第四十一話:鬼の居ぬ間に
「・・・・これなんかどうでしょうか?」
仕立て屋の女性が私に青とピンクのシンプルだけど可愛いワンピースを見せた。
「・・・・うーん。どっちも可愛いなぁー」
今はペイモン様がいないから私好みで選べる。
恐らくここには来ないから時間を掛けて選びたかった。
まさに鬼の居ぬ間に何とやらだ。
飛天様は用意されたテーブルで煙草を蒸していてデュランも飛天様の足元で寛いでいた。
「飛天はどっちが良い?」
飛天様に二つのワンピースを見せた。
「んー・・・・ピンクだな」
しばらく悩んでいる様子だったが選んでくれた。
「じゃあ、ピンクにしようかな」
悩んだが、飛天様もピンクが良いって言ってるしピンクにした。
「お買い上げありがとうございます」
女性は頭を下げてワンピースを綺麗な紙に包んで可愛いリボンで結んでくれた。
それから一通り旅行に必要な買い物を済ませた私たちは喫茶店で小休憩をしていた。
「んー、美味しい」
私は頼んだ紅茶を飲んで至福の時を過ごした。
嗚呼、買い物した後の紅茶は格別だわ。
「本当にお前は紅茶が好きだな」
煙草を蒸かしながら飛天様は私を見ていた。
「飛天は紅茶が嫌いなの?」
こんなに美味しいのに。
「昔から苦手だ」
煙草を左手に持ち替えてミルク入りのコーヒーを飲みながら答える飛天様。
「何で?」
「んー、理由は忘れたが苦手なんだよ」
「ふぅん」
適当に相槌を打つ。
「さて、そろそろ行くか」
飛天様は短くなった煙草を灰皿に押し付けた。
「うんっ」
飛天様は金貨をテーブルに置くと両手に袋を持って立ち上がり私も片手に袋を持った。
それから再び買い物をして屋敷に戻ったのは夕方になった。
「ただいまー」
玄関に入るとヨルムさん、フェンさん、ゼオンさんが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ。奥様、主人様」
「お帰り。主人、奥方様」
「お帰りなさい。旦那。ジャンヌちゃん」
「遅いぞ。飛天。嬢ちゃん」
「おう。ただいま」
飛天様が笑顔で玄関に上がり私も中に上がった。
その後は飛天様、ゼオンさんたちと夕食の準備をして食べようとした時にペイモンさんが帰ってきて騒がしく食事を終えた。
夕食の後は私が先にお風呂に入って飛天様はゼオンさんたちと酒を飲むので私は一足早く眠りに着いた。