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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
第7章 自意識

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第18話 解呪の方法


「それは、霜月香代の娘が生き残る方法を教えてほしい、という意味でいいの?」



首を縦に振る。


……魔術の解除なんて、彼女が生きられないなら、意味がない。



神屋大臣が何をしたかとかよりも、こっちの方が自分の中ではずっと価値のあるものだ。



「ユウナ、それは無理かも」



息を吸い込んだ瞬間、体温が一気に下がった。


無理?

無理ってどういうこと?


お嬢ちゃんが……二十歳で……。

――そんなバカな。


あの朝見た笑顔が、もう二度と……?

名前を呼んでくれる、あの声が……。



耳鳴りがして、意識が足元から抜けていくようだった。心臓が喉元までせり上がってきたみたいで、息が苦しい。



「……嘘だろ」



かすれた声が漏れた。


カラスは大きなあくびをし、文書を見つめ直す。

正面に座る鳳さんは、この状況を静かに見守っていた。



「魔術を完全に消滅させるには、娘の魔力をすべて取り除く必要がある。魔術は魔力を媒体としているからね。今ある技術では、魔力保有者から魔力を少量でも奪ってしまうと、例外なく絶命する」



――絶命?



「どうしても娘の存命を希望する場合、科学の進歩速度を考えると、これが達成されるのは五十年後と推測される」



五十年――。

頭がくらくらする。


そんなに待てるわけがない。



ルネは再び言葉を繋げる。



「飯島徹の記憶から、“魔力の縮小化の薬”という存在の情報があったけど、魔力を限りなく空に近い量にしても、魔術は残ってしまう。薬を投与して急に魔力量を減らすと、今までより魔術の負荷がかかるから逆に危険だったかもね」



肥大化の薬は成功していたみたいだった。もし五月の事件で飯島を捕まえられず、そのまま実験が進行していたら、お嬢ちゃんが危なかったのか。



科学の力ではなく、自分の力で解こうと思って魔法関連の本を読み漁っているが、魔術でなくても、呪いと呼ばれるものを解いた者がいない。

それでも、何かできるはずだと信じていたかった。



彼女が寝ている隙に、幾度となく魔法をかけた。けれど、何も変わらなかった。

変わらないまま、時間だけが過ぎていった。


あの子の寝顔に、何度も謝罪の言葉を呟いた夜を思い出す。



「この国にも、ほかの国にも魔術を解除する効果のある魔法を使える人間は存在しない。向こうの次元には、魔術を解ける者はいるけど……説得に応じてくれる者ではなかった」



俺の魔法の正体を突き止めるだけでなく、そんなこともしてくれていたのか……この子は。頼んでもいないのに、ずっと考えてくれていたんだ。

俺が絶望しないように、希望を繋ごうとしてくれていた。



「……ありがとう、ルネ」



そう呟くと、ルネはゆっくり瞬きをした。



「つまり、霜月優香さんにかけられた魔術を解く術はないということですか?」と鳳さん。


「霜月香代の娘の命を無視したら解除はできるけど、それはユウナが望んでいないしね。今のところはない」



ここまで来て……やっと手がかりが掴めると思ったのに。


見かねたソラがすり寄る。



「……ありがとう」



小さな温もりが、張り詰めた心を少しだけほぐしてくれる。ソラのやわらかい毛を指でなでながら、長く息を吐いた。



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