逸話:惚れた?
ベルゼブルよりも父親らしいをメインに書きました!
「まったく、あの馬鹿者はっ」ため息を吐きながらビレトは夜叉王丸の去った方角を睨んだ。
「そう怒るな。血圧が上がるぞ」苦笑しながらビレトを見る。
「陛下もサタン様も飛天に甘いのです!!だから、あのような人生破綻者になったのです!?」
怒り心頭のビレトに苦笑いするベルゼブル。
「まぁ、そうかも知れないが、ちゃんと結婚して万魔殿に与えた屋敷で暮らしてるから良いじゃないか」
「陛下の“命令”でないと断っていた筈です」直も食い下がるベルゼブル。
「いや、俺が言わなくても結婚した筈だ」
言い切るベルゼブルにビレトは首を傾げた。
「何故そう言い切れるんですか?」
「ん?分からんか?」
「?」ビレトは訳が分からなかった。
「あいつ、ジャンヌちゃんに惚れてるんだよ」
「・・・・・飛天が、ですか?」在り得ないといった表情のビレト。
「あぁ。ジャンヌちゃんに手を出そうとしたら何回も返り討ちにされた」苦笑するベルゼブル。
「あやつがですか?神界の女神達を振った飛天が、元メイドの下級天使に惚れたと?」理解できないといった表情のビレト。
「何に惚れたかは知らんが確実にべた惚れだ」断言するベルゼブル。
「今、ジャンヌちゃんを取り上げたり離婚宣言なんてされたら確実に切れるな」
「あやつが女の事で切れるなど想像も出来ません」
「俺もだ。だが、面白そうだ」口の端を吊り上げて笑うベルゼブル。
「ペイモンの話しでは、昨日、強引にキスをして罪悪感を感じて人界に逃げたらしい」
「何れは契りを交わすものです。何故、逃げるのです?そのまま契ってしまえば良かったではありませんか?」
「あいつに言わせれば、嫌がる女を無理矢理キスするなんてご法度なんだよ」
「あいつは男よりも女を優先するからな」
「女は男以上に逞しい。男は、家事も子育てもしないくせに威張るなっていうのがあいつの理論だ」
「その理論には俺も賛成だがな。そんな所が女達の心を鷲掴みにして放さないんだよ」
「特にリリスちゃんなど大いに飛天を可愛がっているだろ?前夫が亭主関白だったから、その反動だな」
「今回の婚姻にリリス様はなんと?」
「ん?無条件で祝福してたぞ。・・・・しかし、リリムちゃんは怒り心頭だ」
「はぁ、仕方がありませんね。リリム様は・・・・・・・・・」ため息を吐きながら頭を抱えるビレト。
義兄である夜叉王丸に心酔しているリリムが今回の婚姻に激怒して城の一部を破壊したと部下から報告されたのを思い出したビレト。
「あぁ。何せ初恋の相手が結婚したんだ、怒るのも無理は無い」頭を抱えるビレトに力なく笑い掛けるベルゼブル。
「・・・・・だから、謁見の折りも顔を見せなかったのですか?」
「あぁ。リリスちゃんが部屋に閉じ込めたからな」出ていたら恐らく暴れていただろう、と言った。
「飛天が窓から出て行ったのもリリムちゃんと会いたくなかったからだろうな」
「なるほど。それならば納得です」
窓から出ずに城の外に出るには、リリムの部屋を横切らなければならない。
それを考えて窓から出たのなら仕方ないな、と納得するビレト。
「リリム様にも困ったものです。あれでは飛天が哀れです」
「まぁ、俺の女性関係の後継者でもあるんだ。これ位の危機は乗り越えて貰わないとな」
哀れみの表情のビレトとは違いベルゼブルは厳しい表情だったが、瞳が笑っていたのをビレトは見逃さなかった。
「・・・・陛下よりも危険だと思いますが?」
男性関係が激しい神界の女神達のハートを掴んで放さない夜叉王丸はベルゼブル以上に危険な目に合うだろうと思われる。
「ヨルムやゼオン達もいるんだ。心配ないだろ」ビレトの考えを読んだ様にベルゼブルは笑った。
「・・・・はぁ」どこか不安な気持ちになるビレト。
『飛天もジャンヌ姫も陛下のような義父を持って哀れだな』心の中で新婚夫婦を哀れむビレト。
何だかんだ言って、ベルゼブルよりもビレトの方が夜叉王丸の事を心配しているようだ。
ビレトは悪魔に成り立てだった夜叉王丸の教育化係兼監視役を務めていた。
また、夜叉王丸の行動を監視するだけでなく命を狙う輩から護る為でもあった。
悪魔に成り立ての頃の夜叉王丸は自暴自棄で、その行動に拍車を掛けるように夜叉王丸を暗殺しようとする輩が行動を起こした為、王族であるビレトを護衛役に任命したのだ。
そんな経緯もあり、ベルゼブル以上に夜叉王丸と付き合いのあるビレトは、ある意味ではベルゼブルよりも父親らしい。
「さぁて、仕事に戻るかな?」腕を回しながらベルゼブルは書斎室に向かった。
一人残されたビレトは、大きな溜め息を吐き自身も仕事をやりに鍛練場に向かった。
ビレト、哀れです(泣)次回もお楽しみに!!