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閑話 七瀬と恭牙の話

 夏祭りの日、クラスのみんなに、うちの父方の叔父さんの別荘でお泊まり会的なものをしようと誘ってみた。何となく、叔父さんが遊びに来ても良いと言っていたのを思い出して、のってくるやつもいないだろうと思いながら提案した。すると、意外にもみんな乗り気で驚いた。恭牙が私の様子に気づいて肩を組んできた。気遣ってるつもりか、頭が高いぞ。その顔にムッとして、取り敢えず軽く殴っておいた。


 私の家、黒鉄家は所謂極道の家だ。曾祖父が初代らしく、祖父、父と代々家を継ぎ、今では周辺の組を従えるほど大きくなっている。

 私には兄がいる。頭が切れて、義理堅く、幹部も下端も家族同様に大事にし、……重度のシスコン。あと、運動音痴でお人好し。あれほど惜しい物件はない。対して私は、一応馬鹿ではないつもりだ。さらに言えば、運動神経には自信がある。だから、友達に泣かされる兄を守るために、父や幹部連中に喧嘩のやり方や体術、剣道、柔道、棒術、拳法などを一通り習った。 両親も兄も女の子の私がそんなことをする必要はないと言った。けれども、だ。私は兄を守りたかった。私だけが兄の夢を知っていた。彼は写真家になりたかった。喧嘩も出来ず、お人好しで、真っ白な人だ。わざわざこんな世界に飛び込んで汚れる必要はない。代わりに私が汚れればいい。

 兄は理解してくれた。女が次期当主だなんて、前代未聞。だから兄も一緒にみんなに説得してくれた。今ではみんなが納得してくれているし、傘下にも私がそれぞれの家に行って説得した。中には私を女と見くびり、その家の息子と勝負して勝てば認める、負ければ息子と結婚して息子を黒鉄の当主にしろという条件を付けてくる奴もいた。私の圧勝だったが。その息子は今では私の下僕だ。嬉々として私の世話をしたがる。キモい。

 なぜか傘下の家の息子、中には当主も挨拶回りの中で私に服従させてしまった。下僕曰く、今までの当主は自ら足を動かして傘下に挨拶をしに来たことはなく、傘下を軽んじず、義理堅い私を気に入ったのだとか。加えて、それなりに自分でも自信があった容姿と身体能力も彼らが認める要因となったらしい。最近の悩みは、傘下からうちの息子を婿に、という申し出がたくさん来ることだ。貴様らの息子は大概脳筋ばかりだろうが! 日々送られてくる野郎の写真を筋トレに使っております。私も大概脳筋です。

 話は変わるが、恭牙は馬鹿じゃないと私個人的に思っている。アイツとは中学三年の時からの付き合いだ。それまで暗黙の了解として、必要最低限しか誰も私に接触しなかった。アイツはそれを容易くぶち壊し、何一つ問題を起こすことなく、私をクラスの輪に溶け込ませてしまった。アイツはそれで私がどれだけ救われたか、少しも分かっていないだろう。恭牙曰く、「信用は力になる」のだそうだ。いずれ家を継ぐ私にその力を与えてくれたのだ。ただ、なぜかそういう極道とか組とかについて詳しいため、本人に尋ねてみた。

「俺のパパはイタリアン・マフィアの次男やもん。今はもう足洗うて元マフィアやけど」

「え、あの」

「で、パパが婿養子としてオカンと結婚したんやけど、オカンの実家、実は関西牛耳っとるそこそこデカイヤクザの家やねん。まぁ、オカンの兄貴が組長やっとるし、本家の従兄は継ぐ気満々やし、俺は全然そういうのと関係ないけどな」

 頭が混乱した。だから恭牙が私の耳元で、

「だから、俺は七瀬と結婚出来るで」

と言ったのに対し、その横っ面を平手打ちすることしか出来なかった。残念。

 ただ、考えてみれば、恭牙との結婚は案外合理的だと思う。家を継ぐからには結婚は必須だ。だが、いざ結婚するとなると、相手に一から事情を説明しなければならない。面倒くさい。傘下の野郎どもは頭の弱い奴ばかり。その点、恭牙はやるときはやる男だし、気を使わなくてすむし、何より事情を知っている。良物件だ。

「まぁ、七瀬がホンマに好きで結婚したいと思う男が現れるまで、俺が旦那役ってことで」

「ふふっ、よろしく。旦那様」

 高校生になる際、私は恭牙と同じ学校を選んだ。そこで運命の出会いをすることになるのだが、それは担任のことではない。神楽だ。きっとあの子も気づいているだろう。でも、それは半分正解で半分誤りなのだろう。私はかつて、「竹取の翁」と呼ばれた人間だ。そう、お爺さんだ。かぐや姫を竹切って発見した爺だ。まぁ、大方、恭牙が婆さんといったところか。今となっては昔のことだが。

 一つ訂正しなければならない。私は決して担任を恋愛対象として見たことはない。伊吹も恭牙も勘違いしているらしい。面白いから放置しているが、恭牙に関しては「気づけよ馬鹿!」と思っている。担任は、可愛いが彼氏にするにはウザそうだ。きっとサンドバッグにしてしまう。

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