逸話:神族と茶会
今回はシリアスですがやっぱりラブコメになります!
私は今、夢を見ているのだろうか?
試しに自分の頬を抓ってみたが、痛かった。
という事で今の状況は夢ではなく現実。
「どうした?行き成り自分の頬を抓ったりして?」
私を膝の上で横抱きにした飛天様が覗いてきた。
「う、ううん。何でもないよ」慌てて答える。
「そうか?」
「うん。何でもないから」
まさか、大神ゼウスの兄の冥王ハーデス様と后のペルセポネ様と更に皇帝で義父に当たるベルゼブル様という偉い方達と茶を共にしているのが信じられないなんて言える訳がない。
「妻を心配するとは優しいな」ハーデス様が優雅な手つきで紅茶を口にした。
「妻を心配するのは当たり前だろ?」
対して飛天様の飲み方は優しく言えば下手な悪く言えば下品でした。
はぁ、何でもう少し綺麗に飲めないの?
「奥さんは嬉しくなさそうね?」
ペルセポネ様が不敵に笑って私を見つめてきた。
「い、いいえっ。嬉しいですよ」
慌てて否定する。
「そう?何かハーデスと飛天さんを見比べて溜め息を吐いてたけど?ねぇ、アラストール」
アラストール様に話し掛けるペルセポネ様。
「そうですね。恐らくハーデス様に比べて劣っているから溜め息を吐いたのではないでしょうか?」見事に当たりです。
「そんな事で比べられたら可哀相ね。飛天さんも」
二人の意地悪な笑みが私を捉える。
「おいおい。ジャンヌをあまり虐めないでくれよ」飛天様が助け舟を出してくれた。
「飛天さんは悲しくないの?他の人と比べられて?」
「他人は他人。俺は俺だ」
「でも・・・・・・・」
「まぁ、本人が良いと言ってるんだから良いじゃないか」ベルゼブル様も話を打ち切ろうとした。
「しかし、蝿王よ。この娘は自分の夫がどのような理由で悪魔になったかを知らない。それでは、無意識な言葉で飛天は傷ついたのだぞ」ハーデス様まで怒り出した。
ハーデス様の言う通り私は飛天様が何故、人間から悪魔になったのか知らない。
ハーデス様達がお怒りになる程だから、とんでもない地雷を私は踏んでしまったようだ。
「ハーデスもペルセポネ殿も止めてくれ。せっかくの茶が不味くなるだろ?」黙っていた飛天様が静かな口調で嗜めた。
「・・・・・飛天」皆の視線が飛天様に集中した。
「俺は別に傷ついてないから大丈夫だ。だからジャンヌを虐めないでくれ」
「ジャンヌには俺の口から話す。それが俺なりのけじめだ」
飛天様は私を膝から抱き上げて立ち上がった。
「今日はもう帰らせてもらう」そう言って飛天様は私を抱いたまま茶会室を後にした。
「・・・・・ごめんね。飛天。何か傷つけるような事を言って」
部屋を出て暫くしてから顔を臥せて謝る。
「なぁに。気にするな」飛天様は笑いながら答えた。
「それより“ハーゲン”達が変なこと言ってたけど大丈夫か?」
「ハーゲン?」
「あぁ。この前、ハーゲンダーツってアイスクリームを食べたろ?」
ハーゲンダーツって小さな円形のアイスクリームだったよね?凄く美味しくて二個も食べてお腹を壊したけど・・・・・・・・
「ハーゲンダーツを食べてて思い付いた名前だ」
ハーゲン・・・・・・まさか、ハーゲンって
「察しの通りハーデスのあだ名だ」
やっぱり!!
「我ながら中々いい名前だと思うぜ」
「馬鹿!!何が中々いい名前よ!?」
事も在ろうに冥界の王にアイスクリームの名前を付けるなんて馬鹿の一言に尽きる。
「もう!ずっと思ってたけど飛天って本当に馬鹿よ!馬鹿!!大馬鹿よ!?」
「そんな馬鹿馬鹿って言うなよ」不快そうに顔を歪める。
「馬鹿を馬鹿って何が悪いのよ」
「言い過ぎは良くないだろ?」
「言い過ぎなもんですか!!」
「荒野の果てで暮らして皇帝にも鉄拳を出し冥界の王にアイスクリームの名前を付ける悪魔男爵が何処にいるのよ?!」
「お前の目の前にいるだろ?」堂々と胸を張って言い切る飛天様。
「なに威張ってるのよ!この人生破綻者!!」
「ルシュファーだって女たらしの人生破綻者だぞ」
「ルシュファー様の名前を出さないの!!」
周りの眼を憚らず言い争う私達を城内の人達は好奇心の眼で見ていたのを私と飛天様は知らない。
ごめんなさい!変なあだ名を付けてごめんなさい!?