133本目 攻略済みダンジョン探索してたら偶然出会った人とコラボした!
『こ、こんチヒロー……。どうも、チヒロンです……。はぁ、ダメだ。撮り直そ……』
これで314回目の撮影、開始してから18日目である。
危険等級C級。既に攻略された徳島県にあるナルトダンジョンにて、新人NewTuberチヒロンこと、西浦千尋は苦難に強いられていた。
『あう、人いる……う、映ったら迷惑だし、ちょ、ちょっと休憩……』
彼女はとにかく恥ずかしがり屋で、
「はぁ、撮影上手くいかない。どうせ、わたしには無理なんだ……」
そしてネガティブだった。
この調子の撮影ペースなので、投稿を始めてから3ヶ月でまだ4本しか動画を投稿していない。
チャンネル登録者数は4人。両親と父方の祖父母のみ。
「今日はもう頑張ったし、これ以上頑張れないし。充電もないし……帰ろ」
中古の武具と防具を装備。そして、持ち歩けるのはいくらかの食糧と救急キット、撮影に使う自身のスマホのみ。
帰宅しようとしたその時だった。
『──おぉ! ねぇねぇみてみて! グルグル模様の石!! ナルトダンジョンは色んなものがグルグルしてるね〜。……ん? 見てお兄ちゃん!! あそこにも頭がグルグルしてる人がいる!!』
[失礼極まりないな]
──舞梨が見つけたのは蹲る探索者。スマホはカメラを録画待機画面で開けたままだし、おそらく別のダンジョンストリーマーだろう。
『え、あっ、えっ!? ま、マイマイ!? ま、ちょ、ほ、ほんも、本物!?』
舞梨に気付いた女性は大ファンだったのか、緊張で顔が真っ赤になり、言葉がたどたどしくなった。
一旦撮影を止めるか。
「うん! マイマイチャンネルのマイマイです! えっとー、だれー?」
「あっ、チヒロンチャンネルのチ、チヒロンの西浦千尋です。その、マイマイのファンで、わたしもマイマイに憧れてダンジョンストリーマー、に、なって……」
「わー!? なんで泣くの!?」
「その、嬉しすぎて……生イマイ」
舞梨が西浦を慰めるも余計に感動し、嬉し泣きが止まらない。
そんな大ファンの存在に舞梨は『むふぅ』とこっちに満足げな顔して向けてきた。
……はぁ……よし、可愛いな。
しばらくして。
落ち着いた西浦はナルトダンジョンだけで一人ダンジョンストリーマーで活動していること。しかし、全く上手く行かないことを教えてくれた。
俺たちが活動を始めた春頃よりも、ダンジョンストリーマーはさらに増えた。今では海外にもダンジョンができたわけだし、ライバルは世界中にいる。
何の後ろ盾もなく始めた初心者が人気になるのは、かなり難易度が高い。
「今は家族しか観てくれなくて、応援はしてくれてるけど……」
「なるほどなー。気持ちは分かるよ! 最初は大変だもんね。わたしも動画公開しても4人しかコメントしてくれなかったし!」
「し、知っています……! マイマイにもそんな時代があったのは。マイマイ四天王と呼ばれてる方々ですよね、最近コメントでは見ないですけど」
初期から応援してくれた熱狂的ファンのことを指す。
ゴールデンチャイルドの正体は未だに存じ上げないが、もっとも他の2人は捕まり、残る1人は切り抜きチャンネルで得た収入以上にスパチャする変態しかいない。
「でも、すぐに売れたのはマイマイの魅力があってこそで」
「それはそうだね」
間髪入れず舞梨は返事する。
自身の大部分を構成する自信にありふれた彼女だが……あぁ、これには俺も完全に同意だ。
ここまで来れたのは全て吾妻舞梨であるからという理由に片付いてしまう。世界最強最高のダンジョンストリーマーなわけだ。
……別に恋人だからと贔屓目で見ているわけではない。最初からそう判断していたさ。だから惚気てないって。
「……わたしには、何もないから。このまま続けても登録者が二桁にすら行くことなんて……」
「んー。キッカケさえあればみんな見てくれると思うけどなー。……あ、そうだ! コラボしちゃおー!」
「コラボ……え!?」
「ふっふっふっー、わたし2000万人以上ファンがいるんだー。コラボしたらみんなもチヒロンのこと見てくれるよ!」
「そ、そんな! わたしみたいな底辺ストリーマーがマイマイとコラボなんて、烏滸がましいってアンチ湧くし、そんなのマイマイに悪いし……」
「えー、せっかく出会えたんだし、わたしは一緒に冒険したいよ! それに、アンチ? って悪口言う人たちでしょ? そんなのほっといたらいいんだよ!! だってその人たちに直接迷惑かけてないしー、わたしたちが楽しめたらそれでいいんだよー! 応援してくれる人を大切にしよっ! ね?」
舞梨のそのポジティブシンキングは、どんな批判的意見も暗い思想でも、全てを晴らしてしまう。
西浦とコラボすることに、こちら側のメリットはないがデメリットもあるわけではないし──それに初期では、俺たちだって来海や野田とコラボすることで認知度を増やしてきた。
それを後進育成として恩返しできるなら構わないだろう。
何より舞梨がやりたいと言うならば否定することはしないさ。
「うん……。マイマイの誘いを断る方が悪いよね。いい思い出にもなるし……。こっちこそ、よ、よろしくお願いします……!!」
西浦の了承も得たところで軽く打ち合わせをし、早速撮影を始めてみることにした。




