表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/64

第四十六話:妻の誘拐

俺とジャンヌ、フェリスとヘルの四人は近くの洒落な喫茶店に入った。


「ふーん。それじゃ、二人は夫婦だけど恋人でもあるんだ」


テーブルに置かれたアイスコーヒーをストローで飲みながらフェリスは向かい合わせで座る俺とジャンヌを見た。


「こ、恋人っ」


ぼんっと顔を赤くさせるジャンヌ。


・・・・まったく、こいつの反応は過剰だな。


ちょっとした事で直ぐに赤面するんだから。


「可愛らしい反応ですね。お義兄さま」


俺に微笑むフェリス。


「まぁ、な。可愛すぎて襲いたくなる」


俺はセブンスターを蒸かしながら少し本音を混ぜて答えた。


「な!ひ、飛天っ」


横でジャンヌが更に顔を赤面させた。


その顔は茹で蛸だった。


「本当に可愛らしいお義姉様ですね」


フェリスは余裕の笑みを浮かべてアイスコーヒーをストローで飲んだ。


「二人ともあまりジャンヌさんを虐めない方がいいぞ」


フェリスの横でヘルが嗜めた。


「ありがとう。ヘルさん」


ジャンヌが笑顔でヘルを見た。


それが小さく嫉妬の炎を生み出して俺はジャンヌの肩を抱き寄せてしまった。


俺の所有物だと周囲に証明する為に・・・・・


「ちょ、飛天っ」


ジャンヌは突然の俺の行為に狼狽した。


「おっさんもストレートだね」


「本当に・・・・・・」


ヘルとフェリスは俺の行動を見て微笑ましい様子で見ていた。


「お義兄さんに習って私も・・・・・・」


フェリスはヘルに抱き付いた。


「お、おいっ。フェリス」


ヘルも少し動揺した。


「うふふふ。ヘル。だーいすき!!」


一目も憚らず大声で言うフェリス。


店の中にいた客たちは赤面したり年をとっている客などは


「若いわね」、「最近の若い者は節度を分かってない」


などと言っている。


こいつらも俺とジャンヌもあんたより年上だぞ。


思っているが口には出さない。


「ほう。なかなか積極的な嫁さんだな」


俺はさっきの仕返しも含めて意地悪な笑みを浮かべた。


ジャンヌの肩に回した腕はそのままで・・・・・・


「お義兄さまに当てられたんです♪」


フェリスも俺と同じく意地悪な笑みを浮かべてギュっとヘルに抱き付いた。


「おいおい。フェリス」


ヘルは困ったような表情を浮かべていたが満更でもない様子だった。


「お互い、女には苦労するな」


わざと苦笑するとヘルも


「だな。おっさん」


と互いに苦笑し合った。















「・・・・一体、何を四人で話し合っているんだ?」


喫茶店から少し離れた場所からダハーカ達は夜叉王丸たちを見ていた。


「遠くて聞き取れませんが、何か楽しそうですね」


「おっ、旦那がジャンヌ殿の肩に手を回した」


ゼオンが身を乗り出した。


「こらっ、身を乗り出すな」


前方にいたフェンリルはゼオンを叱咤した。


「おい、上に押し上げるな」


ダハーカが苦言を漏らした。


端から見るといい年した大人が何をしているんだ?


と奇異の眼差しで見られるだろう。


「・・・・ん?」


暫く押し問答をしているとヨルムンガルドが視線を明後日の方向に向けた。


「どうした?ヨルム」


ゼオンも釣られて見る。


「あいつ等は確か・・・・・・」


見覚えのある顔にゼオンは顔を顰めた。


「確か、二、三年前に主人の命を狙った餓鬼どもじゃねえか」


フェンリルもゼオンたちの視線の方向を見て顔を顰めた。


車に乗った男たちは、かつて夜叉王丸の命を奪おうと挑み返り討ちにされた奴らだ。


「何しに来たんだ?」


ダハーカもフェンリル達の方向を見て全員のバランスを崩した。


「おわっ」


「ぎゃっ」


「ぐわぁ」


「ちょ・・・うわっ」


四人は勢いよく地面に倒れた。


それを合図にしたように夜叉王丸の命を狙った奴らは行動を開始した。


車からバスーカ砲を発射して夜叉王丸たちのいる喫茶店を破壊し急発進させた。


「やっぱり狙いは旦那か!?」


ゼオンは慌てて立ち上がり走り出した。


「私たちも行きますよ!!」


ヨルムンガルドたちも走り出した。


「旦那!ご無事で?!」


ゼオンたちが店に着くと同時に車が走り出した。


「・・・ちっ」


懐から拳銃を抜こうとしたが店の中から


「止めろ。撃つな」


夜叉王丸の声で懐の銃から手を離した。


「あの車にはジャンヌが乗っている」


埃まみれのコートを着た夜叉王丸が出てきた。


「おっさん、客に被害はないぞ」


続いてヘルとフェリスも出てきた。


「くそっ。ジャンヌを誘拐するとは、あの餓鬼ども・・・・・・・」


夜叉王丸は舌打ちをしながら近くの壁を殴った。


「・・・・・お前ら」


地を這ったような声を出す夜叉王丸にゼオンたちは身を堅くした。


「・・・俺とジャンヌの後を付けたのは大目に見てやる」


「その代り、直ぐに奴らを追うから車を用意しろ」


『ら、ラジャー!?』


ゼオンたちは脱兎の如く走り出した。


「悪いな。ヘル」


夜叉王丸は振り向いて義弟夫婦に謝罪した。


「何を言ってるんだよ。おっさん」


ヘルはニヤリと笑った。


「悪いのは義姉さんを誘拐した餓鬼どもだよ」


「えぇ。女の子を花束もプレゼントも無しで誘うなんて呆れ果てたわ」


フェリスも乱れた髪を直しながら怒った。


「俺とフェリスも協力するよ」


「すまねぇな」


夜叉王丸は二人に頭を下げた。


これは明らかに自分のミスだ。


敵の気配も気付かずにみすみすジャンヌを奪われてしまった。


『・・・・必ず奪い返す』


夜叉王丸は自分の胸に湧き起る怒りを抑えながら店を出た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ