第14話 風の町
入学式の朝。
空は雲ひとつない晴天だった。
昨晩は数人の風属性魔導士が、今日の入学式のために雲を吹き飛ばし、雨の予報から快晴に持っていった。毎年恒例とも言えるそれを誰かが、“逃れられない晴れ舞台”なんて言っていたっけ。
女子生徒の制服は全体が黒色のセーラー服になっており、襟と袖、ネクタイ、スカートの裾に薄花色――薄い青紫色の線が二本走っている。
男子生徒の学ランは襟、袖に同じ色の線がこれも二本ある。
緊張で肩がガチガチで、人形みたいにぎこちなく歩くお嬢ちゃん。
……かわいい、というより、ちょっと笑える。
「優香、気をつけてねー」
「いってらっしゃい」
「いってきます」
緊張と興奮が入り混じった表情で、ハリのある制服をぎこちなく着こなしている。背筋を伸ばして駅に向かう後ろ姿に、小さく手を振った。
大丈夫、お嬢ちゃんならやれる。
――さて、俺も用意して行くかな。
財布を持って、玄関から一歩踏み出した。
お嬢ちゃんには言っていないが、八意高校では、新三年生が魔法で一年生を派手にもてなす行事がある。そう言われると聞こえはいいが、実はそれも進路に直結する大事な課題だったりする。
企業や組合の目が光っているから、下手すれば人生がかかっている。
もてなされる側としてはそれは楽しい入学式になるけど、もてなす側からだとある意味恐怖だろう。
――ということで、今日は首都ミカヅチに人間が集結する日だ。
そのおかげで、町の人通りはまばらだろう。魔術や二年前の火事についての調べものをするなら、今が絶好の機会。
「さて、何から行こうか」
「図書館どうかな? みんな登校していて人少なそうだし」
たしかに。
普段、人が集まる場所とはいえ……魔導士は、学校に行っている組合員の分の仕事を補填しないといけないだろうし、学生は登校している。
秘密裏に調査を進めないといけない身としては、この期を逃すわけにはいかないな。
駅で切符を購入し、早速汽車に乗り込んだ。
カグツチ村の隣にあるシナツ町は、志那都比古神を祀る風の町だ。
台風や暴風被害がないからか、やたらと高層の建物や奇抜な造形物が多い。風の町の名に恥じない、個性の強さだった。
整然とした並木道が印象的で、道の両側には木の椅子が配置され、木陰で涼んだり、のんびり過ごすことができるようだ。
日差しが降り注ぎ、石畳がじんわりとしたぬくもりを帯びている。並木道の木陰では、老人が新聞を広げ、平和で穏やかな空気が流れていた。




