第九話:結婚初夜と女心
ジャンヌでーす! 今回は、飛天様と喧嘩したり負かしたりと色々あるので読んで下さい!!
「・・・・・紙に書かれていた材料です」顔をボコボコに腫らした男性陣は頭を下げた。
「んっ、ご苦労」安楽椅子で寛ぎながら煙草を吸う飛天様。
男性陣の顔の腫れは、指定した時間に材料を持って来れなかったからだ。
あまりの理不尽な仕打ちに口を出したら
「理不尽だと?・・・・知らないなら教えてやる。世の中、理不尽と不平等で成り立ってるんだよ」
即効で倍のお返しを食らいました。
しかも、もの凄い力が籠もってたし・・・・・・・
「今日は、虫の居所が悪かったんですよ」落ち込む私を励ますゼオンさん。
「じゃあ、俺達は失礼します」背を向けて帰ろうとしたが飛天様が呼び止め
「飯を食ってけ。それに傷の手当てもしてやる」安楽椅子に座りながら言った。
「へ、へいっ。喜んでご馳走になります!!」男性陣は喜んで頷いた。
「ゼオン、飯を作るから手伝え」椅子から立ち上がり屋敷の中に入る飛天様とゼオンさん。
私は何をすれば良いんでしょうか?
「あ、あの・・・・」途方に暮れてると男性陣に声を掛けられた。
「大丈夫ですか?」腫れた顔に手を出そうとした。
「えぇ。見た目ほど痛くないですから」安心させるように笑った。
「今度は止めてみせますから」
「いえ。この程度、何ともありません」にこやかに笑った。
「私達も手伝って来るので奥方様は、待っていて下さい」男性陣が頭を下げ屋敷の中に入って行った。
そしてまた私は途方に暮れた。
どうしよう・・・・・?
天界にいた頃は、メイド仲間と雑談しながら茶会をしてたけど、ここは魔界。
つい先日、嫁いだ私には親しい友人は誰もいない。
考えた結果、
・・・・・・飛天様の手伝いに行こう。
はぁー、喧嘩した後で会いに行くなんて・・・・・・・・・・・・正直、気が重いよぅ。
重い足を引き摺りながら屋敷の中に入る。
うぅぅぅぅ、会いたくないよー。
気が重いまま調理場に着いちゃったよ・・・・・・。
「・・・・飛天」
調理場のまな板で魚を慣れた手つきで裁く飛天に声をかけた。
「・・・・・あ?」板前包丁を持ったままギロリと睨まれた。
ひぃ!ご、ごめんなさい!
「ちょっと旦那」ゼオンさんが横から肩を叩いた。
「あっ、わりぃ」今、眠りから覚めたような声で私に謝った。
「はぁー、料理に集中するのは良いんですけどね・・・・・・・・」困ったように笑う。
「仕方ねぇだろ?魚を裁く時は、集中しねぇとダメなんだから」
「そりゃあ、分かりますが初めて見る奴には、刺激があり過ぎますよ」皆が頷いた。
「・・・・・ちっ」舌打ちしながら煙草を取り出して口にくわえた。
「・・・で、お前は何しに来たんだ?」あ!私に話しを逸らしましたね!!
「・・・・手伝いに来たんです」ぶすっと答える。
「じゃあ、魚を裁くの手伝ってくれ」間髪を容れずに言った。
「・・・はい」何だか掌で踊らされてる感じがして仕方がない。
ジョリジョリジョリ、ダンッ!
グロテスクな音が私の横で聞こえる。
黒いエプロンを身に付け包丁を片手に飛天様が魚を裁いる。
鱗を落とし頭と身体を切り離して内蔵を取り出す。
内蔵を取り出された魚を塩水で洗いオーブンで焼く。
単純な作業だ。
何故か刃物類は、持たされなかった。
後のゼオンさん曰く
『ジャンヌさんの美しい身体に傷を付けたくない旦那の心遣いですよ』だそうです。
「・・・・・・・」塩水で洗いながら、ちらりと飛天様を見る。
料理をする飛天様の表情は真剣そのものだ。
「・・・さっきは、悪かった」飛天様が包丁を動かしながら謝った。
「・・・・・・・」私は黙って耳を傾けた。
「つい、理不尽って言葉に過剰反応してしまった」
骨と内蔵を取り除いた魚を受け取る。
「・・・・別に怒ってないから」
「なら、良いんだが・・・・・・・・・・・」ほっとしたように溜め息を吐く飛天様。
今の飛天様は、親に叱られて怯える子供のようだ。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
会話も途切れ再び無言になった。
「旦那、俺達は出来たのでお先に失礼します」
野菜サラダとじゃが芋スープを持ったゼオンさん達が調理場を出て行き私と飛天様だけが残った。
うぅぅぅぅ、二人だけだと凄い違和感を感じちゃうよぅ(涙)
「・・・・・痛ッ」受け取った魚で誤って指を切っちゃった。
もう最悪だよぅ
「指を切ったのか?」動かしていた手を止め、傷口を見た。
「す、すいませんっ」恥ずかしくて情けなくて泣きたいよ!!
「水で傷口を洗え」私の手を掴み水道に行く飛天様。
傷口を水で洗うとバンソウコを張られた。
「あ、ありがとう」素直に礼の言葉を出す。
「・・・・女の身体に傷を着ける訳にはいかん」どこか怒ったような口振りだ。
「ご、ごめんなさい」
「礼を言ったり謝ったりと忙しいな」今度は愉快そうに笑った。
「後は俺がやるから休んでな」私を近くの椅子に座らせ調理に戻る。
飛天様の背中は武骨で逞しい背中だ。
私の仕えていた主人様とはまったく違う。
「よし、飾り付け完成」飛天様の背中を見ている内に料理が完成したようだ。
「さぁ、行くぞ」料理を持った飛天様が私を連れ調理場を後にした。
「おっ、旦那とジャンヌさんが来たぞ」洋間に行くとゼオンさん達がテーブルに座って待っていた。
「・・・待たせたな」飛天様は、盆に載せた料理を片手で投げた
えっ!?ちょっ、ちょっと!!飛天様?!
「・・・・・ほい」片手で軽やかに受け取る。
「ほれ、次だ」次々に料理を投げる。
「ほい、ほい、ほい」投げられた料理を受け取りテーブルに置くゼオンさん。
・・・・・す、すごい。
飛天様とゼオンさんの息が合ってないと絶対に出来ない芸当だよ。
「これで最後だ」最後の盆を投げた。
最後の盆も零さずテーブルに置くと二人に拍手を送った。
「相変わらず絶妙なコンビネーションですね」周りが称賛する。
初めて見るが、絶妙なコンビネーションだと分かる。
「さぁ、食うぞ」私を隣に座らせ見た事のない二本の長細い棒を持った。
周りを見れば皆、同じような物を持っていた。
なんだろう?
首を傾げてみていると、二本の長細い棒で器用にサラダや魚を取った。
すごっ!!(驚)
他の人達も同じように料理を取っていた。
唖然としていると飛天様に声を掛けられた。
「どうした?」
「その二本の棒は?」
「これは箸って俺の国ではこれで料理を食べてたんだよ」
「親指と人差し、中指を使って食うんだよ」
見よう見真似で持つ私に大きな手が覆い被さった。
周囲からは、冷やかしの声が聞こえた。
「そのまま箸を上下に動かして・・・・・・・」
覆い被さった手を気にしながら私は、言われた通りに箸を動かした。
「初めてにしては、上出来だな」優しく一撫でして席に戻る飛天様。
その後は、酒を飲んで宴会のような騒ぎだった。
私も、お酒を飲んだが微酔い程度で抑えた。
飛天様は、結構な量を飲んだのに変化がなかった。
ゼオンさんも似たような感じだったが、他は全滅状態でした。
「・・・じゃあ、旦那、ジャンヌさん、また遊びに来ますね」
酔った部下の人や材料を運んで来てくれた人達を引き連れ屋敷を後にした。
「さぁ、後片付けでもするかな」ゼオンさん達を見送った後は、料理の後片付けでした。
「楽しかったか?」皿を洗いながら飛天様が尋ねてきた。
「うん。とても楽しかったよ」渡された皿を拭きながら答える。
「後は、俺がやるから風呂にでも入ってな」
「じゃあ、そうするね」
お言葉に甘えて浴室に向かおうとして、気が付いた。
「まだ、浴室も寝室も洗面所も案内されてないんだけど・・・・・・・・」
「おぉ、そうだったそうだった。じゃあ、今から案内してやるよ」
皿洗いを中断して屋敷の中の案内を始めてくれた。
しかし、案内されている内に気が付いた。
寝室は一緒なのか?
更に一応、私と飛天様は夫婦だから・・・・・・・・・・・・
え、えええええ、Hをしないと(確定)!!
「ここが寝室だ」勝手に妄想している内に寝室に着いてしまった。
中に入ると可愛らしい女の子の部屋だった。
ピンク色のカーテン、全体を映せる鏡、気を落ち着かせられる安楽椅子。
ベッドも私の身長に合った大きさのシングルだ。
「ここがお前の寝室だ。家具類はゼオン達の贈り物だとよ」
ありがとう。ゼオンさん。
しかし、疑問が一つある。
「一緒じゃないの?」
そう、夫婦なんだから寝室は一緒ではないの?
「一緒?ああ、寝室か」疑問符を浮かべたが、直ぐに理解したようだ。
「作ればあるが、別に入らないだろ?」
「まだ夫婦になったばかりだし、女心を組んでやらんとな」
私の考えを読んだ如く答えられた。
「ちなみに俺の寝室は無いぞ」
「えっ?じゃあ、どこで寝るの?」
「別に毛布と枕があれば何処でも」
本当に生活から破綻してるよ・・・・・・・・
「こんなに広いんだから作れば良いんじゃない?」
「んー、どんな物を置いたら良いか分かんねぇし、面倒臭い」
「そんな事で面倒臭がらないの。明日、ベッドとか家具類を買いに行こう」
ついメイド時代の世話癖が出てしまった。
「・・・・・分かった」
私の意志の堅さが分かったのか嫌々ながら了承してくれた。
「じゃあ私は、お風呂に入って来ますね」満足に頷いて浴室に足を運ぶ。
後ろから大きな溜め息が聞こえたが気にしない。
早く明日にならないかな?
ピクニックに行く気分で楽しみだ。
・・・・・飛天夜叉王丸男爵だ(沈) なんだか初めに比べジャンヌが逞しく感じるのは気のせいか? 嗚呼、買い物なんて面倒臭せぇー。




