第8話 魔導士以外の仕事
俺の横に立って、観客と一緒に見入っているお嬢ちゃんにこそっと「花火、作れる?」と聞くと、問題ないということで好きな場面で出してもらうことに。
くまたちが最後にビシッと決めた瞬間、それに合わせて小ぶりの花火がいくつも上がった。
周りで見ていた人たちが拍手をくれる間に、彼女の手を取って、一緒に頭を下げる。
「『呉服店 橘屋』と申します。本日はこちらの建物内で着物市を開催しております。もしよろしければご覧になってください」
入口には、本物のひまわりでできた小道を作り、自分たちはその間を歩いて戻っていった。視線が集まるのが苦手で、自然と早足になる。
宣伝のためとはいえ、しんどい。
それでも、彼女の魔法が完璧に決まったのは素直にうれしい。自分のことのように誇らしかった。
すごいなあ、やっぱりこの子、魔法の才能あるんだな。
「……宣伝、うまくいきましたね」
「だね」
彼女の笑顔を見て、緊張がふっと和らいだ。
会場から離れた休憩室に連れて行って、大量の氷水で冷やされていた、やかんに入った麦茶を汲んで渡した。蚤の市運営の人らが用意したものだ。
お礼を言って受け取ったあと、喉を鳴らして飲む様子が妙に目に入る。
細い首だな……
慌てて目を逸らすと、自分の耳まで熱くなっているのに気づく。
いや、何考えてんだ。
そんなの、今まで気にしたことなかったのに。
「ユウナさんって……なんだか、多才ですよね」
自分も麦茶を飲みながら、適当な返事をする。
多才ねえ。
魔導士の仕事に飽きたら、舞台演出家にでもなろうかな。絶対表舞台に出ないけど。
「歌劇行ったことないんですけど、どんな感じなんですか?」
「……そうだね、まあ俺も初めてだったけど。楽しげな雰囲気でみんなきらきらしていたかな」
歌劇の内容を軽く話したあと、扉の正面に設置されているかけ時計に目をやり、立ち上がった。
「さてと、そろそろ行きましょうか。看板娘さん」
「からかわないでくださいよ」
そう言いつつも、彼女はちょっとうれしそうだった。早歩きで出て行く彼女の後ろをのんびり追いかけ、会場に戻る。
どうやら宣伝効果はあったようで、人が朝より増えているようだ。
しかし洋装が流行りだした今、買ってくれる人も減ってきているので、一周して帰るお客さんも多い。そこで登場するのが小物や草履といった、お財布に優しいものたちだ。
それらは着々と売り上げを伸ばし、あっという間に残り半分くらいの数になった。
それを見ているお嬢ちゃんが、なんだかそわそわして、眉毛を八の字にしている。
「……どうしたの?」
「いえ……小物余ってたら、買おうかなーと。友だちに」
そんな。他人行儀なこと言って。
言ってくれたら、どれだけでも無料で用意するのに……
「宣伝に付き合ってもらったし、よかったら好きなの作るよ、無料で。お嬢ちゃんの分もね」
そう言うと、彼女ははにかむように頷いた。
どんなものが似合うだろう?とか考えていたら、気づけば頬が緩んでた。唇の端が勝手に上がってて、変な顔になってないか心配になるほどだった。




