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逸話:夜の遊び

読者の皆さん初めまして?飛天の愛人、ペイモンでーす♪今回から出るから宜しくね。

ジャンヌの部屋を出た夜叉王丸は玄関へ足を進めた。


「おや、主人様。どちらへ行かれるんです?」


途中でフェンリルを部屋に置いてきた、ヨルムンガルドと会った。


「夜遊びに行って来る」ぶっきら棒な口調で答えた。


不機嫌な態度を隠さない主人にヨルムンガルドは、戸惑った。


「あの、何か気に入らない事をしましたか?」


「あのな、俺とジャンヌが夫婦だからって、同室はないだろ?」


「主人様を呼び捨てにしていたので、つい契りは交わしていたものだと思いまして・・・・・・・・・」言葉を濁すヨルムンガルド。


「生憎だな。まだ手も足も出してねぇよ」


「あの美しい奥方に欲情なされないのですか?」さらりと言ってのける。


「まだ、あいつの心の準備が出来てない」苦々しく返答する主人に執事は微笑んだ。


「相も変わらず女性に優しい方だ」


呆れた口調だったが、そんな主人をヨルムンガルドは好きだった。


「いつ頃、お戻りで?」


「そう、だな」懐中時計を取り出す。


時間は夜の十時になった位だった。


「まぁ、朝方には帰る」


「畏まりました。では行ってらっしゃいませ」


一礼するヨルムンガルドを一瞥して屋敷を出る夜叉王丸。


「あそこまで主人様に気を遣わせるとは、奥様も罪な方だ」



うっすらと笑みを盛らしたヨルムンガルドも眠るために自室に向かった。







屋敷を出た夜叉王丸は、万魔殿にあるバーの一店に入った。


「おや、夜叉王丸様じゃないですか」中に入るとバーテンダーが出迎えた。


「少し酒を飲みに来た」


どこか苦しそうな夜叉王丸を見て、バーテンダーは直ぐに察した。


「恋する男は辛いものですな」店の奥へと案内するバーテンダー。


「・・・“デザイアー”を頼む」席に座り酒を頼む。


「畏まりました」一礼して姿を消すバーテンダー。


一人になった夜叉王丸は高級葉巻を取り出して口に加えた。


普段は人間界の『セブンスター』を愛用しているが機嫌が悪い時か良い時に限り葉巻を愛用する。


実に風のように気紛れな性格である。


「あら、新婚の妻を置いて一人淋しく酒飲み?」


葉巻を吸っていると、胸と背中を大胆に開けた漆黒のドレスを着た妖艶な美女が現われた。


「何だ。ペイモンか」大した反応も見せずに夜叉王丸は紫煙を吐いた。


ペイモン・・・・・・魔界の四方を治める王であり最高裁判官を務めるルシュファーの部下でもあり、夜叉王丸の愛人だったりする。


「連れないわね。結婚して変わった聞いてたけど本当のようね」


赤い口紅を塗った唇で喋る姿は、同性も赤面する色気があった。


しかし、色気に惑う事なく夜叉王丸は尋ねた。


「俺をからかう為に来た訳じゃないんだろ?」


「あら?もう分かっちゃった?」ペイモンは驚いた素振りを見せる。


「さっさと本題を言え」苛々と夜叉王丸は葉巻を吸った。


「そんな恐い顔しないで。今から言うわ」


民衆が見たら縮み上がる視線も気にせずペイモンは席に座った。


「二日後に城で開かれる夜会に花嫁を連れて来いって陛下から言伝よ」


「断る」間を置かず返答する夜叉王丸に苦笑するペイモン。


「そうもいかないわ。みんな、結婚嫌いで有名な“風の男爵”が執着する花嫁に興味津々なのよ」


夜叉王丸の葉巻を奪い吸い始めるペイモン。


「この私の美貌でも貴方と結婚できなかったのに天界の花嫁は結婚できたんだから私以上に綺麗なんでしょうね?」


「・・・・・お前よりも俄然と気高く美しい」愛人の口から出た言葉に驚くペイモン。


「“フレイア”や“アフローディア”よりも美しく繊細な淑女だ」


夜叉王丸の口からは、とんでもない人物の名が出て来た。


・・・・・フレイア、アフローディア。


二人とも神界に住んでいる女神達だ。


そんな人物の名前を呼び捨てするとは、一体なにがあったのだろう?


「その様子だと、噂は本当のようね?」


軽く嫉妬したように眼を細めるペイモン。


「・・・・・お待たせしました」


空気が乱れそうになった頃合いを見計らってバーテンダーが酒を持ってきた。


「“デザイアー”・・・・・・・・欲望」酒の意味を口に出しペイモンは微笑んだ。


「欲望に忠実な悪魔に似合わず禁欲だこと」


葉巻を加えながら、ペイモンも酒を頼んだ。


「まだ、天界から嫁いで間もないのに手なんか出せるか」グラスを傾け語る夜叉王丸。


「・・・・・人間の頃から変わらないわね」


そんな所が、好きだと付け加え、細く褐色の足を組み直すペイモン。


生々しくも美しい仕草を見せる足を夜叉王丸は、黙って見ていた。


「だけど、禁欲は身体に毒よ?」細く綺麗に伸びた手を夜叉王丸の頬に触れるペイモン。


「貴方が誰と結婚しようと私を必要としてくれるなら構わないわ」


「・・・・・お待たせしました。スロウ・メイデンです」バーテンダーが酒を置いて立ち去る。


「“悲しみの乙女”?ずいぶんと餓鬼臭い酒を頼んだな?」


「あら、これでも悲しいんでるのよ?」拗ねたように言いながらグラスを持つ。


「飛天夜叉王丸男爵の結婚に乾杯」グラス同士で乾杯をして一口、呑む。


夜が更けるまで二人は酒を飲み明かした。

どうだったかしら?私の健気な姿は?       恋する乙女は何よりも強いものなのよ。      男子諸君は覚えておきなさい。          じゃあ、また次回ね!

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