逸話:親子対面
始めて夜叉王丸の視点から書きました!
「・・・・・・・」俺はヘルを連れ城に来ていた。
理由は俺のもう一人の養父でありヘルの父親でもあるサタン様に会う為だ。
俺としては、昨日のキスの件をジャンヌに謝りたいから、行きたくなかった。
しかも、城には認めたくないが、もう一人の養父、皇帝のベルゼブルがいるからだ。
まったく、サタン様だけで養父は十分だ。あんな馬鹿皇帝は入らん!!
「ったく面倒臭せぇ。なんで俺が付き添わなくちゃならんのだ」
客室で不機嫌に煙草を蒸していると
「そう。怒らないでくれよ。おっさん」苦笑しながら紅茶を飲むヘル。
こいつのちょっとした仕草にも品があり見る者を魅了する。
まぁ、俺はそんな風に感じないが。
周りからは『お前は美的感覚が狂っている!!』と断言された。
そんな事はないと思う。俺だって綺麗な物には魅了される。
天界の口喧しい女神達やベルゼブル達は美しいと思う。
しかし、如何せん性格が超が着く程に悪すぎる。
本当に美しいのは、心が透き通り清らかで輝かしい者の事だと思う。
外見の美しさなど何れは朽ち果てる。
この世は無常だ。財も容姿も権力も全て儚く散り消える。
だから、外見の美しさなんて在ってない様な物だ。
まぁ、悪魔も天使も女神も外見は美しいからな。内側はドス黒いが・・・・・・・・・・
まぁ、俺は見た目からして下品な流浪人と言った所か?
外見もベルゼブル達みたいに綺麗じゃないし、性格も捻くれを超えて屈折してるしな。
その割りには、仕切りにベルゼブルや神界の女神達から夜会やら舞踏会に来いって五月蝿い程に招集が来るんだよな?
何でだ?さっぱり理解不能だ。
「おっさん、何を考えてんだ?」
ヘルが血のように赤い瞳でちらりと見つめてきた。
こいつの赤い眼を見ていると右眼が疼く。
あの時から紅い・・・・・・・・・・血、血よりも濃く地獄の業火よりも、深く澄んだ深紅の瞳。
俺の犯した罪の証であり復讐の誓い。
無意識に右手が眼帯に伸びた。
「・・・・・飛天」名前を呼ばれ意識が戻った。
「大丈夫か?眼帯を外しそうになってたが?」
ヘルが俺の右手を利き腕で握っていた。
「・・・・・あぁ。何でもない」
外れかけていた眼帯を結び直し床に落ちた吸い掛けの煙草を足で揉み消した。
「後は俺一人で大丈夫だから、屋敷に帰れよ」
「・・・・・有り難くそうさせて貰う」ヘルの言葉に従って早々に客室を後にした。
客室を出て窓から出ようと身を乗り出した時に
「・・・・何処に行くんだ?飛天」
運悪くベルゼブルと共のビレトのおっさんに見つかってしまった。
はぁ、運が悪すぎる。
「仮にも皇子が窓から出るとは何事だ」
ビレトのおっさんが眉間に皺を寄せて睨んできた。
“地獄の鬼教官”の異名は伊達じゃないな。
昔が懐かしいぜ。
「貴様、人の話を聞いているのか?」
「ちゃんと聞いてるぜ。別に良いだろ?何処から出ても」肩をすませて答える。
「そういう事ではない。お前がその様ではジャンヌ姫と腹の御子に悪影響だ」
は?腹の御子?
「話の流れが見えないんだけど?」
「なに?ペイモン殿の手紙では身篭ったと書いてあったぞ」
あの性悪女の書いた手紙なんて1%しか本当じゃないのを気付かないのか?
それにまだ一月も経ってないのに身篭る訳ないだろ?
「それは嘘だ。あいつは身篭ってない」
まぁ、身篭ったらジャンヌに似た可愛い娘が欲しいな?
「ちぇー、なんだ。せっかく初孫の名前と服も用意したのに」
ベルゼブルが舌打ちしながら残念がった。
お前は子供か?
「まだ気が早い」今度こそ窓から出ようとしたが止められた。
何なんだ?!一体!?
「久し振りに城に来たんだ少し位ゆっくりしろ」ニヤリと笑うベルゼブル。
「生憎とゆっくりするなら自分の屋敷で十分だ」
まだ何か言っていた気もするが知った事か。
「じゃあな」窓から飛び降り漆黒の翼を出して屋敷に向かって飛んで行く。
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