第14話 運命の着信
家に着いたのと同時に、玄関にいたソラを抱っこする。
あー、この手触り、癒し力高すぎる。
力が強かったのか「ぎゃー」と言いながら肩に移動された。
そのまま台所に行って椅子に寄りかかると、白猫は器用に降りてきて定位置である膝の上に座り直す。
帰り際に、梅ちゃんに渡された封筒の中身を確認した。
お嬢ちゃん、仕事するの初めてなのに……接客がんばってくれたから、いっぱい渡しておこう。
「こ、こんなにいただけません!」
お嬢ちゃんが両手をぶんぶん振りながら、勢いよく封筒を突き返してきた。
……そんな腫れ物のように扱わなくても。
「広告費も含まれているから」
先ほど言ったこと、忘れてはいまい。
しまったという顔をしたがもう遅い。
広告に使えそうな今日の出来事を思い出し、その一場面を魔法で切り出して、紙に印刷。橘屋の名前を入れて完成だ。
結構綺麗な場面じゃないか?
完成した広告紙をお嬢ちゃんに得意げに見せると、いきなり眉をひそめて文句を言われた。
「ユウナさんの顔、ひまわりで隠れてるじゃないですか」
「ああ、わざとだよ。お嬢ちゃんが主役だからね」
空から降るひまわりを背景に、二人が魔法を使っている場面。俺の顔面がすっぽりひまわりで隠れていて、もはや“ひまわり人間”になっている。
でも目立ちたくないし、ちょうどいいと思ったのに……それは却下されてしまい仕方なく顔にかかったひまわりを消した。
すると満足そうに口元をゆるめて機嫌がよくなった。よくわからんがこれでいいらしい。
できた広告はさっそく実家に飛ばした。
あ、そうだ。
懐に手を伸ばし、歌劇の団員にもらった入場券を二枚とも渡す。
南美川くんは、あれは振られたのだろうか……まあ、友だちとでもと言っておくか。
「お嬢ちゃんが昼休憩行ってるときに、歌劇の団員にもらったんだ。友だちと行ってきたらいいよ」
「……じゃあユウナさん、一緒に行きましょう」
少しだけ視線を逸らしながら、小さく言った。
なんだよ、その言い方……ずるいな。そんな顔見せられたら、断れるわけないだろ。
「まあ、いいけど……」
けど、六回は見たぞ。おもしろかったからいいけどさ。
うれしそうに自室に戻る背中を見送ったあと、ソラが膝の上でにやにやしている気配がした。
「ふへへ」と珍妙な笑い声を上げながら、しっぽを揺らしている。
「ユウナの結婚も秒読みかな」
「けっ……」
思わず声が裏返った。
待てまて、猫ちゃん。そんなわけないだろと返そうとして、口が開かなかった。
ソラのしっぽが揺れるたびに、なんだかむずがゆい。心臓がドクドクと鳴って、うるさい。
「おやおや? 否定しないってことは、嫌ではないのだね」
「ちょっ……ソラさん!?」
くそ、今日は浴びるほど酒飲んでやる!
ソラを下ろして寝室に閉じこもろうとした瞬間、廊下に置いてある黒電話が鳴った。
「はい、利他です」
『小鳥遊だ。ユウナ、喜べ。いい知らせを持ってきてやったぞ』
玲さんの話すその内容に、胸が踊った。
「――本当ですか!」
受話器を強く握りしめる。
ついに――八意魔術高等学校理事長、鳳健之助との会合が可能になったのだ。




