第十一話:押し掛け執事と犬一匹
どうも!ジャンヌです。十一話を更新ですっ。 この前は、大変でしたが今回も大変なんです(涙) どうか、そんな憐れな私に評価、感想をお願いします!?
屋敷に帰ると門が開いてあった。
「ねぇ、飛天。門が開いてるよ」行く時は閉めたはずなのに・・・・・・・・
「戸締りするの忘れてたから盗人でも入ったか?」
なに、さらりと大変な事を言ってるんですか!?
「まぁ、別に入っても盗まれて困るような物なんてないだろ?」落ち着いた口調で諭された。
「・・・・・確かに」言われてみればそうだった。
屋敷こそ立派だが中身は何も無いのが現状。
「借りに何か盗まれても直ぐに取り返す」
飛天様の言葉には自信が溢れていた。
貴族の屋敷は高価な物がたくさんあるが、捕まれば極刑は免れない。
・・・・・捕まるか、捕まらないか。
まさに一発勝負の賭けなのだ。
しかし、有力な貴族から盗んだ物ほど足が着くため直ぐに捕まる例が多い。
飛天様の自信も、ここから来るのだろう。
「まぁ、中に入ろうぜ。後はそれからだ」
門を潜り中に入って行く飛天様の後を追って私も中に入る。
「・・・・・俺の後ろに隠れてろ」
玄関に着くと私を背中に隠す飛天様。
「まだ、誰か入るの?」怯えた口調で尋ねる。
「一人と一匹の気配がするな。さしずめ魔獣か?」
ま、魔獣!?
「・・・・・だんだん近づいて来る」腰の刀に手を掛ける飛天様。
「お帰りなさいませ。旦那さま、奥さま」
予想に反し現われたのは執事服に身を包み、眼鏡を掛けた青年と黒い犬型の魔獣だった。
「何だ。お前らか」ため息を吐きながら飛天様は、刀の柄から手を離した。
「はい。主人様も結婚して屋敷に住むと聞き付け、馳せ参じました!!」瞳を爛々と輝かせる青年。
「主人!久し振りっ」魔獣も嬉しそうに飛天様の足元に擦り寄った。
この人と犬もゼオンさん達みたいなものかな?
「これは奥様。名乗り遅れました」青年は、私に視線を向け一礼した。
「この度、当屋敷の執事をする事になりましたヨルムンガルドと言います」
ヨルムン・・・・・・・・・・・・ガルボ?ガルダ?ガガル?
長い名前で最後まで聞き取れなかった。
「気軽にヨルムと、お呼び下さい。奥様」苦笑する青年、ヨルムさん。
「こらこら!兄より先に自己紹介するな!!」
飛天様の足元に擦り寄っていた魔獣が吠えた。
えっ?兄?誰の?
「俺はフェンリル。こいつの兄です。気軽にフェンと呼んで下さい」犬の言葉に私は凍り付いた。
「えっ?ヨルムさんのお兄さん?っというかペットじゃないの?」
「違う!正真正銘、こいつの兄貴です!!」犬、フェンリルは激怒した。
「ご、ごめんなさいっ。見た目が“犬”だからペットだと思っちゃった」
「犬でもペットでもなぁぁぁぁい!!列記とした誇り高い狼だ!?」火に油を注いじゃったよ・・・・・・・・・・・・
どうしよう?地雷、踏んじゃったよ・・・・・・・・
「まぁ、そう怒るなよ。フェン」困り果てた私に、飛天様が助け船を出してくれた。
「お前が怒るのも分かるが俺に免じて、な?」優しく黒の毛皮を撫でる飛天様。
「うぅぅぅぅ、主人様が言うなら・・・・・・・」フェンさんは、渋々ながら引き下がった。
「今度からは気を付けて下さいよ。奥様」
「・・・・・・・はい」情けない声を出す私。
「さぁ、自己紹介も終わった事ですし、食事に致しましょう」
「そうだな。用意は出来てんのか?」
「はい。腕によりをを掛けて作りました」
「そいつは楽しみだ。フェン、納屋にいるダハーカを呼んで来い」
「えー!!あいつ意地汚い上に下品ですよ!?」不平不満を洩らすフェンさん。
ダハーカってワイバーンさんの事かな?
「あいつだけ、のけ者は可哀相だろ?」
「いつもダハーカに甘いんだから・・・・・・・」
物々と文句を言いながらも納屋に向かうフェンさん。
「さぁ、奥様と主人様はこちらへ」
ヨルムさんに促され、私と飛天様は、リビングに向かった。
リビングに着くと綺麗に並べられた料理の山に目を奪われた。
「これ、ヨルムさん一人で作ったんですか?」
「はい。主人様、直々に教え込まれた賜物です」自慢気に話すヨルムさん。
「そんなに飛天の料理の腕で良いの?」
「はい。主人様は、家事全般から戦、政治と幅広く活躍していました」自分のように自慢するヨルムさん。
「まぁ、悪魔に成り立ての頃は、周りを認めさせる為に必死だったからな」
「認めさせる?」どういう意味だろう?
「主人様は、人間出身の為に貴族から毛嫌いされてたんです」ヨルムさんが説明してくれた。
「貴族達を認めさせる為に必死に手柄を立てたのですよ」
「それで今の主人様が存在しているのです」
「まぁ、なんだ。俺の為にベルゼブルも色々としてくれたから・・・・・・・・・・・・借りを返したかったから、な」恥ずかしそうに頬を掻く飛天様。
「素直に親孝行をしたかったって言えないの?」
「べ、別にっ、あんなエロ爺に孝行なんて・・・・・・・・・・・・」明らかに狼狽する飛天様。
その様子は、照れ隠しをする幼い子供のようだ。
いつも傲慢だけど時々、見せる子供っぽい仕草に笑ってしまう。
「飛天にもそんな所があるなんて意外」
「う、うるせぇっ。んな事より飯にするぞ!」赤面しながら席に着く飛天様。
そんな飛天様を私とヨルムさんは苦笑しながら席に着いた。
「主人様!ダハーカを連れて来ましたよ!」
フェンリルが狭そうに歩くワイバーンさん、ダハーカさんを連れて来た。
「くぅぅぅぅ・・・・・・・・・・」ダハーカさんは私に頬擦りをしてきた。
「狭くてごめんね。ダハーカさん」
優しく頭を撫でるとダハーカさんは気持ち良さそうに鳴いた。
「さぁ、食うぞ」飛天様とヨルムさんは、箸を持ち私も遅れて箸を持った。
フェンリルさんとダハーカさんには大皿が用意されていた。
「・・・・・頂きます」飛天様が手を合わせ私達もそれに習った。
「また腕を上げたな。ヨルム」漬物を食べながら飛天様はヨルムさんを褒めた。
「感謝の極みです」小さく一礼するヨルムさん。
「奥様のお口には、合いましたか?」器用に箸を動かしながらヨルムさんが尋ねてきた。
「とても美味しいです」味噌汁を飲み終えてから答える。
「主人様と同じ味覚で良かったです」安堵のため息を吐くヨルムさん。
「・・・・・ふぉるむ、ほはぁわぁりぃ(ヨルム、お代わり)」
口に料理を入れたままフェンさんはお代わりをした。
「ガゥガァ」ダハーカさんも負けないとばかりに、お代わりをしてきた。
「お前ら、もう少し行儀良く食え」ため息を吐きながら飛天様は叱ったが、表情は楽しそうだった。
そんな夕食を終え、私は飛天様とヨルムさんに勧められて、お風呂を先に入り自室に戻る道を辿っていた。
「あれ?飛天。どうしたの?」部屋に戻るとドアの前で、飛天様が立往生していた。
「あっ、ジャンヌ。ヨルムが俺の家具を、お前の部屋に置いたって言うから待ってたんだよ」
私の部屋に?そりゃ、私の部屋は広間一個分くらいあるから置けるとは思うけど何で私の部屋?
「まぁ、とにかく開けてくれ」言われるままにドアを開ける。
「・・・・・・・え?」
「なっ・・・・・・・」部屋に入った私と飛天様は唖然とした。
今日の朝まで眠っていた私のベッドは、無くなっていて、代わりに天蓋着きのダブルベッドがあった。
こ、これは・・・・・・・・・・・・一体・・・・?
「奥様、主人様。そちらのベッドは私共、兄弟からの祝い品でございます」
寝息をたてるフェンさんを抱えたヨルムさんが、にっこりと笑って言った。
「・・・・・では、失礼します」唖然とする私と飛天様を置いて、ヨルムさんは去って行った。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
互いに何も話さず無言が時間を埋めた。
「・・・・・少し出かけて来るから、先に寝てな」
突然、早口で言うと飛天様は、逃げるように去って行き後に残った私は、しばらく経ってから部屋に入り床に着いた。
そう言えば、飛天様は何処に出掛けたんだろう?
そんな事を寝る前に思いながら私は安息の夢へと旅立った。
・・・・・お初にお目にかかります。 私、飛天夜叉王丸男爵の執事でヨルムンガルドと言います。 名前の由来は、とぐろを巻いた大蛇などです。 これからも主人様と奥様を優しく見守って下さい。