第四十二話:皆で旅行
買い物を済ませて三日後に城に行っているペイモン様には内緒で屋敷の皆総出で人間界に旅行に行った。
後でペイモン様が怒りそうだな、と私は思ったが飛天様たちは気にしていなかった。
旅行の場所は日本の関東地方で神奈川県鎌倉市のとある老舗旅館。
旅館に入ると和服を着た仲居さんと大女将という初老の女性が出迎えてくれた。
飛天様の姿を見ると丁寧に頭を下げた大女将。
「・・・・お久し振りです。夜叉王丸様」
「元気そうで何よりだ。大女将」
大女将に笑い掛ける飛天様。
「・・・勿体ないお言葉です。所でそちらの女性は?」
私の姿を見てくる大女将。
「・・・俺の奥さんだ」
どこか照れたように言う飛天様に大女将は笑った。
「まぁまぁ、夜叉王丸様もついに結婚しましたか。おめでとうございます」
大女将と仲居さんたちが丁寧に頭を下げた。
「ありがとう。それじゃ部屋に案内してくれ」
「畏まりました」
大女将は視線で仲居さんたちに命令して私たちの荷物を持たせると部屋に案内してくれた。
「・・・・うわぁー、綺麗」
窓から見える景色に私は感嘆の声を漏らした。
「ありがとうございます」
大女将は丁寧に気品に満ちて頭を下げた。
「ありがとうよ。大女将」
飛天様も丁寧に大女将に一礼した。
「いえいえ。それでは何か用がある時は、またお呼び下さい」
大女将は部屋から出て行き私と飛天様が残った。
「・・・・・・」
私は瞳を閉じ波風に耳を傾けた。
静かな、それでいて満ち溢れる風。
「・・・・気持ち良い」
私はうっとりと声を漏らした。
こんな気持ち良い風を浴びた事はない。
荒野に置き去りにされた時に浴びた砂が混ざった風のせいで、風嫌いになったが波風で癒された。
「・・・・・・」
私の隣では飛天様が煙草に火を点けて煙が混ざって来たが、飛天様が隣に居ると実感できた。
「・・・・・ん?」
突然、飛天様が身動きしたのを感じた。
「どうしたの?飛天」
「・・・いや、何か気を感じただけだ」
「気?」
「あぁ。見られている気配がした。だが、ただの勘違いだったようだ」
「ふぅん」
「それより、これから町に行かないか?」
前の町を首で指す飛天様。
「うんっ。行きたい!!」
「よし。じゃあ、行こうぜ」
私の手を掴むと飛天様は部屋を出て仲居さんに外出して来ると伝えて旅館を後にした。