第23話 魔法建築の匠
組合の前に一台の馬車が止まる音がした。帰ってきたのは、学校から戻った樺谷さんともう一人の組合員だった。
彼らが目にしたのは――見慣れたボロ屋敷同然の組合施設ではなく、ピカピカの新築。
樺谷さんともう一人の組合員が、動揺して目を白黒させていた。
「や、山口! これはなに!?」
キリッとした雰囲気で、隙のなさそうな彼女からは、想像もできなかった反応をいただけた。
そりゃあ、数時間組合から離れた隙に建物が綺麗になっていたら、誰だって驚くな。と、他人事のように頷く。
人の頭の上に顎を乗せているソラは、のんびりとあくびをしているらしい。相変わらずのんきなんだから。
――魔法で、新しい組合施設を建てていた音に気づいた近所の人が見に来て、途中からお披露目会みたいになった。
拍手の渦の中、まるで舞台に立たされたように視線が集まり、喉が詰まりそうだった。
囲まれたのが怖すぎて、泣きそうになったのは秘密。
話を聞きつけた新聞社の人間が勝手に写真を撮りに来て、明日の朝刊に載せたいと興奮気味に頼まれてしまい……そんなの断れるわけもなく、しぶしぶ了承した。
しかも、俺が社長です。みたいに腕を組んで立っている写真。
いや、偶然そうなっただけなんだけど。
顔だけでいいから切り抜いてくれないかな。すごく嫌。
「また仕事の依頼が増えるかも」と、得意げに言う白猫。たしかに、建築の依頼とかきたらおもしろそうだな。一時間程度で済むのに、高額の請求もできるし。
山口さんとは、さっき「俺が遊びに来たついでに直したことにしてくれ」と打ち合わせ済みだ。
頼むぞ山口さん。
樺谷さんににっこにこの笑顔を向け、彼は口を開いた。
「お疲れさまです! 利他さんが……あ、遊びに来たついでに、なんか……その、直してくれました!」
……なんともたどたどしい。面接なら即落ちるな。
二人のやり取りを聞きつつ、新しい建物を改めて眺める。
建物は街の雰囲気に合わせ、白い壁と青い屋根に統一した。横に長くて、空から見ると長方形に見える。
風通しと日当たりを考えて窓を増やし、外からも中の様子が見えるようにした。入口にはランタンをぶら下げ、おしゃれな雰囲気に。
外観を見て固まっている樺谷さんに、中も見てほしいと促す。
まるで、高級旅館の襖でも開けるように「お邪魔します」と、言いながらそっとガラス戸を開ける。
なんだその、かわいらしい仕草は。
改装前は、常にカーテンでも引いたような薄暗さがあって気味の悪い場所だった。そうならないよう床の色を明るくし、壁を白く塗ったことで灯りがなくとも温かな場所になった。
椅子はすべて、校長室にあったふかふかの長椅子と同じものを採用。色は山葵色に。
家具もすべて新品に作り変えた。
明るい床と白い壁が、午前の陽射しを反射してふんわりと部屋を照らしている。空気まで新しく、新鮮になったような気がした。
この建物は、気軽に立ち寄れるおしゃれな喫茶店を想像して手がけたものだ。




