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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
4章 調査開始

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第16話 喫茶店のプディング


「どこか近くの店にでも入ろうか」


「うーん。離れた方がいいんじゃない? もっと人が少なそうなとこ行こうよ」



そうだよな。ここは町の中心地。誰が見ているかわからない。


たしか……ここからほど近い場所に、シナツ支部があった覚えがある。

同期も何人かそこで働いているはずだから、格好を変えているとはいえ、さすがに顔を合わせたら見つかってしまう。そんな事態になったらめんどうだ。





図書館から離れた郊外を散策していると、建物の一角に喫茶店らしきものを見つけた。

灰色の外壁に、古びた木製の扉。その脇には『ときつ』と書かれた小さな看板が掛けられている。

珈琲の香ばしい香りに誘われ、周囲にそれらしい影がないことを確認してから、そっと扉に手をかけた。


店内はどこか懐かしい空気感に包まれていて、ほっとする温かみがある。深みのある茶色の壁が、静かな郷愁を呼び起こす。

画風の似た数枚の絵が、穏やかな雰囲気を引き立てていた。窓際には小さな机と椅子が配置されており、一人でゆったりと過ごすことができそうな場所が設けられている。


ほの暗い店内だったが、机の真上には石油ランプが吊るされているため、集めた資料も読めそうだ。



どこか懐かしいこの雰囲気……こういうの、たまらない。


木の匂い、古いランプ、落ち着いた空気。こういう場所でのんびり本を読んだりするのが、一番好きだ。

思わず口元がほころびそうになる。


ほかのお客さんに迷惑がかかりそうなので、きょろきょろと店内を見渡すのはやめておいた。



席について早速お品書きを開く。


珈琲だけにしようか……えっ!?


この店、プディング置いてある。※

高級洋食屋でしか提供していないらしいのに。


せっかくだからそれも頼み、持っていた資料を机に広げる。



「それにしても、先生のことばっかりだな」


「まあ、一番有名な学者だからね」



ペラペラと、中身を飛ばして見出しで簡単な内容を読む。


これだけ話題に出ているのに、顔が写ったものが一つもない。少し文を読むと、霜月先生は写真に撮られるのが苦手だと新聞社の間で有名らしく、今回も撮らせてもらえなかった……みたいな内容が書かれていた。


先生の顔を、魔法獣のルネに見てもらいたかったけど……残念。


大きな見出しのものを探すと『一般高校生が新たな魔法を発見!?』とか『二十歳の若き学者、魔法大臣賞二度目の受賞』とか。


……いや、本当にすごい人だったんだな。今さらだけど。


あの温和な先生が、受賞歴バリバリの学者って。



霜月先生は魔法を使えないから、その存在が異質だと思う人間もいるようで、悪口に近い記事もある。


ただの嫉妬だろう、くだらない。




※「プディング」が「プリン」と呼ばれるようになるのは、明治後期〜大正時代らしいです。



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