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なんちゃって異世界!?

「ごめんなさい、ごめんなさい。」

駅のプラットホームで、私は謝り続けながら歩く。

はあ。どうして東京ってこんなに人口が多いのだろう。

思わずため息をついてしまう。


私のこと綾小路星羅は真宮高校に通う一年生だ。東京に出てからはや一年。

まだまだ慣れないことだらけである。私は中学まで沼代町という町で育ってきた。

買い物なんてほとんど行かない。自給自足の生活。


驚くかもしれないが小学校は全校生徒合わせて10人、中学校では6人で授業を受けていた。

授業といってもほとんど自習形式で、わからないところを教えてもらう程度だ。

夏の夜は蛙の合唱を聞きながら寝て、朝は鶏の鳴き声で起きる。

うん、ここまでいったらわかるよね。沼代町はド田舎です。

そして私は田舎娘です。

悔しいけど余裕で学校通っているのを見ると、尊敬する。


「おはようございます、星羅様。どうかわたくしに勉強を教えてください。」

「はいはい、わかったから。」

朝一番から頼みこんでくるのは怜奈。私の唯一の友人だ。

赤点すれすれの点数をたたきこむ天才だ。

皮肉じゃないよ。だって全教科41点だもん。逆に尊敬する。

でも彼女がいなかったら、東京生活終わっていたと思う。だって受験会場まで電車乗れなかったんだもん。なにあの複雑な路線!

微分・積分より断然難しいと思うのは私だけ?


一つだけ説明していなかったと思うが、私は世間知らずだ。電車の路線なんかもひとつだが、「あのアイドルってカッコイイよね。」なんていわれてもさっぱりだ。そして一部の男子からついたあだ名が

「よっ。田舎娘。」

顔を赤くしながら、手を挙げて挨拶する男子たち。

ニックネームは好きだけど、

「う~。」

でも田舎娘なんて呼ばれたくない。事実だけどだし、否定できないけど。

それでもやっぱりいじめなんかに進展しないのは、彼のおかげだろう。


チャイムが鳴ってきっちり9分44秒にガラッと扉が開く。

狙い澄ましたように、毎回同じ時間だ。

「遅いぞ、横宮。」

先生も毎度のことだから怒るのさえ気力落ちしている。

彼は横宮はじめ。

左手にぐるぐる包帯を巻き、右目に眼帯をしている。

この前怪我しているのかって玲奈に聞いたら、なんか中二病という名前の病気にかかっているらしい。

高一の初めから包帯と眼帯しているけど、治らない病気なのだろうか。

心配だ。

「どうして遅れた。横宮。」

「フッ。俺は横宮じゃありません。邪眼の伯爵ルーベル。邪気眼を持つ選ばれし者だ。」

「あー。はいはい。わかった。」

先生が降参したように手を挙げる。

邪眼の伯爵。なんてカッコイイ言葉なのだろう。


「横宮君。横宮君。邪気眼ってなに。どんなことできるの。」

彼が席に着いた途端、私は小声で質問をしまくる。

「フッ。邪気眼とは選ばれし者が持つ第三の眼。ほら、見てみろ。俺の眼は赤い。そして時々左手もうずくのだ。」

なんと!横宮君は第三の眼を持っているのか。恐るべし。

「星羅。そのへんでやめときなよ。」

怜奈が言うが私は無視だ。こんな面白い話聞かないわけがない。

私が聞かないことを知ると玲奈はため息をついた。

「ここに自覚していない中二病がいる……。」

なんていっていたけど、何の話だろう。


なんていったって私の自慢は健康体。インフルエンザなんて一度もかかったことないんだから!

「おーい。そこ。話を聞け。」

「おい!綾小路!横宮!お前たちだ。」

先生が威嚇のためかチョークを投げる。威嚇だよね?まさか本当にあてようとか思っていないよね。なんでこっちくるの。先生が投げたチョークはくいっと曲がって私の顔に向かってきていた。

先生もヤバッという顔をしている。

どんだけノーコンだよ。というか当たる~!


私は反射的に目を閉じる。

が、いつまでたっても音はしなかった。

おおるおそる目をあける。

えっ……

チョークが空中で固まっている。

チョークだけじゃない。怜奈も先生もクラスのみんなも。私と彼、横宮一を除いて。


どういうこと。

私が茫然としているとパッパラパーンという軽い音が鳴り響く。

音というのは振動して伝わるはずだ。それなのにその音は脳内に直接響いた。

「誰だ。」

横宮一、面倒くさいはじめでいいよね。

はじめが言う。

「えっと、神?」

神。彼は確かに神と言った。

「たったの50人か。少ないね。神様ちょっとがっかり~。ま、いいか。これはどうせ最後のチャンスなのだから。」

最後のチャンス。

何の話をしているの。

「世界で固まっていない50人のみなさん。神です~。ご存じの通り創造主の本当の神だよ。ところでさ、僕は君たちとゲームをしたいと思っているんだ。君たちはファンタジーを愛している、いや地球では中二病っていうんだってね。ぷぷぷ。上で眺めていてこれほどおもしろいとおもったことはなかったよ。」


神様は一方的にしゃべった。

「そう、皮肉だね。僕の計算では十数年後第三次世界大戦で必ず世界は滅びる。君たち五十人が僕の用意した異世界『フェアル』でのゲームに勝ったら、洗脳して地球滅亡を止めてあげても、いいかなって。」


「ゲームで勝ったら、本当に戦争をやめさせてくれるんだよね。」

私は冷静に聞く。

第三次世界大戦?

そんなの起こるわけがない。私の脳はそう思っている。

でももし本当に起こったとしたら……。

間違えなく地球は滅びるだろう。

もし仮に、そうもし仮に。神の言うことが本当だとしたら。


「本当は神が人間に力を貸すことは禁じられているんだよ。でも何とかしてあげる。僕は神だからね。」

神はいまにも笑いそうな声を押し殺して答えた。

「受けるかい。50人の皆。君たちが勝てば、地球滅亡も止められるし、<石化>している人も返してあげよう。」


私が黙っていると、

「どうしてだ。」

という低い声が聞こえた。赤い眼がぎらぎらと光っている。

「どうして?つまらないからだよ。君たちが猿だった時からみているんだよ。そのまま滅びてしまえば面白くない。」

神の答えにはじめは一瞬驚いたような顔をし、眼を伏せた。

「別に、受けたくなければいい。僕が何かをしなくても勝手に滅びるからね。」

くくくと神はおかしそうに笑った。


「受けるよ。私、受ける。」

売られたケンカは買う。

沼代での一番のルールだった。

私が言うとゲームに勝つ条件を話しだした。

「1年間死なずに生きていること。それだけだよ。」

「へっ?」

拍子抜けだった。私が読んだラノベと呼ばれる小説では迷宮攻略とか魔王を倒すとかだったから。

「簡単でしょ。君たちが勝てば地球は救われる。君たちが負ける。つまり、五十人全員があっちの世界で死んでしまえば、そのまま地球は滅びる。それだけのこと。」


「まっ、クエストを受けないと勝手に死亡になっちゃうけどね。」

え?何それ?クエスト?

「じゃ、みんなをフェアルへ召還!」

言語の問題は大丈夫だから、安心していいよ。

なんて声が聞こえたような気がするけど、私は光に包まれていてあまり聞こえなかった。

私、綾小路星羅。

ただの田舎娘なんだけど、中二病と間違われて異世界へ飛ばされるようです。

うん、考えるまでもない。一生の不覚だ~!

そんなことを考えながら私の意識は闇へと落ちて行った。



見てくれてありがとうございます。

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