第二十二話:ブラコン王女VSメイド姫
今回はジャンヌが壊れます(爆)
「補充は終わったのか?」
私から離れてドアの傍で私を睨んでいたリリム様を見て尋ねた。
「はい。闇の魔術の制御が上手く出来なくて」
私を睨んでいた時とは打って変わって優しそうな笑みを浮かべる。
な、何か、凄く腹の奥底から不快な気分が・・・・・・・・・・・
「闇?お前は氷系の魔術が合っていると言った筈だぞ?俺よりも魔術の腕が上のアスモデウスだって言ってるんだ」
アスモデウス、色欲から堕天。確か、今は魔界の学校で教授をしているって飛天様から聞いた。
教授も言っているのに何で闇の魔術を?
「お前に闇は合わん」
ばっさりと切り捨てる飛天様。
「だけど、飛天様は“自分がやりたい物をやれ”と言ったではありませんか」
少し拗ねた口調で答えるリリム様。
「確かに言ったが、先に自分に似合う魔術を物にしてから学べ」
「・・・・はぁい」諭すような口調で言われリリム様は小さく返事をした。
「それで今日は何の用で手紙を寄越したんだ?」
反省したリリム様を見て満足そうに笑い当初の目的を尋ねる飛天様。
「・・・・・友達のお茶会に一緒にどうかと思いまして」もじもじと答えるリリム様。
なに?なに、この感覚は?
なんか無性にムカツクんだけど・・・・・・・・?
「あの、手紙の内容、読みました?」
「いや、読む前にヨルムが処分した。しかし、俺の奥さんが行こうって言ったから来た」私の髪を優しく撫でながら答える飛天様。
「・・・では、この方が天界から来た“元地方豪族出身のメイド姫”ですか」
明らかに私を馬鹿にしている目付きと口調であると嫌でも分かった。
いくらサタン様の娘でも許せるものではない!!
・・・・・・・・言ってる事は正しいけど。
「初めまして。サタンの娘のリリムです」恭しく頭を下げるリリム。
「言い方が悪いぞ」怒った目付きでリリム様を睨む飛天様。
「・・・私はただ事実を申しただけです」
「・・・慇懃無礼か」難しい言葉を飛天様が言った。
慇懃無礼?
「俺の妻であり、お前の義姉になるジャンヌに対してあまり良い接し方ではないな」
腕を組んで威圧的な言葉を投げる飛天様。
いいぞ!もっと言ってやれ!!
「私は、こんな下級天使を義姉と認めません!!」
青筋を立てて怒鳴り私を睨むリリム。
なんか、この女には様を付けたくない。
「飛天様には、私のような姫を迎えるべきです!?」
何気に自分をアピールしてるよ。
「誰と結婚しようと俺の勝手だ」面倒臭そうに答える飛天様。
「これはベルゼブル様からの命令で婚姻を結んだ政略結婚!飛天様の意思ではないはず」
「まぁ、初めはそうだったけど今は満更でもないから良いかな」
「・・・・・・・・ッ」明らかに落胆の気を出すリリム。
くすっ、いい気味。
「私の・・・・・私の意思はどうなるんですか?!」
「私の意思?」私と飛天様は顔を見合わせた。
「私は長年、飛天様をお慕いしていました。その想いをどうすれば良いのですか!?」
・・・・・・告白だよ。
愛の告白だよ。
こんなムードもない所で告白とか何処のラブコメ?
「・・・・冗談だろ?」信じられない様子でリリムを見る飛天様。
「いいえ!本気です!だから飛天様が結婚すると聞いて悲しかったです。でも私は諦めてません!!」
「その下級天使を倒して私が飛天様の妻になります!?」高々に叫ぶリリム。
対して私は
ぷちっ
「・・・・・・・上等じゃない」
「・・・ジャンヌ?」私の様子を見て飛天様が覗き込んできた。
「さっきから黙って聞いてれば言いたい放題。私は飛天様と別れる気は一切ありません」私の言葉を挑戦状として取ったリリムは
「言ったわね?」
「えぇ。言いました。飛天様。もう帰りましょう」
私の豹変に唖然としている飛天様の腕に自分の腕を絡める。
「あ、あぁ。そうだな」
「じゃ、私と飛天様は帰りますから」飛天様の腕に自分の胸を押し付けながら笑った。
「・・・・・貴方は帰っても良いけど、飛天様は帰さないわ」
リリムは不敵に笑って呪文を唱え始めた。
「盟約に従ってその姿を現し敵を討ち滅ぼせ!姿を見せよ!!氷狼デュラン!」
高らかに呪文を唱えるとフェンさんとは真逆の白い剛毛の狼が出てきた。
「さぁ、デュラン!あの女を倒しなさい!?」
デュランと呼ばれた白狼は蒼い眼で私を見てきた。
一瞬、怯えたがデュランは飛び掛ろうとせず私に近づいてくると足元に擦り寄ってきた。
「ほぉ。懐いているじゃないか」感嘆の声を上げる飛天様。
「くぅーん」可愛らしい鳴き声を上げながらデュランは私の足を舐めた。
「何してるのよ!早くその女を殺しなさい!?」
ドアの方ではリリムが怒鳴りながら命令したが、デュランは聞く耳を持たなかった。
「デュラン!!」
再度、名前を呼んだが、デュランは見向きもしなかった。
「あらあら、自分の使い魔に愛想を尽かされるなんて情けないわね」
また後ろから声が聞こえてきた。
「・・・・・・・ッ!!お母様!!」リリムの後ろを見ると金髪に紅瞳の美女が妖艶な笑みを浮かべて立っていた。
お、お母様?!って事はリリス様!?
「学院から帰って来たら飛天さんの部屋に向かったと聞いたから来てみれば予想通りね」
「貴方のブラコン振りにも困ったものね」
ため息を吐きながらリリス様は指を鳴らしてリリムを氷の牢に閉じ込めた。
「ちょ、お母様!?」リリムは暴れたがびくともしなかった。
「ごめんなさい。内の娘が失礼な事をしちゃって」私にリリス様は謝ってきた。
「い、いいえっ。とんでもないです!私こそ失礼な事を・・・・・・・・」慌てて私も頭を下げる。
「良いのよ。貴方は私の義娘でもあるしリリムの義姉でもあるんだから」
「私は義姉と認めてません!!」
牢の中からリリムが怒鳴ってきた。
「リリムは私に任せて飛天さんと帰って良いわよ」
「サンキュ、リリム殿」
私が絡ませた腕を掴みながら飛天様は部屋を出ようと歩み始めたがドレスを引っ張られた。
足元を見るとデュランが引っ張っていた。
「デュランも懐いてるようだから連れて帰っても良いわよ」
苦笑しながらリリス様はデュランを指さした。
「せっかくだ。貰え」飛天様にも促され
「有り難く頂戴します」私は恭しく頭を下げて悠々と飛天様と城を後にした。
そしてこれから私とリリムの長い戦いが幕を開けるのだった。
ジャンヌ好きの人、すいません!?