第20話 延命の手段
隣に寄り添うソラが急に「あっ」と耳を立てる。
「妊娠する以外に長生きする方法ってないの?」
「あるよ。霜月香代の娘が、上位精霊と契約すること」
……は?
あまりにも唐突な方法に、思考が追いつかなかった。ソラと二人、身を乗り出した。
「……そんな方法があるのか?」
「上位精霊に魔力の管理をしてもらえばいい。精霊は、人間が使う魔術や魔法の影響を一切受けない。契約することで娘の魔力が安定するし、魔術の影響を精霊が管理するから、妊娠するよりずっと長く延命できる」
――助かるかもしれない。
胸の奥から熱いものが込み上げ、視界がじんわりにじんだ。涙が出そうになり、慌てて瞬きをする。
「なんで今までその方法をしてこなかったんだ?」
思わず声が荒くなる。
今まで散々調べてもなんの手がかりもなかったのに……こんな、あっけないほど明快な方法が。
怒りとも悲しみともつかない感情が、胸の奥で渦巻いた。
「誰も、精霊にそのような力があると知らないから。昔の人間も、現代の人間も、精霊について学ぶ手段がないからね」
ルネの言葉に、肩から力が抜けた。
知られていなかったなら、仕方がない。
それでも、悔しさが残る。
「上位精霊とは簡単に契約できるものなのですか?」
「すごく難しい。一生かけても会えない人間の方が多い」
上位精霊とは精霊界に一体しかいない存在で、下位精霊とは比べ物にならないほど能力が秀でているという。お嬢ちゃんが使う魔法は火属性だから、相性を考えると上位精霊イフリートとの契約が必要だと。
「イフリート、人間好きじゃないから、娘のこと気に入らなかったら契約してくれない。できるだけ説得してみるけど」
ルネが首を傾げ、翼をぎゅっとすぼめた。
そんなに気難しい性格なのか。不安にはなるけど……とにかく、この子には説得をがんばってもらおう。
お嬢ちゃんが長く生きられるのなら、どんな性格の精霊でもいい。
今のうちにやれることは全部やってやる。
あの子を、俺以外の誰が守れる。
――絶対に、負けられない。
希望が見えてきたら、さっきまでの絶望が嘘のように消えていった。気づけば、座卓の下で拳を握りしめていた。
ふつふつとやる気が湧いてくる。
すると、ソラがそっと頬に頭を寄せてきた。
「ソラも、うれしいのか?」
小さな頭を撫でると、ソラは満足そうに喉を鳴らした。




