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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
4章 調査開始

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99/202

第24話 空間の使い道


無駄に華やかでもなく、かと言って古びた老舗風でもない。控えめな装飾が施されていて、明るい木の床と相まって落ち着いた雰囲気になっている。

世間話をするだけでもいいから来てほしいという願いを込めた。


ちなみに二階に行くと、組合員の事務所や資料室、小さめの台所、仮眠室なんかがある。

お嬢ちゃんがここでまた寝泊まりすることはないだろうけど……仮眠室には高価な寝台を置いてみた。



大工の金次じいさまに習った技術が、こんな形で役立つとは思わなかった。


これ、完璧じゃない?

別荘にしたい。


まあ、資料室でこっそり調べものをしたのがバレたくなくて建てたものだから、今回は見送るとしよう。



「どうですかね? 気に食わなかったら、一時間あれば建て直しますけど」


「い、いえ! あまりにすばらしくて声が出ませんでした」



長い黒髪がぶんぶんと舞い、風が顔に当たった。勢いがすごくて、まるで神楽でも始まりそうな勢いだ。


樺谷さんは眉尻を下げ、申し訳なさそうに口を開いた。



「ここの……広い空間はなんですか?」



入口から見た左側はだだっ広く、何もない空間になっている。

ほかの部分は仕上がっているのに、ここだけ空いていたから疑問に思ったのだろう。



「ミカヅチ南方支部の中に入ったことはありますか?」



彼女は首を左右に振って否定した。



「南方支部の中には喫茶店があるんですよ。ワタツミ支部で女性は樺谷さん一人ですから、ここに店とかあればほかの女性と話す機会も増えていいかと思いまして」



ミカヅチ南方支部の組合員は、割引額で飲食できる代わりに、喫茶店から賃借料をとらない仕組みだ。周囲との交流の場として、あるいは気分転換だったり、人を集めたりする意味で設けている。



「同じように喫茶店にするのもいいし、地域の人が集まる場所にしてもいい。この空間に関しては任せます。使い方次第で、支部の雰囲気が変わると思いますよ」



橘屋二号店として和風小物屋でも置かせてもらえたらうれしいけど、梅ちゃんから管理できないと言われそうだからたぶん無理。

売上に貢献したかったのに……



「そんな細かい気遣いを……本当にありがとうございます」



彼女の目が潤んだのが見えて、思わず言葉を失った。そんなに感謝されるようなことをしたつもりはなかったから、こっちが動揺してしまった。


これは、情報を盗んだことを黙ってもらうためにやったこと。感謝されていいわけがない。


樺谷さんが、感極まったのか、手を震わせながら空の請求書を取り出した。



「えっと、お好きな額を書いて……」


「いりません」



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