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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
4章 調査開始

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第15話 情報の宝庫

シナツ町は首都の次に人が多い町だ。その大きな町の一角に、百年以上の歴史を持つ風車図書館がある。


当然、十年前の新聞なんて普通に置いてあるだろう。


俺が利他ユウナだと特定されにくくするため、今日は着流しをやめた。

枯草色の服に、黒いズボンを履いて、まるで汚れ作業でもするかのような格好になっている。


ただ、このズボン……脚に合わなくて、ふくらはぎ程度の長さしかないし、袴のように幅が広い。かなり変わったものだけど。


そこに、在庫処分前超特価の運動靴も合わせれば、どこにでもいる町人に見えるはずだ。

緑色の目の男がどこにでもいるわけはないけど、気にしたら負け。


さすがに猫の入館は許してくれないだろうから、ソラには散歩に行ってもらった。




図書館内の、棚で挟まれた狭い通路を、立ち読みしている人とぶつからないよう気をつけながら進んでいく。そのまま新聞がまとめてある場所へ向かった。

割と最近のものは新聞そのままの形で置かれているが、三年より前のものは縮刷され、フィルムに挟んで保管されていた。


これを全部読むのは絶対に無理だ。



右手を差し出し、



旧姓の“代崎香代”、


新姓の“霜月香代”、


“霜月清輝”、


“霜月優香”



の三人の名を念じる。



春日井先生に聞きそびれてお兄さんの名前を知らないから、また今度調べたときに同じ方法をとろう。



追加で



“魔力の移植”、


“魔術”、


“呪い”



についても念じておく。


図書館に置かれている白紙を数枚、重ならないよう並べた。

するとその紙に、関連する記事が勝手に写されていく。


辞書を引く感覚を魔法で再現してみた。



結構記事数あるな。

……これ、全部確認するのか?


嫌な汗が背中を伝う。


ちょっとだるい。



ほとんどが霜月先生や魔術学校の話だろうけど、念のため全部持っていこう。



数十分くらい経ったか。

写し終えた紙を束ねて懐に……あ、落ちた。

着流しだと懐にしまえるけど、今日は普通の服だったな。今は手持ちで勘弁してやる。



来てすぐ出るのも怪しまれそうだったので、棚にあった『高山 風景写真集』という本をパラパラ眺めてから出た。


……雪山っていいよな、静かで。

山小屋から一歩も出ずに、暖炉の前でうたた寝とかしたい。





図書館から少し離れたところの植木の近く、白い猫がこちらをじっと見ている。木の横に立つとソラは肩に乗ってきた。

片手でその背中を撫でる。いつもの重みと体温が、少しだけ緊張をほぐしてくれた。



「新聞、見つかった?」


「ああ。とりあえず関連しそうな記事片っ端から集めてきた。まだ読んでないけど」



手に持っていた、丸められた資料を振って見せた。腹に隠そうか悩んだが、一般の利用者だって調べたものを紙に書いて持ち帰ったりしているし、逆に疑われそうでやめた。


ほとんどの魔導士が入学式に参加しているとはいえ、留守番の組合員に目をつけられたら終わりだ。

ましてや、この依頼をこなしているところを大臣の部下なんかに気づかれたら……最悪な未来の想像をしてしまって、勝手に背筋が凍った。




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