってだって・・お星様が消えたら、誰があたしを転ばないようにこの真っ暗くて、恐ろしい道を照らすの?』

・・彼女が寂しそうな表情で男に問い・・彼はそんな彼女に、

「そうですね・・・。」

・・・男は困ったように笑いながら・・・・

「僕が君の足元を転ばないように何度でも照らしてあげましょう。それだけでは足りないのなら僕が君の明かりにも、手足にも何にでもなりましょう。それでもまだ足りないのなら、君に僕の命を・・・・」

『本当に?』彼女の顔がパーッと星のように明るくります。

「えぇ、もちろんですよ」男は困ったように微笑みます。



月の綺麗なこの夜に彼は、一人、この無人な森をたった一人で、何も持たず歩いていました。


(僕は・・・・何故この場に居るのだろうか・・・何故・・・・?)


男は考えました。手を頭に抱えて、頭が壊れてなくなってしまいそうなくらいに悩んでいました。


男は考えた・・・頭と心がぐちゃぐちゃになるまで。


(何故僕がここに居る?・・わらない。)

(僕の名前は?・・わからない。)

(知人と一緒に来た筈だ?・・わからない。)

(ほかにもっと他に思い出せそうな事があるはずだ?・・わからない。)

(そうだ、家は、僕には帰る家があるはずだ?・・わからない。)

(家族は、確かに僕は温かい家庭を持っていて?・・わからない。)

(僕の記憶は確かにここにあるはず?・・わからない。)

(わからないのか?・・うん。)

(頭が痛い?・・わからない。)

(どうしたらわかる?・・わからない。)

(ぐちゃぐちゃになりそうだ?・・わからない。)

(本当にわからないのか?・・うん。)

(わからない?・・うん。)

(夢なのか?・・わからない。)

(わかれ!!!・・わからない?)

(頭が割れそうだ?・・わからない?)

(わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない・・・)

              (わからない。)


「はぁはぁ・・・・」


男は、何がなんだかわからなくなり、一人で「とぼとぼ」この狂った森を歩きました。


(あぁ・・もうわけがわからない・・・頭がぐちゃぐちゃになりそうだ・・・・・)


何時しか男の目下には隈ができてしまいました。

男は・・何日も何日も森をさまよいつづけました。


・・・狂い森を・・・・さまよう。歩き続ける・・・・・・ある日男は目を見開た。男の視線の先には懐かしい記憶が。

綺麗な幻想(子供)・・・男は今すぐにでも倒れてしまいそうな、「ボロボロ」になった身体をその幻想と向かわせる・・・・・細く・・・折れてしまいそうな身体を壊さないようにそっと抱き上げ、「ボロボロ」になった自分の肩に・・その子を乗せる。


その幻想は、驚き、『な、何するのよぉ』っと涙目で、足や手をバタつかせて「ボロボロ」な男の肩の上で、暴れました。


「・・・?」


(僕は何をしているんだろう?・・わからない。)


男はまた頭を抱えた・・・今度は幻想を「ボロボロ」な肩に乗せているので、手は幻想を抱えるのに手一杯です。頭に手を抱えず考えることにしました。


男は考えた・・・頭がぐちゃぐちゃにならない程度に。


(この記憶は?・・温かい。)

(この幻想は?・・幻。)

(この想いは?・・これも幻。)

(この懐かしい温かさと記憶も?・・これは本物?)

(この記憶は本物だ!!・・本当に?)

(もしかしたら・・・もしかすると?・・それこそ幻想。)

(やはりわからない。・・・・でもどこか温かい。)

(わからない。・・・でもどこか懐かしい。)

(わからない。・・でもどこか淋しい。)

                (でもどこか温かい。)


『・・どぉしたの・・・・?』

その幻想は心配そうに・・・問いかけます。

「・・・幻想(君)はどうして狂いここで泣いていたんですか?・・・」

『あたしね・・・』

幻想(少女)は、涙を小さい手で「ゴシゴシッ」と拭きながら、

『あたし・・転んじゃったのぉ・・・足が痛くて痛くて、泣いてたの・・・ひっくぅ・・でもあたし・・ここまでこれたの・・・お星様がここの真っ暗くて恐ろしい道を照らしてくれたから・・・もう転ばないよぉ。お星様が居てくれるから。』

「・・・そうですか」っと言いながら、男は困ったように微笑みます。

「幻想(君)は今から何処に向かうんですか・・・・・?」


男はまた頭を抱えそうになりました。


(何故こんな幼い幻想(君)が狂いのここに居るのだろうか?・・わからない。)

(この幻想(子)なら・・わかるかも?・・聞いてみよう?)


「幻想(君)はここが何処かわかりますか・・?」

『・・・。』

「どうしたんですか・・?」


男は・・・幻想(少女)の顔を覗きます。

・・・幻想(少女)を観た男はまた目を見開きました。


すべての幻想は消え・・・美しい幻想は目から血を流し、その美しい赤色で男を染めます。そして・・・骨となり灰となり幻想は消えてしまいました。

幻想が大好きだった星も月も狂った森もすべて消えてしまいました。


とうとう男が・・・一人になってしまったのです。

彼女(幻想)が嫌がっていた・・・真っ暗くて、恐ろしい孤独な道を歩きだしたそうです。


































































































































































































































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