第二十四話:ストーカー悪魔
氷狼デュラン出すの忘れてました!?
「飛天の馬鹿!!離してよ!?」私は力の限り暴れるがびくともしない。
「・・・・・・・・」私が怒鳴っても飛天様は気にもせず前を歩く。
城から帰っては私と飛天様は険悪な雰囲気で屋敷に帰った。
と言っても私が一方的に怒って飛天様は黙っているだけなのだが・・・・・・
「奥様、主人様っ。お待ち下さい!」
ヨルムさんが呼び止める声が聞こえたが飛天様は無視をして歩き続けた。
「きゃあ!!」部屋に入ると私をベッドに乱暴に降ろされた。
「・・・・・・・・・」私を降ろすと飛天様は部屋から出ようとした。
「ちょ、飛天!!」ベッドから起き上がり追おうとしたが
「・・・・・部屋にいろ」
威圧感ある口調で言われて私は大人しくベッドに座らず
「・・・・隙あり!」一瞬の隙を突いて飛天様の横を通りドアに行こうとしたが
「・・・・・甘いな」首根っこを掴まれた。
「大人しくしてろ。さもないと縛るぞ」
「え?飛天ってそんな趣味が・・・・・・・・・」思わず凝視する。
「アホ!俺は変態じゃない!客が来るから大人しくしてろと言ってるんだ!?」
大音量の声で耳元で怒られた。
「ひぃ!!」思わず耳を塞いだ。
「別にお客さんが来るからって部屋に閉じ込めておく必要ないでしょ?」
首根っこを掴まれたまま飛天様を睨む。
「・・・・ったく」小さく息を吐く飛天様。
「今から来る客は、正直に言うとストーカーだ」す、ストーカー?
ストーカーって好きな娘に付き纏う少し頭が可笑しな人だよね?
「だから、お前に悪影響を与えたくないから部屋に閉じ込めておきたいんだ」
ついさっき喧嘩したばかりなのに私の心配をしてくれるなんて・・・・・・・・・・・・
「さっきの事、怒ってないの?」
「さっき?城の事か」
「別に少しむっとしただけだ」
「あれ位で怒ってたら当の昔に刀を抜いている」
さり気なく恐ろしい事を言う飛天様。
「主人様、そろそろアスモデウス様がお越しになります」ヨルムさんがドア越しに言ってきた。
アスモデウス?
また飛天様は大物悪魔に変なあだ名を付けて・・・・・・・・・・
「これはベルゼブル達も公認のあだ名だぞ」
私の表情を見て飛天様は私が口を開く前に言った。
「あいつ淫欲の首領のくせして変に純情で奥手だから毎日のように失恋してるんだよな」呆れたようにため息を漏らす飛天様。
「もう止めないからお前が来たいなら来な」
私を今度は優しく降ろしドアを開けて部屋を出る飛天様。
私は勿論、飛天様の後を追う事にした。
「おおぅ!!飛天!?」
客室の部屋に入ると背中まで伸びた茶髪に宝石のような碧い瞳にモークルをした美男性が飛天様に抱きついて来た。
「聞いてくれ!!また振られたんだ!?あはぁはぁはあああああ!!!!!」
物凄い大声で泣く美男性を飛天様は珍しく丁寧に引き離した。
「分かった分かった。だから、離れてくれ。アスモデウス」
大粒の涙を流す美男性、アスモデウス様は飛天様から離れ椅子に座り私と飛天様は机を挟んでソファーに座った。
「っで今度は誰に失恋したんだ?」懐からセブンスターを出して口に銜えながら尋ねる飛天様。
「人界の・・・・・だ」
鼻水を垂らしながら美しい顔を鼻水と涙で歪ませたアスモデウス様は失恋した相手の名前を言った。
「三週間、自宅から事務所まで警護して今日、自宅から出た所で薔薇の花束を渡して『私と付き合って下さい』って言ったら『ストーカー!!』の一言で断られた」
最後まで言い終わると机に突っ伏して大泣きした。
これがアスモデウス様なんて信じられない。
「哀れの一言に尽きるな」
使い古し灰銀に色落ちしたジッポで銜えた煙草に火を点ける飛天様。
「飛天、もう少し慰めの言葉を掛けて上げなよ」見かねて耳打ちする。
「じゃあ、女の立場から助言してやれよ」
「え?ストーカーに助言なんて・・・・・・・・・・・・・・・あっ」思わず本音が出てしまった。
「ストーカー?おぉぉぉぉぉぉう!!!!」更に大泣きしてしまったアスモデウス様。
「案外、お前も酷い事を言う女だな」眼帯をしている右目で私を見て?笑う飛天様。
「だ、だって、そんな事、言っても・・・・・・・・・・・」
「まぁ、俺が女の立場でもそう言うだろうなー」紫煙を出しながら気軽そうに答える飛天様。
「主人様、人界のテレビでアスモデウス様の事が映っています」
部屋から入ってきたヨルムさんは客室に置いてあった人界に通じるテレビのスイッチを入れた。
“人気アイドルにストーカー!!”
テレビのワイドショーではデカデカとこの話題が映されていた。
「被害者は人気アイドルの○○○で三週間もストーカーに悩まされていた模様で今日の午後に事務所から出てきた所を襲われたそうです」
「警察では、犯人を指名手配し行方を追っている模様です」
「・・・・・すっかり悪者扱いだな」
テレビを見て飛天様は呆然とするアスモデウス様を見た。
「ですね。まぁ、三週間も尾行されては誤解するものです」
眼鏡のずれを直しながら答えるヨルムさん。
「「ぎゃはははははははは!!最高だ!?この番組!?」」フェンさんとゼオンさんは腹を抑えて笑っていた。
「俺は襲ってないぞ!!」
意識を取り戻したアスモデウス様はテレビに猛然と抗議した。
「相手からすれば襲われたと思うぞ」冷静に答える飛天様。
「人界に行って抗議してくる!?」
怒りの炎を燃やすアスモデウス様は部屋を出ようと立ち上がったが
「捕まりに行くようなものだから止めておけ」飛天様がため息を吐きながら答えた。
「また警察の所に迎えに行くなんてごめんだぞ」
「うるさい!!行くと言ったら行くんだ!?」駄々っ子のように喚くアスモデウス様。
「・・・・・・・はぁ、好きにしろ」根負けした飛天様。
「見てろ!必ず無実を証明してやる!?」アスモデウス様はずんずんと部屋から出て行った。
「・・・・仕方ない」素手で煙草を揉み消しソファーから立ち上がる飛天様。
「どこに行くの?飛天」
「あの馬鹿が警察の厄介になる前に連れ戻す」面倒臭そうに返答する飛天様。
「ジャンヌ、お前も一緒に来い」
私も人界に?
「お前にも少し手伝って貰うかも知れん」
私に手伝い?
「別に良いけど、何をするの?」
「行けば分かる」
私を置いて部屋を出る飛天様を慌てて追う。
「じゃあ、行って来るね?デュラン」
屋敷に連れて帰った、もとい着いて来たデュランの頭を撫でる。
デュランは小さく鳴いて私を見送ってくれた。
飛天様の後を追いながら私は小さく息を吐いた。
何だか変な事になっちゃったな。
これ以上、事態が急変しない事を切に願う私。
すいません(爆)アスモデウスをストーカー扱いしてすいません!?