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第三十一話:哀れな従者

新たにジャンヌのライバルが登場です!!

「・・・・・どうやら主らの主人が帰ってきたようだぞ」


紅茶を飲みながら哲学書を読んでいたオーディンは片方しかない黒曜石の瞳を扉に向けた。


「飛天が帰ってきたって事は餓鬼は負けたな」


ジョーカーを吸いながら大和撫子写真集という如何わしい本を読みながらダハーカは勝ち誇った笑みを浮かべた。


「流石は主人だっ」部屋をウロウロしていたフェンリルは飛び上がった。


「ふっ、やっぱり旦那は最強だな」


「ですね」ゼオンとヨルムンガルドはチェスをしながら主人の無事を喜んだ。


「・・・今、帰ったぞ」


暫らく待っているとドアを開けて夜叉王丸が入って来た。


「よう。遅かったな」ジョーカーを吸いながらダハーカは写真集のページを捲った。


「まぁな。少しアマゾネスに絡まれたからな」


ピクリっと従者の行動が止まる。


「そ、そうだよな。ここは北欧だもんな。わ、ワルキューレがいても可笑しくないよな・・・・・?」


カタカタと写真集を持つ手が震えるダハーカ。


「で、ですよねっ。ワルキューレの仕事はヴァルハラの警護も混ざっているのですから、騒ぎを聞きつけて来るのも、当たり前ですね」


「そ、そうだぜ。な、なに当たり前の事を言うんだよっ」


ヨルムンガルドの言葉にゼオンは笑ったが二人とも駒を持つ手が震えていた。


「あ、主人・・・・・・・」フェンリルは犬耳を垂れ尻尾を下げて不安げに見上げてきた。


「・・・・・直ぐにここを発つ。準備をしろ」


早口に言うと夜叉王丸は今だに熟睡しているジャンヌを抱き上げた。


「なんじゃ?もう出て行くのか?」オーディンが不満げに言ってきた。


「あぁ。ほとぼりが冷めたらまた来る」早口に返答する夜叉王丸。


「・・・・・んっ、ひ、てん?」ごしごしと目を擦りながらジャンヌが目を覚ました。


「嗚呼、ジャンヌ。少し用事が出来たから城下の町に宿を取るぞ」


寝ぼけているジャンヌに言うと夜叉王丸は抱き上げたまま準備を整えた従者を連れてドアに向かったが途中で固まった。


「・・・・何処に行かれるのですか?・・・・・・飛天様」


ドアには腕を組んで夜叉王丸達を凝視するリュミエールが立っていた。


「あ?いや、そろそろ宿を取ろうと城下に行こうと思ってな」


苦笑しながら冷汗をかく夜叉王丸。


「リュミエールこそアポロはどうしたんだ?」


「はっ、地下牢に閉じ込めました」


『『『『『そのままギリシャの神界に護送してくれたら良かったのに』』』』』


五人は内心舌打ちをしたが表は友好的な態度を取った。


「そいつは、ご苦労だったな」ダハーカが労いの言葉を掛けると


「貴様などに労いの言葉を掛けられても嬉しくないわっ」


キッと鋭い視線と厳しい言葉を言うリュミエール。


「ひぃっ」びくりとした時に写真集を落とした。


「あっ・・・・・・・・」急いで拾い背中に隠すが


「・・・・・・貴様」リュミエールには見えてしまっていた。


「・・・・・大和撫子写真集だと?貴様、何と破廉恥な物を見ている!?」


「ひいっ!ごめんなさい!?」顔を青ざめて土下座するダハーカ。


「男だから仕方ないだろっ」弱腰でフェンリルが反論すると


「黙れ!貴様の意見など聞いていない!?」


「ひぃぃぃぃ!?」


リュミエールの怒鳴り声にフェンリルは夜叉王丸の足元に跪いて隠れた。


「まったく。主らのような従者では飛天様も迷惑だろう」


「主らには飛天様の従者としての自覚が無さ過ぎる」


ビシッとゼオン達を指差すリュミエール。


「貴様らの弛み切った根性を私が叩き直してやる!!」


「そ、それだけは、か、勘弁してくれ!」


「お願いします!後生です!?」


ゼオンと常識人のヨルムンガルドまでが血相を変えて泣きながら懇願した。


「駄目だ!貴様らは我らが生唾を飲む程に欲しがった飛天様の従者をしているのだ!!」


ガシッと右手にダハーカ、ゼオン。左手にフェンリル、ヨルムンガルドを掴み部屋を出た。


「いやだ!」、「ひぃ!た、助けてくれ!?」、「ごめんなさい〜もうしません!?」、「主人!たーすけてー!?」


ドアから遠ざかる従者達の悲鳴に夜叉王丸は沈黙を通した。


「・・・・・・良いのか?」


「・・・・・仕方ないだろ。ジャンヌを護る為だ」


オーディンの言葉にため息を吐きながら再び眠ったジャンヌの前髪を撫でた。


「んんん・・・・・・・・・・・」くすぐったそうに身を捩る(よじる)ジャンヌ。


「取り合えず従者が戻るまで客室のベッドで眠らせてはどうだ?」


「あぁ。頼む。俺はあいつらの助けに行かないと・・・・・・・・」


「ふぉふぉふぉ、従者の心配、奥方も心配と難儀な男じゃな」


白髭を撫でながら愉快そうに笑いながらオーディンは車椅子を動かした。


「けっ、むかつく爺だ」


愚痴を零しながらジャンヌを抱き直し夜叉王丸はオーディンの後に付いて行った。







「ジャンヌ、また出かけるが直ぐに戻るからな」


腰まで伸びた銀髪を一房に口付けをして背を向ける夜叉王丸。


「あっ、、思い出した。そう言えばスクルドが武器の目利きを頼むと言ってたんだ」


部屋を出ようとした夜叉王丸に思い出したように独り言を漏らすオーディン。


「はぁー?あの時代劇オタクがか?!」


「あぁ。この前一人で日本に旅行した時に刀を一振り手に入れたけど、本物か贋物か分からないから頼みたいと」


「・・・・・・はぁー」手を額に当てため息を漏らす夜叉王丸。


「ふぉふぉふぉ、大した人気じゃな」


「嬉しくない言葉だ」


ずーんと肩を落としながら夜叉王丸は部屋を後にした。


「ふぉふぉふぉ、相も変わらず女難の層が浮き出ている男じゃ」


「しかし、それに付き合う姫は哀れじゃな」


ベッドで眠るジャンヌを哀れみの念を込めて見つめるオーディン。


『わしも影ながら力になるぞよ。姫』


心の中で決意しながらオーディンはジャンヌの寝顔を一度見て哲学書を読み始めた。





何だか従者が惨めになって来ています!?

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