表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/9

村番号32にて

「あぐー。」

「あぐー。」

くすぐったいってば。やめてよ。

やめてって!

と私はそれを払いのけるため目を開けた。

最初に飛び込んできたのがどこまでも青い空。


なんか長い夢から覚めたみたいだ。

「おや、お目覚めかい。」

私が体を起こすと、変わった服装をしている人に声をかけられた。

そばには牛みたいな馬みたいな動物がいる。

そばでわめいていた奴はこれみたいだ。

「こんにちは。ここは……どこ。」


一面に見える牧場のような土地。ひとつだけ暗い山。

そして掘立小屋のような家。

「ここは村番号32だよ。」

えっと。なんと反応すればいいのか。

手抜きしすぎだろ!神様!

今にも『だって~』とか聞こえそうだ。

「あのここはフェアルですよね。」

「ああもちろんフェアル星だがそれがどうかしたのかい。」

おばさんは訝しげに私を見た。

そりゃそうだろう。


知らない人に町を答えるならともかく、

「ここは地球ですか。」

何て言われたら、確実に警察に突き出す。

私は笑ってごまかした。

何事も笑うのが一番だよ。ハハハ


というわけで私が神のいうようにフェアルに飛ばされたのは間違えないようだ。

「ところであんた名前は。」

「綾小路星羅といいます。」

「せいらか。いい名前じゃないか。あたしはエール、この子たちの親さ。」

わははとおばさん、ごほんエールさんは豪快に笑う。

エールさんはたぶんここ異世界の人間なのだろう。

「せいらよ、あんた一体何処から入ってきたんだい。いきなり湧いて出てきたから驚いたよ。空から降ってでも来たのかい。」

うーん。はっきり言おう。

私のほうが教えてほしい。神様は中二病という病気がどうとか言っていたけど、私は中二病なんてかかってない。いたって健康体だ。

とりあえず、わからないときは笑ってごまかせ!


「まあ、いろいろありまして。」

「そうかい。あんたみたいな綺麗な子にもいろいろあるんだねえ。」

そんな綺麗なんて~。照れている場合じゃない。

騙されないぞ。褒めたところで、なにも出てこないんだからね。

……。

あ、本当に何もないわ。

一文無しは当然のこと、携帯電話もなにもかもない。

ジャジャジャジャーン。ジャジャジャーン。

不意に頭の中でベートベンの交響曲第五番「運命」が鳴る。

おお、神様これも運命だというのですか。

って神様がやったことなんだけどね。


「あ、そうだ。あんたのすぐそばにこんなものが落ちていたんだけど。これあんたのかい。」

私が落ち込んでいると、エールさんがあるものを持ってきてくれた。

こ、こ、これは伝説の

「スマホだ~」

スマホ、スマートフォンはタブレット端末の一種だ。東京ではみんなこれを見ながらあるいている。器用すぎる。というかどうして?バイトでもして買おうと思っていたのに。もしかして神様からの贈り物?赤色って……趣味悪いけど。大丈夫、使えるのなら。

私が恐る恐る手を伸ばすといきなり画面がひかる。

おおー!スマホは触れただけで電源がつくようになっているのか。

するといきなり神様の声が聞こえた。

今度は頭の中からじゃない。スマホからだ。

「ハイハーイ。登録番号32番綾小路星羅さん。こんにちは。どうかな。ちゃんとフェアルに着いた?ずいぶんとスマホに驚いていたけど、僕のテレパシーよりすごいものなの。まあいいや。最初のクエストはダダダダーン『獲物を一匹狩ろう!』だよ。僕って優しい。

あと、現実と同じように食べ物食べないと死んじゃうから。そういうことで~」


……。

神様からの贈り物。

間違ってはなかった。よし決めた。とっとと一年間生き抜いて沼代町の子たちに見せに行こう。絶対にぱくってやる。

と私は心に誓った。

「あんた。獲物を狩るのかい。このあたりだと<モストー>かな。」

エールさんが聞いていたのか、アドバイスしてくれる。

いきなり湧いて出てきた身なのにずいぶんと親切だ。

それともエールさんって実はNPCだったりして。

神がゲームって言ってたからな。

フェアルという異世界とも言っていたけど。

どちらにしろ、一番最初に狩るものと言ったら……。

「モストーって『いのしし』かなんかですか。」

「そうだよ。あんた詳しいのかい。そりゃよかった。狩ってきてくれよ。今日は久しぶりにモストーなべにするか。」

エールさんが言うと牛みたいな馬みたいな動物が「あぐー」と鳴いた。


いやいや、エールさん~待って。正直に言います。勘でした。

私この世界にエールさんしか知り合いいないのに。

この時すでに私ははじめの存在を忘れていた。

「エールさん、えっと、ハハハ。そう盗賊!剣とか防具とか全部奪われちゃって。」

私のバカ。

これだから笑ってごまかすなどということはしてはいけないんだ。

正直に言えよ。

「そうか。それであんた何も持ってなかったのかい。夫が使っていた奴があるから何でも使いな。モストーなべなんてもう三年も食べてないのか。早いものだ。」

「あの、旦那さんは、どうされたんですか。」

私は息をのんで聞く。


「別れたさ。あぐーの面倒なんて見てられるかって、他の女のところにね。今度会ったらぶっつぶしてやるんだよ。」

……。

つっこみどころが多すぎてどこからつっこめばいいのか。

まさかの離婚説。

うわー。しかも他の女のところに。修羅場だわ。これ。

剣とか使わせてもらうのはいいんだけど、呪いとかついていないのかな。

私の夢は専業主婦だから夢壊さないでほしいな。

それと忘れてはいけないのが

「あぐーってもしかして。」

「ああ?この子たちのことだが。」

鳴き声と一緒!手抜きしすぎだろ。神様。


エールさんの昔話を聞きながら、剣と防具を選ぶ。

エールさんの夫だった人はヤンスと言って、名のある冒険者だったそうだ。

狩りの腕もそこそこでギルドではBクラス。モンスターに襲われて助けてもらったところに一目ぼれしたのだとか。

なんといい恋愛ストーリー。異世界人の過去とは思えない。


「あんたも気をつけなよ。<モストー>くらい狩れると思っていても予想外なものも出てきたりするから。まあ、あんたなら大丈夫か。」

「ハハハハハハ。」

今の私苦虫を百個つぶしたような顔になっているんだろうな。

狩りしたことありませんなんてもう絶対いえない。

「じゃあ、エールさん行ってまいります。」

私は大きく敬礼をする。

旦那さんのようにバッと狩って戻ってくるので、待っててください。

「ああ。くれぐれも気をつけなよ。」


こうして私は初狩にでかけることになった。

あんな危険な目にあうとも知らずに。


これからもどんどん書く予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ