第9話 魔法獣の勉強会
授業で習ったのは、魔法獣は動物の姿をした分身である……ということ。だから本来、術者ができないことはできない。
なのに、俺が召喚した子たちは……俺にはない能力を持っていた。
そんな個体もいるのだろうと、今まで疑問にも思わなかったけど……それってつまり、俺の手を離れているってことじゃないのか?
背筋がひやりとした。
……いや、俺の魔法で生み出した以上、魔法獣以外の何者でもないはずだ。本物を呼び出すなんて無理な話だし。
うーんと唸っているところに話しかけられ、そちらを向くと――先生が、まるで宝物でも見つけたみたいな期待のこもった眼差しで見てくるではないか。
やっぱり、俺の召喚魔法に何か特別なものを感じたらしい。
……嫌な予感。
「ユウナくん。魔法獣の召喚実技講師にならない?」
待て、待て!
答えを濁していたら、校長先生は勝手に盛り上がって、弁当を食べながら魔法獣の勉強会が始まってしまった。まるで俺が、質問しに来た生徒のような扱いで。
ああ……これはしばらく帰れないな……。
***
学校を出て背伸びをする。
調べものをしに来たつもりが、勉強しに来たみたいになってしまった。
でも、発見もあった。
ほかの人が魔法で動物を生み出すと、鼻が効かないとか、牙がないとか、どこかしら欠けているらしい。
なぜかと聞いてみると、魔法獣は外側だけで完成――つまり、内臓や骨格は作らなくてもいいので、生物としては完璧に再現することができない。
動物固有の能力を、こと細やかに具現化する人物がいないからだという。
とくに属性魔法を扱う魔導士は、そういうものを形成するのが苦手だとか。
ちなみに、無属性魔導士の中でも数少ない結界魔導士は、そこら辺は比較的得意な分野。
だから、俺もまあ例外ではないだろうとのこと。
なので、夜中に見た大きくて獰猛そうな犬型の魔法獣が、近くにいた俺とソラに反応を示さなかったのも、そのせいだろう。
案外簡単に研究所に忍び込めるかもしれない。
ルネに現場を見せたら一発で解決しそうだが……いや、だめだ。
あの子を頻繁に呼び出したら、俺が今度こそ死ぬ。本当にどうしようもなくなったときだけにしよう。
今日は傘を置いてきたので、ミカヅチ駅まで徒歩での移動をしていた。
四月の街中は、春の陽気に包まれていた。軽やかな服装の人々が行き交うその風景は、まるで別世界みたいだった。
まさか、この中に一人、研究所に忍び込む算段を立てているやつがいるなんて――誰も思わないだろうな。




