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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
第7章 自意識

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第13話 想いの正体


「うちの資料室に花の本はないな。帰りに本屋でも寄って来る?」



「今日は疲れたから学校帰りにでも」と言われて断られた。



持ってきた荷物もだいぶ軽くなり、片付けもさっさと終わってしまった。どうせ魔法で運ぶから関係ないが。



建物の外にかけたひまわりの魔法も解除して退散しようとしたとき、南美川なみかわくんが軽い足取りで紙を持ってやってきた。


昼食のパンがおいしすぎて、賭けのことなんかすっかり頭から抜けていたな。



持っている紙はおそらく、今日の売り上げの記録か何かだろう。南美川くんは、にこやかに笑っているけど、目はどこか真剣だ。



「霜月お疲れ。お兄さんもお疲れさまでした」


「お疲れさま。さっそく結果発表かな?」



小生意気な表情で、今日の売り上げ数が書かれた紙を渡されたので見ると、予約数は圧倒的に南美川呉服店が上回っていたが、店頭販売数は橘屋が多かった。

しかし、捌けた商品の数と言った手前、それらを合計しないといけない。


つまり――



「全部合算したらそちらの勝ちだね」



彼女に気づかれないよう、拳を握った南美川くん。まあ、今回ばかりは素直に負けを認めるしかないか。


……とはいえ、自分の作った細工が、あれだけがんばった努力が、南美川くんの勝利に埋もれたのかと思うと、正直悔しい。


それに……他店の看板娘として起用されるお嬢ちゃんの広告を目にする度に、ちょっと残念な気持ちになるだろう。



俺に向けてくれていたあの笑顔が彼のものになると考えると、胃が痛くて仕方なかった。だけど、負けは負けだ。


落ち込む気持ちを無理やり押し殺し、口を開いた。



「ということでお嬢ちゃん。看板娘の役、がんばってね」



本心からの台詞ではない。ただの虚勢だ。

……二人がこれ以上、仲よくならないことを祈るばかりだ。



「――お断りします」


「「え?」」



南美川くんと声をそろえる。



「もし看板娘やってと言うのなら、橘屋の方をやります。……わたしはここのお店が好きですから。では先輩、また学校で!」



お嬢ちゃんは頭を一度下げて南美川くんに微笑んだあと、足早にその場を去っていった。一瞬見えた顔は、どこかほっとしているようにも見える。


……口に出さなかっただけで、本当は嫌だったのか?



彼は予想だにしなかった衝撃で、売り上げ表を手から落としている。



「お兄さん……俺、今……振られたんですかね……?」



振られた……のか?



「……わかんないや」



どこかうれしいと思っている自分に、ちょっとした嫌悪感が芽生える。

勝ち負けとか、売り上げとか、そういう問題じゃない――いや、そんなふうに考えてる時点で、俺はもう……。



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