表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
第7章 自意識

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

211/238

第17話 長生きの理由


「女性だけ、二十歳より長く生きている方がおられますが……なぜですか?」


「妊娠中の女性は、お腹の子どもからの生命力のおかげか、多少延命するみたいです。兄弟が多いのもその理由ですね」



「なるほど……」



思わず口から漏れた。


たしかに、一番長く生きている女性の下には、子どもの名前がずらりと並んでいる。



「つまり、男性と、妊娠していない女性は、全員二十歳で亡くなられると?」


「ええ」



鳳さんが静かに頷く。


魔力の移植技術は霜月先生が開発したものになるから、霜月香代さんより前に魔術を受け継いだ人間にはその術がない。子どもの生命力以外の延命方法がなかったから、男性は全員短い生涯だったのだろう。



「結婚している人の割合が人数に対して少なく見えますが、これはなぜです?」


「伝聞になりますが、子どもに遺伝してしまう可能性があるのなら、と自分の代で連鎖を断ち切ろうとした方々かと」



もしそのまま血が絶えてしまっていたら、この魔術は消滅したのだろうが……そうなると、お嬢ちゃんと出会うこともなかった。


家系図を指でなぞってみる。



そういえば、鳳さんの名前がないな。



「つかぬ事をお聞きしますが、この巻物はなぜ鳳さんの家に?」


「父親違いですが、香代とは兄妹でして」



だから、関連する文書を所持しているし、読むこともできると。名前が載っていないのも納得だ。


――ん?



巻物の端に、明らかに不自然な、四角い空白があった。紙が破れたわけではなく、何かを切り取ったような痕跡が。



「……ここ、何があったんですか?」



その部分は何かと問うと、『二十歳まで』の魔術の魔法陣が描かれていたそうで、渡すために切り抜いたという。



「実は、清輝さんにその部分をお渡ししていたのですが、いまだに行方不明ですし……もしかしたら、あのときの火事で燃えてしまったかもしれませんね……」



焦燥が喉を締め上げるようだった。


――まずい。最悪だ。

その大元が一番の手がかりだというのに。


――どうする?


どうすれば……?



頭皮が削れるんじゃないかと思うくらいの力で後頭部を掻きむしった。


せっかく解除方法に近づけたと思ったのに、この仕打ちはあんまりだ。鳳さんに尋ねたところで、魔法陣の形までは覚えていないだろう。



「……鳳さん、これ以外に何か、魔術について書かれたものはありますか?」


「残念ながら。現在、発見された魔術に関する資料はそれだけになります」



「解除の方法などは……知りませんか」



鳳さんは、目を伏せて沈黙した。何か言葉を選んでいるように見える。



「霜月優香さんのことですね……お役に立てず申し訳ありません」



その声は、絞り出すように小さく、そして悔しそうだった。


……責めているわけじゃない。

それでも、鳳さんにそう思わせてしまったのが、つらい。


だめだ、へこたれるな。



鳳さんの許可を得てから、巻物を座卓にすべて広げて並べる。



「ルネ、お願い」



風がふわりと舞い上がったかと思うと、部屋の空気が一変した。低く唸るような音とともに、黒い羽が現れ、精霊がその姿を形作っていく。



「あい」



相変わらず気の抜けた返事に、思わず肩の力が抜ける。

だが、今はそれどころじゃない。


ルネは黙って文書に目を通し、静かに告げた。



「記憶した」


「……ルネ、頼む。どんな方法でもいい。魔術を完全に消滅させる方法を考えてほしい」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ