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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
第7章 自意識

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第15話 高校の理事長


着物市から二週間後。


登校するお嬢ちゃんを見送るとき、なんとなく、いつもより長めに背中を目で追ってしまった。


……いつもと同じ道なのに、今日はなんだか遠く感じるのは気のせいだろうか。


背中が小さくなっていくのを、ただ黙って見ていた。



……さっさと出かける準備をしよう。



玲さんに頼んでおいた、鳳さんとの会合がついに許可され、今から向かうところである。


学校がある日にわざわざ休んでくれたらしく、そちらの方が俺の都合がいいだろうという配慮だった。

ということは、お嬢ちゃんに魔術がかかっていることを知っていると思われる。



勝負服の一つである、紋付きの空色の色無地を羽織り、ソラも連れて家を出た。





鳳さんの家は、首都ミカヅチの端にあるという。いつも降りている駅を越え、さらに二駅。


窓から見える豪邸に目を剥いた。


国宝にでも指定されていそうな、なんて立派な建物だろうか。



汽車を降りて改札を抜けると、男性が一人、丁寧なお辞儀で出迎えてくれた。鳳家の使用人だと名乗る男性に蒸気自動車に乗るよう指示され、それに乗り込む。


敷地を囲む塀をぐるりと回り、駅とは反対側にある門の前に着いた。


一体どんな善行を積んだら、こんな豪邸に住めるようになるというのか。



重厚な門が開いたと思ったら、そのまま車で入って行き、離れの前に止まる。


――庭がすばらしい。


整えられた松の木は、生命力に溢れていた。

目を離したら、動き出すのではないかと思えるほどに。



あっけにとられ、間抜け面をしながら案内された部屋に入ると、写真で見たことがある男性が座っていた。



八意やごころ魔術高等学校理事長、鳳健之助。



肩幅ががっちりしていてたくましいが、目尻のしわが人のよさを感じさせた。


“鳳”なんてかっこいい苗字だから、きっと鋭い目つきで、威圧感のある人なんだろうと勝手に思っていた。それがこんなに穏やかそうな人だったなんて。


……バカバカしい。この、思い込みの激しいところは、一生治らない気がする。



彼は目尻にしわを寄せ、軽くお辞儀をした。



「お初にお目にかかります。鳳健之助と申します」



一度も関わったことのない人だからか、心臓が無駄に早く打っているのがわかる。指先がじんわり汗ばんできた。

それを悟られないよう、できるだけゆっくりと頭を下げた。



「利他ユウナです。本日はお時間いただきありがとうございます」


「いえいえ。それではさっそくですが」



座るように促されてそれに従う。そのすぐ隣にソラが姿勢を正して座った。



座卓の上には、南京錠がついている高価そうな木の箱が置かれている。理事長はその鍵を回し、中から数本の巻物を取り出した。


ずいぶん古い。色あせ、もろくなったそれを開いて渡され、おそるおそる中を覗く。


いやいや……これ、字……だよな?

まるで、ソラのおやつの干した小魚だ。


うねって、ねじれて、読める気がしない。こんな大事そうな巻物なのに、まるでいたずら書きのようだ。



よっぽど険しい顔をしていたのか、鳳さんに笑われてしまった。



「昔の字で書かれていますから。わたしも最初は目が回りましたよ。よろしければ、読みましょうか?」


「あ、いえ。少し驚いてしまっただけですので、問題ないと思います」



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