第三十話:悪魔VS神
更新が遅れて申し訳ありませんっ。
「・・・・・ここなら戦いの場所としては申し分ないだろ?」
俺はアポロを連れて来たのはヴァルハラから少し離れた戦死した兵達が集められるエインヘリャル。
ここで戦死した兵達は毎日のように殺し合い戦に備えて腕を磨いている。
だから、ここで俺が暴れても誰も分からない。・・・・・・・・・多分だけど。
「自らの墓場を選ぶとは中々だな」アポロが嘲笑う。
うぜぇ。こいつの鼻歌ならぬ笑いが何ともムカツク。
「そういう言葉は俺を殺してから言え」
懐からセブンスターを取り出すが生憎の空。
ちっ、何処まで運がないんだよっ。
舌打ちをしながらパリジェンヌを取り出し口に銜え火を点ける。
これを吸うのも久し振りだな。
これを吸い始めて何百年だ?
何百年か前にゼオン達を連れてフランスを旅した時にバーで知り合った女に勧められたんだよな。
見た目は肩まで伸びた茶髪にアメジストの瞳が似合う二十代の良家の娘だったけな?
流石はフランスの女だと思った。
あの女、ジャンヌ程ではなかったが気品と優しさに溢れていたな。
一夜の営みで終わり朝起きるとパリジェンヌを置いて出て行ったんだよな。
それっきり出会ってない。
それから吸い始めたんだよな?
昔を懐かしむとは俺も歳だな。
「貴様、何を笑っている」
どうやら笑っていたのが釈に障ったのかアポロが睨んでいた。
「別に良いだろ?」紫煙を吐きながらアポロを見る。
「まぁ良い。その口を今から閉じさせてやる」
アポロは銀細工の施された弓矢を取り出し矢をつがえ俺に向けた。
「無駄な細工だな。戦いに使うものじゃない」
こいつの武器は自分の場所を敵に教えているようなものだ。
こんな弓矢、初心者でも使わないぞ。
「黙れ。貴様のような成り上がり者に説教を受ける義理はない!?」
赤面して怒るアポロ。
図星を言われたからって怒るなよ。
戦いには冷静さが必要なんだぞ。
「死ね!!」
アポロの放った矢が俺を目掛けて跳んで来た。
「はぁー、面倒臭い」
ため息を吐きながら俺は腰のモーゼルを取り出した。
「せっかちな男は嫌われるぞ」横に跳んで照準を定め引き金を引く。
「ふんっ。女など力づくで奪うものだ!!」
弾丸を矢で弾き飛ばし嘲笑うアポロ。
「・・・・・エロ爺と同じ考えだな」
吐き捨てるように言うとフルオートにして横向きで撃った。
力ずくで物にしようなんて愚者のする行為だ。
まして神のする行為ではないな。
「そんな弾丸など効かぬ!?」笑いながら弾丸を避けるアポロ。
「・・・・阿呆だな」
こいつの馬鹿さには心底呆れ果てる。
「ははははは!負け惜しみを!?」
アポロは笑いながら矢を射ようとしたが
「・・・・・・ぐはっ」アポロは悲鳴を上げて地面に膝を着いた。
「どうだ?跳弾の味は?」
半分になったパリジェンヌを吸いながら俺は笑った。
「ぐっ・・・・・・」
腕から血を流しながらアポロは俺を睨んできた。
「おおお、まだ元気か」
俺は空になったマガジンから新しいマガジンに変えながら尋ねる。
「貴様〜!正々堂々と戦わず恥を知れ!?」
「殺し合いに堂々なんてあるかよ」
生か死かの戦いで正々堂々なんて馬鹿も良い所だ。
正々堂々でなかったから勝てなかったなんて言い訳か甘ちゃんの証拠だ。
「ぐぐぐぐ」悔しそうに唇を噛むアポロ。
「これ懲りたら俺に喧嘩なんて売らないことだな」
モーゼルを腰のホルスターに収め背を向ける。
「や、夜叉王丸っ」
アポロの声が聞こえ振り返ると短刀が跳んできた。
「・・・ちっ」
ギリギリで交わすが肩を掠めた。
「まだ終わらんぞ!?」
手に数本の短刀を挟み立ち上がるアポロ。
「・・・くそ餓鬼が」再び腰に手を当てたが
「・・・・そこまでだ。アポローン」
頭上から声がして見上げると天馬に乗り甲冑と武器で身を包んだ数人の娘達がいた。
「げっ、アマゾネスっ」思わず俺は声を漏らす。
本名はワルキューレだが俺は畏怖の念を込めてアマゾネスと呼んでいる。
こいつ等は戦死した兵の魂を運営、管理する役割を持ち戦があれば兵を率いて戦うまさに戦乙女、アマゾネスだ。
「アポローン。ヴァルハラに不法侵入した罪によりご同行を願います」
言葉こそ礼儀正しいが有無を言わせない口調だった。
相変わらず怖ぇーな。
「き、貴様ら!私を誰だと思っている?神だぞっ」
「えぇ。存じ上げております。しかし、罪は罪。抵抗するなら力づくでも連行しますよ」
剣やら槍やらを構えるワルキューレ。
こいつ等の実力って並大抵じゃないんだよな。
過去に何度か手合わせをしたがどいつも手強かった。
「・・・・・く、くそっ!?」何を思ったのかアポロは俺に短刀を投げてきた。
かぁー、何故に俺に投げるかな?
ため息を吐きながら短刀を避け背後に回りアポロの両腕を掴むと一気に後ろに引いた。
「ぎゃぁー!?」
「両肩の関節を外した位で喚くな」
悲鳴を上げるアポロを俺は苛立ち気に見下ろした。
「ったく。根性の無い餓鬼だ」吸い終えたパリジェンヌを携帯灰皿に入れる。
「くそっ、離せ!離せ!」
両腕を垂れながらアポロは喚き散らした。
さぁて、アマゾネスがアポロに目を向けている内に逃げるとするか。
こいつ等に関わると碌な目に合った事がないからな。
待ってろよ。ジャンヌ。今から帰るからな。
「・・・・・お久し振りです。夜叉王丸様」背後から声を掛けられた。
ちっ、やっぱり逃げられなかったか。
「夜叉王丸様が北欧の神界に来ているとは初耳でした」
振り向いた先にいたのは腰まで伸びた金髪に蒼瞳のジャンヌと同じ年齢の女がいた。
げっ、こいつは・・・・・・・・・・
「・・・・・私を覚えて下さったのですね?嬉しいです」
「・・・・・・あぁ。久しいな。リュミエール」
今、俺が女の中で会いたくないリストにアップしている奴だ。
こいつ、リュミエールはワルキューレの指揮官であるスクルドの懐刀だ。
頭は切れる武術も強いし更に美人の良い所ばかりの女だ。
俺としては会いたくなかったが・・・・・・・・
「・・・・・じゃあ俺はこれで・・・・・」
早口に言って立ち去ろうとしたが
「お待ち下さい」
間を置かずに呼び止められた。
しかも腕を掴まれて
「・・・・飛天様。せっかく久し振りに再会したのですから、何処かでお茶でも致しませんか?」
おいおい、何だよ?上目使いに流し目で見上げてきて?
しかも夜叉王丸から飛天に呼び方が変わってるぞ?
「茶を飲みながら何を話すんだ?」
大体の予想は出来ていたが尋ねてみた。
「飛天様の軍団や剣術の話しです」
・・・・・・やっぱりその話題か。
俺は内心ため息を吐いた。
何処の世界に茶を飲みながら物騒な話しをする奴がいるんだよ?
しかも俺の軍団なんて自分で言うのも何だが寄せ集めの軍隊だぞ?
「いや、遠慮する。オーディンの爺さんを待たせてるからな」
「そうなのですか?でしたら私も一緒に・・・・・・・・・・」
「いや、お前はアポロを見張れ。お前がいれば部下も心強いはずだ」
「しかし・・・・・・・・・」
「俺の事は気にせず職務を全うしろ」早口に言うと俺は翼を出してヴァルハラに向かい飛んだ。
ふぅ、参った参った。
あの分だと押し掛けて来そうだからジャンヌを連れて早い所、ヴァルハラを出よう。
そう決意しながら俺はエインヘリャルを後にした。
まだまだ続くのでお付き合い下さい!