第十五話:謁見で大混乱
更新遅れてすいません!!今回は長めなのでどうぞ!!
「あ、の、ペイモン様」
「なぁに?ジャンヌちゃん♪」私の気まずい表情を見てもペイモン様は、上機嫌だった。
「・・・・・もっと地味なドレスは・・・・・・・・・・・・・」
「ダメ、却下、無し、反論禁止」
反論も禁止ですか。
「せっかくのナイスバディーを無駄にする気?それとも私の仕立てたドレスと化粧が嫌なの?」
何時になく力の籠もった眼差しで見られる。
うぅぅ、恐いよぅ。
「ほら、自分の晴れ姿を見て自信を付けなさい!」
前に立てた姿見に立たせられる。
「・・・・・・ッ!?」
あまりの恥ずかしい自分の姿に泣きたくなった。
こんなに身体のラインを出したドレス嫌い!?
「お願いですぅ、ペイモン様、もっと地味なドレスにして下さい!?」
必死に懇願したのに返ってきた言葉は無情にも
「だ・め・よ♪」
うぅぅ、恥ずかしくて泣きたいよ。
「そんなに嘆かないの。それ位のドレスなんて魔界じゃ普通よ?」
「それは、お前の常識でだろ?ジャンヌを一緒にするな」
声の方向を見ると、フロック式の軍服を着た綺麗な黒髪の紳士が立っていた。
「は、初めまして。じ、ジャンヌ・シエル・ベルサイドです」学んだ通りの礼儀作法を取る。
大丈夫だよね?失敗してないよね?
「あ?お前、俺が分からないのか?」
「・・・・・・飛天?」
「当たり前だ。俺以外に誰が入るんだよ」
さも当然のように言う飛天様。
「だ、だって、全然、姿から格好まで違うから」
普段の飛天様は、全身を黒一色の服に髭も髪も手入れもしないで伸ばし放題の不潔感の塊。
それに対し今の飛天様は清潔感が溢れていて、まったく違う。
「いつも身嗜みをきちんとすれば良いのに」
「面倒臭い。・・・・・・・・・・・まぁ、お前が手入れをしてくれるなら良いけど」
「え?なんか言った?」小さい声で聞き取れなかったので聞き返す。
「いや、何でもねぇ」
「???」頭に疑問符が浮かぶ。
「それより、どう?ジャンヌちゃんのドレス姿!」誇らしげな表情で飛天様を見るペイモン様。
「とてもじゃないが、天界から来た姫とは思えない格好だ」
「良いじゃないっ、ここは魔界なんだから!?それとも、ジャンヌちゃんの色姿に焦ってるの?」
何を焦るの?
「こんなに色気のある天界の姫ですもの、男達が放っておく訳ないわ」
私の銀髪に指を絡めながら答えるペイモン様。
「・・・・・支度が出来たなら行くぞ」
くるりと背を向けて部屋を出る飛天様。
「素直じゃないのも相変わらずね」小さく微笑むペイモン様。
「?????」私だけ?分からないのって?
「さぁ、私達も行きましょう」
ペイモン様に促されながら私も部屋を出た。
結局、ドレスも化粧もそのままで・・・・・・・・
はぁ、もうどうにでもなれって感じだ。
飛天様と私達は、ヨルムさんの運転する馬車に乗り込みベルゼブル様の居城に向かった。
ゼオンさんと師団の方々、フェンさん、ダハーカさんは留守番役。
馬車に揺られながら城に向かっていると
き、緊張してきた。
ちゃんと挨拶できるかな?
しっかり歩けるかな?
「・・・大丈夫?ジャンヌちゃん」
緊張する私を気遣うペイモン様。
「は、はいっ」
「大丈夫よ。私と飛天が一緒だから」優しく頭を撫でるペイモン様。
「緊張し過ぎると皺が出来るぞ」煙草を蒸かしながら私を見る飛天様。
「緊張なんかしてない」小馬鹿にされた気分だ。
「なら、眉間に皺を寄せるな。何時もみたいに笑ってろ」怒って言い返すと飛天様は気さくに笑った。
「その方がお前らしくて可愛いぜ」
「ッ!?・・・・・・・・・・・か、か、可愛い」
飛天様の言葉に唖然としてしまう。uxt
「あらあら、真っ赤にしちゃって。本当に可愛い姫君ね」
真っ赤になって俯く私を二人は笑った。
うぅぅぅ、恥ずかしいよ。
そんな二人にいじられている内に城に着いた。
馬車から降りた飛天様は私に手を出して降ろしてくれた。
しかし、ペイモン様には手を出さなかった。
「ちょっと!私もジャンヌちゃんみたくやってくれても良いじゃない!?」
怒り心頭のペイモン様を軽くあしらい城の中に入る私達。
ヨルムさんとは城の正門で別れた。
城の中を歩いていると飛天様に声をかけるメイドや兵士達に出会った。
皆、気軽に挨拶をして飛天様もそれに答えた。
隣でビクビクしている私にも城の方々は、挨拶をしてくれた。
そして私達は、ベルゼブル様達がいる部屋に辿り着いた。
「・・・・・ここが謁見の間だ」
黒く鋼で出来た扉の向こうにベルゼブル様を筆頭の七つの大罪と王族達が・・・・・・・・・・・
「そんなに固くならない方が後の為だぞ」
そんな事を言っても緊張はするんです!?
「ペイモン。ただ今、飛天夜叉王丸男爵とジャンヌ・シエル・ベルサイド姫をお連れしました」
何時もとは違うペイモン様の雰囲気に圧倒される私。
「・・・普段からこれだけ真面目なら良いのに」
なに、自分の事を棚に上げてるんですか!?
私が飛天様を睨んでいると一人でに扉が開き正面にベルゼブル様が座っていた。
その左右には、七つの大罪と思われる方々と王族達が控えていた。
外見から年齢もまちまちだが、全員が容姿端麗で威厳の風格に満ちていた。
「俺が着いてる。心配するな」
震える肩を優しく抱いた飛天様に連れられて、部屋の中に入った。
「・・・・・て、天、界から、飛天夜叉王丸男爵に嫁ぎに来た、じ、ジャンヌ・シエル・ベルサイドと、言いますっ」ベルゼブル様達に跪き礼をした。
「・・・・・・・・」ベルゼブル様達は無言だった。
私、なにか駄目だったかな?
「・・・天界の姫」
ベルゼブル様じゃない別な男性の声。
「は、はいっ」頭を下げたまま答える。
「ひ・・・・・・・・男爵とは、バラテで会ったと聞いたが?」
「は、はいっ。気を失った私を介抱し、万魔殿まで運んでくれました」
「では、尋ねる。男爵の初めての印象は?」また別な人の声。
「は、え、と、その・・・・・・・・」
まさか、全身真っ黒でおまけに髭も髪も伸ばし放題で不潔でした!
なんて言える訳ないから困った。
「正直に言って構わない」
「は、はいっ。とても不潔でしたっ」
ひぃー!言っちゃったよ!
「では、次の質問だ。男爵をどう見る」
「皇帝のベルゼブル様や王族のペイモン様にも傍若無人でありますが、他人に気を遣う優しさがあります」
「天界から嫁いで来た私を気遣って、まだ、初夜を迎えてないのが、良い事実です」
もうどうにでもなれだ!!
そんな事を思っていると
「・・・・・くっ、あははははは!?」
な、何ですか?!
びっくりして顔を上げるとベルゼブル様達が腹を抱えて笑い出したのだ。
「あー!最高だ!?マジ最高だよ!!ジャンヌちゃん!!」
「ま、まさか、あんな表情をする飛天を見れるとは・・・・・・・・・だははははは!!」
何人かの王族達も笑っていたけど、見た目で以下にも真面目一徹の王族達は
「陛下達も人が悪過ぎですよ」
「左様、こんなに真剣に話す姫を笑いながら見ているなど」
「し、しかしな、ジャンヌちゃんが話している時の飛天の表情を見たら誰だって笑うって・・・・・・・・・!!」
思い出したように腹を抱えるベルゼブル様。
「叱られないか心配している子供の表情だぞ!?あははははは!!」
笑い続ける一部の七つの大罪と王族達を睨みながら飛天様は
「・・・・ジャンヌ、こんな馬鹿共は放って帰るぞ」怒りの表情で私の腕を掴んで歩き出した。
「ちょ、ひ、飛天っ、速いよ」足が縺れて(もつれて)転びそうになった。
「なら、抱き上げてやる」そう言って有無を言わさず私を抱き上げた。
「きゃあ!飛天!降ろして!!」
飛天様の髪を引っ張ったり、胸を叩いて抵抗した。
「駄目だ。このまま屋敷まで帰るぞ」必死の抵抗を気にもせず、すたすたと扉に向かう飛天様。
「おい飛天。そう怒るなよ。別にジャンヌちゃんを馬鹿にした訳じゃないんだから」二十代前半の男性が声を掛けた。
飛天様より見た目上は、若い。
「・・・・・ルシュファー」嫌そうな顔をして名前を口にした飛天様。
「ッ!!」
る、るるるるるる、ルシュファー様!!
ルシュファー様って元天使団の団長で神の右腕で、現魔界の最高裁判官で更にペイモン様のご主人様じゃない!!
「お前がペイモンを炊きつけるから、こんな目に合ったんだぞ」
相手が誰であろうと構わない飛天様の態度に私は肝を冷やした。
ひぃ!お願いですから、私の寿命をこれ以上減らさないで下さい!!
「しかし、お前みたいな人生破綻者にジャンヌちゃんみたいな純情な娘は辛いと思うぞ」
嗚呼、ベルゼブル様と言い、よく私の気持ちを理解している。
「だから、ベルゼブル達と相談してペイモンを送ったんだよ。ジャンヌちゃんは助かっただろ?」
ルシュファー様は黒い瞳で抱き上げられていた私を見つめた。
うわぁ!格好良い!!
「・・・・・・・・・」
「むぐっ!!」惚けていた私の頭を掴むと自分の胸に押し付ける飛天様。
煙草臭くて気持ち悪くなっちゃうよー。
そんな私達を見ながら
「まさに独占欲の塊だな」愉快そうに笑うルシュファー様。
「ルシュファー様、悪戯れが過ぎますぞ」王族と思われる声がルシュファー様を叱った。
「そう言われてもな神界の女神の誘惑にも眼を向けなかった飛天が、ジャンヌちゃんに骨抜きにされてるんだぜ」
「こんな面白い事なんてないぜ」更に声を上げて笑うルシュファー様。
骨抜き?飛天様が?どこが?全然、見えないんですけど?
「だからと言って、飛天殿をからかうのは頂けませんな」
「バール殿の言う通りです。以下にルシュファー様と言えど、やり過ぎは禁物です。飛天を怒らせると後が怖いですよ」
もう一人の王族も加わってルシュファー様を叱ったようだ。
そして飛天様の怒りを買うと、とても超超超怖い!!!って事も分かっているようで。
「さすがは、バール殿とビレトだ。よく分かっている」咽喉の奥で笑う飛天様
王族のバール様とビレト様。
バール様は、地獄帝国の全軍の総指揮官であり大公爵、アスタロト様の夫で軍略と法律に優れている。
ビレト様は、ベルゼブル様が創設した蝿騎士団の指揮官を務めている。
バール様は飛天様と何度か一緒に酒を飲み戦地を共にし、ビレト様は飛天様の御目付け兼教育係だそうだ。
っとペイモン様から教えられた。
飛天様もバール様には一目、置いているようで敬語で話している。
「後で、覚えておけよ?特大の仕返しをお見舞いしてやる」
これを聞いて笑っていた一部の七つの大罪と一部の王族達の動きが止まった。
「お、おもしれぇ。やれるもんならやってみろ」強気な声を出すルシュファー様。
仕返しってどんな事だろう?怖いけど聞きたい。
「では、これで失礼」私を胸に押し付けたまま飛天様は部屋を出た。
って、夜会にまだ出てないじゃないですか!?
その事に気付いたのは帰りの馬車の中での事。
後日、一部の七つの大罪と一部の王族達の元に特大の爆弾と激辛菓子が届いて、大惨事になったそうだ。
どうでした?なんだか飛天様が魔界の王様みたいな気がして仕方ありません。
次回も飛天様が暴れます!!