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【証拠はいらない】主人公の友達事情

作者: Wataru
掲載日:2026/01/26

相棒が言った。


「今日は、友達とお茶してきた」


「よかったな」


それだけ返す。


「あなたは?」

「友達と、どこか行ったりしないの?」


少しだけ、間が空く。

それから、俺は言った。


「お前と一緒になる前は、してたさ」


「今は?」


「今は、ない」


相棒が首を傾げる。


「なんで?」


俺は、少し考えてから答えた。


「情報処理が追いつかなくなる」


「情報処理?」


「人の話」

「気分」

「期待」

「言葉にしなかった感情」


指で机を軽く叩く。


「全部、入ってくる」


相棒は、黙って聞いている。


「人が好きだから」

「昔はよく、誰かと一緒にいた」


相棒は意外そうに目を瞬かせる。


「へえ」


「でも」

「やめた」


「どうして?」


俺は、窓の外を見る。


「消耗が、激しかった」


「消耗?」


「話を聞いて」

「気持ちを受け取って」

「それを、全部持ち帰る」


相棒は黙っている。


「人数が増えるほど」

「処理が追いつかなくなる」


「疲れる?」


「そうだな。疲れると、人間はどうする?」


相棒は少し考える。


「適当になる?」


「そう。適当に人と接するようになる。

でも、それは俺が一番やりたくないこと」

「だから、全部ちゃんと受け取ろうとした」


少し間を置いて、続ける。


「しばらくはそれでよかった」

「でも無理は続かない。徐々に友達とは疎遠になった」

「お前と出会って、友達とはほぼ会わなくなった」


相棒が、首を傾げた。


「どういうこと?」


「一人の人を大切にするには」

「時間も」

「手間も」

「ひたすら、注ぐ必要がある」


「他にも人がいれば」

「注げる量は、減る」


「結果」

「一人を、ちゃんと大切にできなくなる」


静かだった。


「だから」


俺は、淡々と言う。


「距離を置いた」

「人を減らしたんじゃない」

「大切にする形を、選び直しただけだ」


相棒は、しばらく何も言わなかった。


「……寂しくない?」


「寂しくない、とは言わない」


「でも」


窓の外を見る。


「これ以上」

「中途半端に、誰かを大切にするほうが」

「嫌だった」


相棒は、ふっと笑った。


「不器用ね」


「そうかもな」


「でも」


少しだけ、声が柔らぐ。


「後悔はしてない」


相棒は、それ以上、聞かなかった。


静けさ。


人が嫌いになったわけじゃない。

一人を大切にするために、

それ以外を、そっと手放しただけだ。


それが分かっているなら――

もう、証拠はいらない。

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