第二十話:新しい愛人
新キャラ登場です!
「あー、面倒臭せぇ。何で俺が行かなきゃならんのだ?」愚痴を零しながら飛天様は城に向かっていた。
「文句ばっかり言わないのっ。可愛い義妹から手紙なんだから」私は窘めるように握っていた飛天様の手を軽いた。
今、私は馬に乗る飛天様に横抱きにされながら城に向かっている。
途中、万魔殿の人達から冷やかしの声を頂いて恥ずかしくて堪らなかった。
「可愛い・・・・・・・・・・・・・ねぇ」小さく嘆息して口を開く飛天様。
「餓鬼の頃のあいつって暴れ馬みたいな性格で可愛くなかったんだよな」
「暴れ馬って・・・・・・・・・・」年頃の女の子には痛い言葉だ。
「だって、俺が昼寝している時に蛇を置いたり風呂場に氷を入れるなんて普通じゃないだろ?」
そ、それは確かに普通じゃないかも・・・・・・・
「成長したから少しは変わったと思うが最近、会ってないから分からないな」
「どれくらい会ってないの?」
「まぁ、二、三百年位かな?」
「そんなに会ってなかったの?」
「あぁ。殆ど旅に出てたからな」
「旅に?」
「あぁ。ベルゼブル達が見合い話を持って来るから逃げてた」
飛天様らしい旅に出る理由だ。
「飛天の事を思ってやってるんだよ」
「そうか?この前なんて早く子供を作れなんて言われたぞ」
「やっぱり、子供は作らないと駄目なのかな?」
政略結婚だから、無理矢理にでも作らないと駄目なのかな?
「お前の決心が着いた時に作れば良い。・・・・・・・・・・・俺としては可愛い女の子が欲しいけど」
最後は私に聞こえないように言ったつもりだったようだが、しっかりと聞こえてた。
そう、飛天様は女の子が欲しいんだ。
意外な所に私は内心、微笑んだ。
「・・・・ねぇ、飛天」抱きしめられている手を包み込む。
「ん?なんだ?」顔を下に向ける飛天様。
『・・・・いつか、私の決心が着いたら子供を作りましょう?女の子をね♪』顔を近づけた飛天様の耳元で囁いた。
何だか、ペイモン様みたいに大胆になってきちゃったかな?
「・・・・・・・・・」耳元で囁かれた飛天様は唖然としていたが、直ぐに顔を赤面させて怒った。
「・・・・・ば、馬鹿!男をからかうんじゃないっ」
「なんで?」首を傾げてみせる。
「なんでって・・・・・・・・・・・」言葉に詰まる飛天様。
「飛天が私に欲情して襲うから?」
「!!」完全に固まる飛天様。
ヘルさんと城に出かけている間にペイモン様達から聞かされたんだよね。
『飛天はジャンヌちゃんに欲情してるのよ』
初めて聞かされた時は信じられなかったが、皆の力説に納得した。
『だから、飛天がジャンヌちゃんに手を出さない間は私が相手をする為に来たのよ』
ペイモン様が住むもう一つの理由も聞かされた。
確かに、飛天様も男だから性欲はあると思っていたけど・・・・・・・・・
『ジャンヌちゃんが決心するまで、私が飛天に抱かれて良い?』
この申し出に私は愕然としたが、ヨルムさん達から飛天様の身体が持たないと言われ渋々ながら納得した。
だから、少し飛天様に八つ当たりというか悪戯をしたのだ。
「と、兎に角!早く行くぞ!!」黒馬の腹を蹴ってスピードを上げる飛天様。
「うわっ」突然、スピードを上げられた私は飛天様の胸にしがみ付いた。
『・・・・・お前の決心が着く日を楽しみに待っているぞ』耳元で囁かれた言葉に赤面してしまう。
恐らく私の思惑などお見通しなのだろう。
「もっとしっかり掴まってろ」手綱を片手で握りながら私を抱きしめた。
そんな恥ずかしい目に遭いながら私と飛天様は城に着いた。
「おや?夜叉王丸様。奥方と一緒に何の用ですか?」
門番が冷やかしの瞳で見てきた。
「リリムに呼ばれたから会いに来た」
「リリム様に?そう言えばお会いになるのは久し振りでしたか?」
「あぁ。見合いから逃げるのに放浪の旅に出てたからな」
「羨ましい。俺も夜叉王丸様の故郷に行ってみたいです」
「お薦めだぜ?特にお前は芸術が好きだから京都が良いだろう」
「機会があれば行きたいものです。ところで話しは戻りますが、リリム様は学院で少し補充を受けております」
申し訳ありません、と頭を下げる門番。
「・・・・・そうか。じゃあ、帰るか」くるりと向きを帰る飛天様。
「ちょ、飛天。少し待てば帰って来るはずだから待とうよ」上を向いて飛天様に言ったが
「面倒臭せぇ。しかも此処に長居すると大低ろくな目に合わない」まったく聞く耳を持たなかった。
「あら?やっぱり飛天じゃない」
飛天様の胸から顔を出して見ると燃えるように赤い緋色の長髪とは違い氷のように蒼い瞳をした二十五、六歳の着物を着た美女が笑いかけてきた。
誰だろう?
「言ってる側からろくでもない目に遭っちまった」
嫌そうに言いながら馬ごと振り返る飛天様。
「酷い言い草ね。貴方を恋慕う女に向かって」
腕を組んで不機嫌そうに睨む美女。
「ジャンヌ。こいつは紹介したくないが紹介する。こいつはアラストールだ。以上」
「ちょっと!名前だけの紹介しないでよ!?」当然のように怒る美女。
「自分で紹介するから良いわ!初めまして。ジャンヌ姫。私は拷問、死刑を担当しているアラストールと言います。そして飛天の愛人です」
私に深々と頭を下げるアラストール様。
こんな美女が地獄の死刑執行人として怖れられているアラストール様なんて信じられない。
「愛人はお前の勝手な言い分だ」
「何よっ。何だ間だ言って抱いたくせにー」
「何だと?勝手に俺の家から必殺シリーズのDVDを持って奴が吠えるな」
「・・・・・少し仕置きが必要かしら?」アラストール様は懐から鎖鎌を取り出した。
「ふん。ほざけ」
馬から降りて腰の刀を抜かずに後ろに差していた小太刀と懐からリボルバー型の拳銃を取り出して構えた。
左手で小太刀を構え右手でリボルバー型の拳銃を構える飛天様と文鎮を回し始めるアラストール様。
ひぃ!なんでこうも喧嘩に発達するのよ!!
「ひ、飛天っ。落ち着こう?ここはベルゼブル様のお城だよ。そんな乱闘騒ぎなんて・・・・・・・・」
「安心しろ。直ぐに決着は着く」不敵に笑う飛天様。
「そうね。直ぐに着くから安心して下さい。姫様」こちらも同じく不敵に笑う飛天様。
「お、お願いだから止めて!!」馬から降りようとして轡に足を掛ける。
「姫君、私の肩にお使い下さい」
突然、後ろから男性の声がして振り返るとビレト様が片膝を着いて私を見上げていた。
「あ、ありがとうございます」
お言葉に甘えて私はビレト様の肩に足を置いて馬から降りると急いで飛天様の元に走った。
「飛天!止めてって言ってるでしょ!!」飛天様の腕にしがみ付く。
「・・・・無理だな。今日は機嫌が悪い」一向に私の制止を聞かない飛天様。
こうなったら仕方がない!?
「もう!そんな飛天は嫌い!!」
ペイモン様曰く『飛天はジャンヌちゃんにベタ惚れだから何でも言う事を聞くわよ』と教えられたのでダメ元で言ってみる。
本当に効果あるのかな?
「・・・・・・・・・」その言葉に一瞬、制止する飛天様。
「・・・・分かった」拳銃と小太刀を収める飛天様。
「新妻に嫌われたくないからな」ぽん、と私の頭に手を置く飛天様。
「リリムが帰ってくるまで俺がここで使っていた部屋にでも行くか?」
「う、うん!行く!」何はともあれ上手く治まって良かった。
「ほら、早く乗れ」再び馬に乗り城の奥へと消えた。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
ビレトとアラストールは暫らく信じられないような眼で去って行った二人を見ていた。
「・・・・・・今の飛天を見ました?ビレト様」先にアラストールが尋ねた。
「あぁ。・・・・・・あんな飛天は初めてだ」答えるビレトも唖然とした様子だった。
「あの飛天が、“新妻に嫌われたくはないからな”なんて言葉が出てくるなんて信じられません・・・・・・・・・・」
『飛天はジャンヌちゃんにベタ惚れだ』、『今、あいつからジャンヌちゃんを取り上げたり離婚宣言されたら切れる』ベルゼブルの言葉が脳裏に浮んだ。
「・・・・なるほど。あれならば納得がいきます。陛下」
威厳より恐怖を感じる表情からは考えられない小さな笑みを浮かべた。
「???」ビレトの言葉が分からず首を傾げるアラストール。
これから沢山の新キャラが増える予定です!(多分)