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ダンジョンストリーマー!! 〜人気急上昇中のJK配信者はチート級に強い──なぜなら裏方の俺が暗躍しているから〜  作者: 杜 一樹
第5章 シンジュクダンジョン

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23本目 えりにゃんの変身を間近でみれたー!【オタクマイリ】


『みんにゃ、おっまたせ〜。第一スポットはウラカブキを見下ろせるこの高台でAメロを振り落としするよ! マイマイ? 準備はいい?』

『うん!!』


 待機画面明け。

 さっそく野田は流行りの音楽をかけて、ダンスを披露する。

 身体の魅せ方、寸分の狂いもないリズム感、プロダンサー並の技術に、コメント欄は称賛の嵐。

 別にダンス力の優劣などを評する立場などないが、自然と指先がノッていたから、俺も同じように魅せられてしまった。

『すごい!! カッコいい!!』と吾妻も手を叩いて喜んでいる。

 一通り踊り終えた野田も満足そうに、息一つ切らさず吾妻に向き直る。


『どう? 覚えた?』

『うーん、な、なんとなく……?』

『じゃあ、またアタシが前で踊るからマネしてみにゃよ!』


 曲調からして、全体を通して難しい振付なのが分かる。

 本当は圧倒的実力差を見せつけて、自分は優越感に浸り吾妻には恥をかかせる、そう考えていたに違いないと今までの野田からそう思っていた。


 だが、相手はアホで単純で……運動神経が人並みには終わらない吾妻だ。

 真似するだけなら吾妻にもできる。

 加えて、憧れのえりにゃんと踊れることに喜びが全身から溢れて出て、観ているこっちも楽しい気持ちになる。

 さらにはファイヤーフランタン──通称フランちゃんも荷物から飛び出して行き、吾妻を正面から綺麗に照らしてくれた。


【マイマイ可愛い!】【ダンスできるんだ!】【すっごい楽しそうに踊ってるのがいいよね】


 吾妻の初出しダンスに、コメント欄はさらなる盛り上がりを見せて同接は8000人を超えた。

 マイマイチャンネルの登録者も9.3万人まで増えている。



【えりにゃんより上手いんじゃね?】



『……っ。──おっけー! マイマイ踊れるじゃーん、いいね〜』

『ほんと!? いっぱいえりにゃんの動画をみて、わたしも練習してたんだ〜。でも、えりにゃんには敵わないよ〜』

『……そんなことにゃいと思うよ。じゃあ、Aメロは完璧ということで、Bメロを振り落とすスポットまで移動しよー! こっからのパートはダンジョン配信だよ!』

『おぉ!』


 次の目的地はシンジュクダンジョンの中層らしいので、移動を開始する。

 庭白が首からかけたPCテーブルにパソコンを置いて操作しながら、カメラを三脚から取り外そうとする。


「カメラは私が回しますよ」

「わ……ありがとう……ございます」


 吾妻たちの会話よりも小さい、マイクに拾われないほどの小声で話せるくらいに近付き、庭白からカメラを譲り受ける。

 よし、これで、構図の決定権は俺が持つこととなった。俺の顔出しだけは何としてでも避けたいからな。


『踊ったからいっぱいお水取らにゃいとね? 飲んだら行こっか!』

『うん!』


 野田から差し入れされたペットボトルの水をグビグビ飲んで、中層へと向かう。

 ウラカブキは今回通らない。常に人が多く混雑してるし、生配信中だから居場所も容易く割れてしまっている。

 それに、あそこはまだ女子高生が行ってはいけない店があったりするので、危ないから近寄らせることはしたくない。つい最近もホストクラブ放火心中事件があったほどだしな。

 一番探索者(シーカー)が多いダンジョンというが……正直ほとんどは上層で事を終えている。まぁ、ただの遊び場だ。


 人通りの少ない道を選んでも、攻略済みされたダンジョンであるので、魔物《モンスター》とは出会わずに中層には容易に辿り着いた。

 この間はずっと女子会トーク。

 最近の音楽、化粧品、これから来ること間違いなしの食べ物まで、主に野田が話を永遠と広げてくれるので、途切れることなく二人の会話は盛り上がっていたが……正直、俺は興味なかった。

 きっと、ファン層も同じ感覚なはずだが、二人が仲良さそうに話してたらそれでいいのだ。


【かわいい〜】


 この類のコメントが絶えず流れていることが答えだ。


 二つ目のスポットである、シンジュクダンジョン中層名物〝カゲギョエン〟──漆黒の植物が辺りを覆う、影に呑まれた公園だ。

 視覚と距離感がバグるだけであって、危険度はさほどない。

 フランちゃんが光るお陰で吾妻はこけずに済み、Bメロの踊りも無事にマスターした。



『次はさらに潜って下層行くからね。水分補給も忘れにゃいように!』


 下層へと向かう道中ともなると、さすがに魔物《モンスター》が出てきた。


『ここも先輩として、アタシが手本を魅せてあげるにゃん♡ 宝具《レリクス》:吾輩は猫なのだ。──〈猫獣人《ウルタール》〉』

『きたー!!』


 猫耳カチューシャが同化したように耳が生え、黒く長い尻尾と黒猫の手。もちろん肉球付き。

 一見コスプレにしか見えないが、鋭い爪ならぬ刃物が両手に三本ずつ指の間から出ている。


『にゃにゃにゃー!!』


 現れた狼型の魔物《モンスター》を次々と裂いていく。

 動きが素早過ぎて、カメラに一瞬収められないところもあった。撮影者の無能さをコメントで叩かれるほどだ。

 彼女はもっともA級に近いB級探索者(シーカー)とかの非公式サイトで評されているほど、戦闘技術も持ち合わせている。

 おそらく、一ヶ月せずとも昇級するだろう。


『ふん。どうよ〜』

『すごーい!』


 吾妻は大きく手を叩いて、野田のことを称賛した。

 ……そういえば、吾妻もハコネダンジョンを初攻略したことで一気にB級に昇級した。

 B級探索者(シーカー)となった時「東くんと並んじゃったね〜」と言って、しつこかった。


 ……ん?


「どうか……されましたか?」


 誰かに見られている気配を感じたが、気のせいか。

 正直この辺りは探索者《シーカー》も多いし、えりにゃんに気付いたミーハーが時折盗撮してたりするから、分かりづらい。

 隣にいた庭白には「いえ、魔物《モンスター》がいるかもって不安に思っただけで、何でもないです」と言って流した。



 そして、シンジュクダンジョン下層──〝ヤミトチョウ〟へと辿り着く。

 広く深い真っ暗な穴の中に、下層の天井から逆さまに建てられた新宿都庁そっくりな建物。

 第三スポットはここらしいが、正直薄暗いこの空間のどこが映えるのか理解できなかった。トリックアートみたいなところか?


『じゃあ、ここでサビを振り落としたら、テストといってみますか!』

『うん!!』


 ……あとさっきから吾妻の語彙力が乏しすぎるな。

 ダンジョンストリーマーとして頑張るのもいいが、もうちょっと勉強も努力してほしいものだ。来月期末テストだぞ。そっちを頑張れよ。


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