第四十四話:義弟と見知らぬ女性
「・・・・はぁー、お茶が美味しい」
私と飛天様は大仏を見た後は近くの和風喫茶店でお茶を飲んでいた。
いつも紅茶しか飲んでいなけど今、初めて日本茶を飲んでみて美味しいと分かった。
「ここの茶は静岡産だから特に美味いんだよ」
ずずっとお茶を啜りながら飛天様は答えた。
日本茶は音を若干たてても大丈夫だと聞いたから私は何も言わなかった。
「・・・・・・・・」
飛天様はお茶を飲みながら辺りを見回していた。
「・・・どうしたの?飛天」
大仏を見ていた頃からだが飛天様は挙動不審までは言わなかったが、周囲を見回していた。
「さっきから周りを見てるけど?」
「・・・いや。何か誰かに見られている感覚がするんだ」
周囲を見ながら飛天様は首を傾げた。
「飛天の勘違いじゃないの?」
「そうだと良いんだが・・・・・・・・」
飛天様はまだ納得がいかない様子だった。
「今は私とデートに集中してよ。それに何か遭っても飛天がいるなら大丈夫でしょ?」
せっかくの二人っきりだから私とのデートに集中して欲しかった。
段々、凄い事を言うようになったと自分で思うようになった。
「あ、あぁ。大丈夫だ」
私がデートと言ったので飛天様はたじろいだが直ぐに戻った。
「じゃあ、気にしないで行こうよ」
私は湯呑みを置いて飛天様の手を掴んだ。
「・・・そうだな」
飛天様は苦笑して私の手を掴んで立ち上がった。
「それじゃ次に行くか?」
「うんっ」
私と飛天様はお金を払って次の観光スポットに足を運んだ。
「・・・・やばいな」
少し離れた場所でダハーカたちは夜叉王丸達を見ていたが緊迫していた。
「あいつ俺たちの気配を感づいてるな」
「流石は旦那、と言いたい所だが今は厄介だ」
パリ・ジェンヌを吸いながらゼオンは頭を抱えた。
「どうするんだ?これ以上、離れると俺達でも見失うぞ」
狼姿から人間姿になったフェンリルは尋ねた。
「兄さんの言う通りですね。このままだと見つかりますが離れては見失う危険があります」
「んな事を言っている内に見失っちまうぞ」
ダハーカが夜叉王丸とジャンヌの後ろ姿を見ながら言った。
「危険だが、この距離を保ったまま行くぞ」
「やばいっ。行くぞ」
ゼオンたちは慌てて後を追い始めた。
二人を暫く追っていると
「ん?あいつは・・・・・・・」
不意にダハーカが目を細めた。
「旦那、誰かと話してるな」
ゼオンも前方の夜叉王丸の様子を見た。
「この匂いは・・・・・・」
「・・・・ヘル」
フェンリルとヨルムンガルドは匂いで相手が誰かを知った。
ゼオンたちの前方で夜叉王丸と話していたのは義弟のヘル・ディスタンスだった。
しかし、ヘルの横にはもう一人、女性が立っていた。
「誰だ?あの嬢ちゃん」
ダハーカが首を傾げた。
「しばらくは様子を見た方が良さそうだな」
ゼオンの提案に皆は頷き遠目から夜叉王丸夫妻とヘルと女性の動向を見る事にした。