新たな仲間
「ちょっと休んでいかない。近くに川も流れているようだし。」
はじめが正気に戻ったところで、私も近くの丸太にこしかける。
「そういえば、さっきから水の音がするな。」
私はあたりを見渡す。
そうすると、川というほど大きくはなかったが水が流れている場所があった。
エールさんからもらったヒョウタンのような水筒に水を入れて、一気飲みする。
すごく新鮮な味だ。
はじめも横へ来て飲んでいた。
全くの突然だった。私たちは、はね飛ばされていた。
「くはっ。」
水を口から吐き出し剣を握る。
「魔物か。」
はじめも立ち上がり、剣を握る。
「見たことのない魔物が1、2、3…6匹。」
完全に囲まれていた。
緑色のクマのような魔物だ。
そういえば、エールさんが言っていた。
グルフと呼ばれる大きな魔物がいるって。
もしかして……。
「横宮君、これって。」
「たぶん、グルフだろうな。」
グルフとはほとんど出会わないんじゃなかったっけ?
地球で山を歩いていて、クマと遭遇するくらいの確率だと思っていたのだけれど。
「ねえ、横宮君。エールさんなんて言っていたっけ。」
「『グルフに遭遇したら、真っ先に逃げろ』って。」
「逃げられない場合は…?」
ごくりと唾を飲む。
6匹のグルフが一歩一歩近づいてくる。
「マジでヤバイよね。」
最近覚えた都会の言葉を使ってみる。
ヤバイってこういうときに使うんじゃないだろうか。
その時だった。
一つの肌色の光が上から降ってきた。
そしてあっという間に六匹のグルフが倒れた。
「大丈夫アルか。あなたたちはここの住人アルか。」
クリーム色の髪をなびかせ、さっと降りてきたもの。
それは人間だった。
しかもかなりの美少女だ。
「あなたは誰?」
「あたしは中国生まれ中国育ちのレンレンアルよ。気軽にレンレンと呼んで欲しいヨ。」
中国人?
ということは、この子もフェアルに飛ばされた一人ということか。
「レンレン。私は綾小路星羅で、こっちが横宮一君。」
私がにこりと微笑むと、
レンレンはクンクンと私の周りを回りだした。
えっ?
もしかして臭いのか。一応お酒飲んだ後服洗ったんだけどな……。
「星羅は日本人アルか。」
「そうだけど?」
「じゃあ、星羅も修行に参加している人ナノネ。」
修行?
何の話をしているんだろう。
「あたしはカンフーの修行中にいきなりここにいたね。頭の中で声が聞こえたのでてっきりその人が新しい師匠だと思ったネ。ほらさっきもこんなのが来てたアルヨ。」
そう言ってレンレンが見せたのは、赤いスマホだった。
彼女のスマホも同じように画面には『王都に行こう』と書かれていた。
「これは便利アルよ。例えば『ホーム』っていうと。」
レンレンはにっと笑って、画面を見せる。
そこには彼女の登録番号や名前、お金の所持金、狩った数など様々な情報が載っていた。
「これは。」
私のスマホにもホームと言ってみる。
「横宮君…。」
「ああ。神はこれを本当にゲームのように楽しんでいるんだ。ホームボタンは冒険もののゲームじゃ必須だからな。神は勝とうが負けようが知ったことじゃないんだ。滅びたらまた作ればいいのだから。でもさ、俺は嫌だ。せっかく神がチャンスを与えてくれたんだ。このゲームに勝って、地球滅亡を止めようぜ。」
うん。と私はうなずく。
「レンレンも一緒に頑張ろう。」
「なんだかわからないけど、レンレン頑張るアルよ。」
こうしてレンレンが仲間になった。
って、ますますRPG化してきたな……。
美少女登場!