第二十八話:成り上がり者
更新が遅れてすいませんでした!!
「・・・・・・・ヌ、ジャンヌ」
「・・・・・・・んっ」
私は重たい瞼をうっすらと開けた。
瞳を開けると飛天様の顔が上にあった。
っという事は膝枕で眠ってたの?
うわぁ!?恥ずかしい!?
「疲れてたのか?爺と話してる間に寝てたぞ?」
私がそんな事を思っていると知らないで天様が頬に付飛いた髪を指で払ってくれた。
「ごめん。寝ちゃって・・・・・・・・・」
起き上がろうとするが留められた。
「気にするな。眠いなら寝てて良い」
「でも・・・・・・・・」
まだ食い下がる私に
「今、爺は用事で居ないしダハーカも寝ている」
耳を澄ますとダハーカさんの静かな規則正しい寝息が聞こえてきた。
「な?だから寝てな」
促すように言われ私は
「・・・・・・うん」
飛天様の言葉に甘えて私は再び瞳を閉じ飛天様の膝枕の上で眠り始めた。
飛天様の膝はゴツゴツしてて硬かったけど、それでも温かくて気持ち良かった。
「・・・・おい。何時まで出てこない気だ?いい加減に出て来たらどうだ?」
ジャンヌが眠ったのを確認して俺は本の山に隠れている奴に話し掛けた。
爺が部屋を出てから感じる気配。
神々しくもムカつく気配に覚えがある。
・・・・・・・・神界の気配だ。爺みたいな心落ち着く和む気配ではなく針のように鋭く尖った気配。
まったく、せっかくのハネムーンを台無しにする気配だ。
「・・・・・出て来ないなら力ずくで引き摺り出すぞ?」
右手の節をバキバキと折ってみせる。
正直、引き摺り出そうと本気で思った。
せっかくジャンヌの寝顔を堪能していたのに邪魔された腹いせだ。
結婚してから二人きりなんて
脅し文句を言うとやっと気配を発していた奴が出てきた。
「・・・久し振りだな。成り上がり者」
本の山から白い絹で身を包んだ金髪碧眼の二十代前半の男が出てきた。
超美青年ってジャンヌが騒ぎそうだが、性格も知っている俺はこいつがどれだけ性格が悪く女を蔑ろにする奴か分かっているから一瞥しただけで終わった。
まったく世の中、容姿が良い奴の殆どが性格ブスだと思わずには入られないぜ。
「・・・・・アポロか」
俺が名を呼ぶと
「・・・・・・・何度言えばよい?私の名前はアポローンだ。断じて貴様の田舎国の菓子メーカの菓子などではない」眉を吊り上げて俺を睨んできた。
そんなに怒るものか?ちょっと菓子の名前と似てたから付けた位で怒るなよ。
心が狭い野郎だ。
にしても奴の放つ殺気は心地が良いな。
戦場が懐かしいぜ。
血と悲鳴、火薬の臭い、鉄同士のぶつかる音、全てが懐かしい。
ってもこいつの殺気なんて微風程度だがな。
こいつ以上の殺気なんて腐るほど俺は感じてきた。
まぁ、今は戦なんて御免だけどな。
しかし、何でギリシャの神界にいる男神が北欧にいるんだよ。
「貴様のような成り上がり者を始末する為に来た」
俺の考えを見え透いたように冷笑を浮かべるアポロ。
「・・・・・成り上がり者ねぇー。まぁ否定はしないぜ」
普通なら怒る所だが怒りが沸いて来なかった。
事実、人間の俺が悪魔になり男爵になったのを成り上がりと言われても否定できない。
まぁ、悪魔になってから散々に言われ続けたから慣れたのか?
あんまり慣れたくないな。
しかし、慣れてしまった。
まったく慣れとは恐ろしいものだ。
「・・・・・んんん」俺の膝で眠っていたジャンヌが殺気で身動ぎをした。
不味いな。ジャンヌにはこんな場面を見せたくない。
「・・・・・ここでは邪魔が入る。外に出ようか?」
俺はジャンヌの額に手を当て眠りの魔術をかけた。
これで暫らくは起きないだろ。
「ふっ、女を気遣うなど甘い事を・・・・・・・」
「勝手に言ってろ」
アポロの嫌味にも気にせず俺はジャンヌを静かに床に寝かし着ていたコートを掛け付け立ち上がった。
直ぐに戻るから大人しく寝ててくれ。
ジャンヌの髪を一撫でして立ち上がる。
「・・・・・ダハーカ」
「・・・なんだ」ジャンヌの側で眠っていたダハーカに話し掛ける。
こいつも気付いていたのだろう。声に眠気を感じなかった。
頼もしい相棒だぜ。
「ジャンヌを何者にも触れさせるな。良いな?」
こいつのプライドの高さと自意識過剰を考えれば一人で来ただろうが油断は出来ないな。
ジャンヌに万が一の事を考えれば些か過保護も厭わない。
「・・・・分かった。お前はそこのクソ神を叩きのめして来い」
瞳を閉じたままダハーカは了承してくれた。
「ふっ、任せて置け」
俺は小さく笑いドアで睨んでいるアポロに近づいた。
「行こうか?」
「・・・・殺してやる」
すれ違い様にアポロが低い声で言った。
「殺れるものなら殺ってみな?神様」
俺は気にせずアポロを連れて爺の部屋を出た。
この俺を殺す?殺すだと?
たかが地位がそこそこ上の糞神がほざきやがって・・・・・・・・・・
だが・・・・・・・・・面白い。上等だ。
ジャンヌとのハネムーンを邪魔した礼をたっぷりとしてやる。
口を耳まで吊り上げて俺は笑った。
ははははははは、久し振りに手加減なしで暴れるかな?
こいつは神界のエロ爺(別名、神界の石田純一)のお気に入りだから殺すのはやばいが、半殺しなら大丈夫だよな?
俺に仕掛けてきた奴が悪いんだ。
しかも、新婚旅行の最中に仕掛けてきたんだからな。
沸き上がる殺意を抑えながら俺とアポロはヴァルハラを後にした。
ギリシャ神話の神が悪者です!?