表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/9

別れ

「横宮く~ん、むにゃむにゃ」

はじめは今危機的状況に陥っていた。

どうしてこうなったのか?

この答えはとても簡単だ。

1 ここは掘立小屋のような建物で部屋というものがない。

2 エールさんが未成年の俺達に酒を飲ませたこと。

だからですね、学年一の美少女が俺の横で眠っているわけですよ。

しかも、俺の名前まで呼んで…。

これって誘っている?

おっと。いけない、いけない。ここは仮にも異世界。

そんなことはあってはいけないのだ。


突如頭の中から聞こえた『神』という人物。

クラスの奴らをいきなり石にしてしまった能力。

そしてこの異世界。

中二病だけを厳選して飛ばしたというのは本当なのだろうか。

それに。

はじめはふと横を見た。

こいつって中二病?

ただの世間知らずのバカだよな。

「横宮君~。来て。来てよ。」

……。

さらに付け加えると、空気を読まない。

綾小路!俺がどれだけ頑張って冷静をたもっているかしらないだろ。

とりあえず俺の脚を枕にしないでくれ!

あー。

頭痛い。明日から王都に向けて出発だ。

早く寝よう。


    ***********


まぶしい。

今日、異世界へ飛ばされて二日目の朝は最悪だった。

胸がむかむかし、頭はくらくらしている。

昨日のお酒のせいだ。

あれからどうなったのか私は知らない。

ふと見ると私ははじめの脚の上で寝ていた。

「起きたかい。あんたら寝ている時もラブラブだね。あたしが寝ている時にもしかしてヤッたかい。」

「ち、違います!これはその……。」

説明したくても覚えていないのだから、わからない。

「まあいいや。早く準備しな。ヤンス、夫が残して行っていた武器は全部持っていっていいからさ。」

「いいのですか。そんな大事なもの。」

「大事?あたしたちは離婚したんだよ。」

そうでした。現在修羅場でしたね。

「なんか、セイラと出会ってまだ一日なのに寂しいね。久しぶりのモストーなべもうまかったしね。」

そうなのだ。

モンスターを食べるのは一応ちょっとは躊躇したんだよ。

本当に。

沼代にいたころはいろいろ食べていたけれど、モンスターはな、と思ったのだ。

でも、味は格別だった。

おいしかった。コドンは牛肉と豚肉が合わさったような味だったし、

モストーなべは普通のなべだった。

「綾小路。ふぁー。もう朝か。」

どうやらはじめは眠たそうだ。星羅のせいなのだが、当の本人は全く気付いていない。

「じゃあ、昨日の残りを食べて準備するよ。」


結局エールさんの家を出たのは昼過ぎだった。

「はじめの防具はこれっと。」

「エールさん、何から何までありがとうございました。いきなりお邪魔して。」

私はてきぱきと点検をするエールさんを見ながら言う。

この人がいなければ、まず飢え死にで死んでいただろうな。

神様は一人一人に村一個を与えたつもりなのだろうけど。

「何言っているんだい。最後の別れみたいに。また遊びに来な。それとこれは出世払いだ。」

エールさんがそう言って広げたのは、青いルビーが10個包んであった。

「こんなに!」

はじめが一個手にとって太陽にかざす。

「王都じゃこれくらいはすぐ稼げて使っちまうけど、とっときな。一応青ルビーは一つで赤100ルビー、つまり1000ルビーある。」

「いいんですか。」

「出世払いだっていっているだろう。今度来るときは王都のうまい肉くれよ。」

「はい!」


私たちは礼を言って32村を去った。

なぜここが始まりの森といわれているのかはエールさんから聞いた。

ここにいるモストーはすごく狩るのに簡単だからだ。

狩るには一番易しく、RPGでいうスライムに当たるらしい。

「なんか本当に寂しいな。」

少し歩いたところではじめが言う。

「うん。でもまた来たいよね。」

その時だった。

「おーい。お前だ。邪眼の伯爵。」

「フッ。その名を呼ぶのは誰かなって。」

そこにいたのは一人のおじさんだった。

「謝る気はないからな。もう俺たちはここから去るし、関係ないはずだ。31村のおじさん。」

はー。この人が。

いかにもアンパ○マンのジャ△おじさんみたいな人でやさしそうなのに。

「そうか。もう去っちまうのか。」

おじさんは悲しそうに眼を伏せた。

「これは一応の謝罪だ。あの時は少しばかり虫の調子がよくなくてよ。べ、別にお前のためにつくったんじゃないんだからな。」

……。

ハイ。男版ツンデレですね。

ギャップが激しすぎて気持ち悪い。

私が口元を押さえる中で、はじめは無表情で受け取っていた。

「剣ですか。そういえば鍛冶師ですもんね。」

「ああ、そうだ。そんなぼろい剣なんかよりもずっといいぜ。こいつはお譲ちゃんのだ。」

そういって小型の剣を渡してくれる。

今までのより切れ味もよさそうだ。

「ありがとうございます。では先を急ぎますので。また来ます。」

「べ、別に来てほしくなんてないんだからね。」


……。

「横宮君~。」

「横宮君~。」

ダメだ。全く応答がない。

ジャ△おじさんのような31村の亭主に会ってから、一時間ちょっと。あれからはじめの目がうつろだ。

そして会話も成立していない。

さっきまでは何を言っても

「ソウデスネ。」

と答えていた。

魔物も何匹か出たけど、さすが鍛冶師が作った剣。

なにも恐れずに殺すことができた。

知らない魔物も数匹出るようになってきていた。

「はっ!」

突如目が復活した。赤い眼も光っている。

「俺の名前は横山一。またの名を邪眼の伯爵。第三の目をもつ選ばれし者。よし。」

はじめは決めポーズをとって近くの丸木にこしかけた。

「もう大丈夫だ、綾小路。」

うん。赤い眼が光っている。

大丈夫というのは本当だろう。

よし。異世界生活二日目。がんばるぞ。

見てくれてありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ