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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
第7章 自意識

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201/222

第7話 舞台の演出


開始から一時間、訪問着が一枚と髪飾りが四つ売れた。


着物市の方は朝十時から夕方四時までとなる。それまでに、なんとかして売り上げを伸ばさないといけない。


勝負するからには全力で。



「ねえさま、ちょっと外で宣伝してくる」


「呼び込み? いってらっしゃーい」



暇そうなお嬢ちゃんも連れて行こう。


この子が「先輩、すごいですね!」なんて言いながら南美川くんに感心する姿なんて、考えただけでむかむかする……というか、胸の奥がちくちくする。



建物の外に出ると、日差しがまぶしくて思わず険しい顔になった。

まだ夏本番になっていないから、照りつける太陽さえ無視できたら今日は比較的過ごしやすい気温だ。



多目的施設の周囲には、一般人や企業が変わった品や掘り出し物を売っている。周囲は、それを見に来た人たちで賑やかしかった。


休憩中、隙をみて覗きに行こうかな。



「呼びかけってどうするんですか?」


「一々声かけするのは大変だから、人目を引くようなことでもしようかなと」



もちろん、魔法での演出だ。



「ミカヅチ本部には許可とってあるから、安心して」


「……また無茶なことしないでくださいね」



飯島との戦闘のことを言っているのか?

あのときは死にかけたもんな。


「そんな大それたことはしない」と、編み込まれた毛先に触ると、彼女が照れたように目を逸らした。



空に向かって手のひらを横に振る。

少し待つと、ふわりと小さなひまわりが雨のように降ってきた。これは幻覚なので触ることはできない。


町の一点にひまわりが降っていればそれだけで人が寄ってきそうだけど、それでは『橘屋』の宣伝にならない。

通行人が様子を見に来たので次の魔法だ。


指を鳴らすとどこからともなく、先週から毎日通っている、歌劇で使われていた曲が流れる。ちなみに劇団の許可はとっていない。



「わ、音楽が……」


「最近、首都ミカヅチでやってる歌劇の曲なんだ」



この日のために夜中にこっそり魔法の練習をし、ソラに「うるさい」と足首をかじられた成果を見せてやる。


舞台で見た場面を再現し、召喚したくまのぬいぐるみが軽やかに踊り始めた。

お嬢ちゃんが「すごい……」とつぶやく。その声が今日はやけに心地よかった。



今流している曲は、初めて夜中の町に繰り出した主人公の、緊張と興奮を表すひょうきんな曲調になっている。


実際に見に行った舞台の動きを再現し、ふわふわした茶色のくまのぬいぐるみを魔法で動かす。

具現化したぬいぐるみは、ソラのお気に入りだったやつだ。歩いたり、踊ったりして楽しげに動いていた。



見物人が増えてきたので次の魔法を使う。

手を叩くと、温泉街の景色が立ち上がる。灯籠とうろうのひとつひとつに『橘屋』と店名を入れた。

敷地内を幻覚で夜に変え、星に見立てた灯りを散らし、蛍のような淡い光を地面から溢れさせる。


それを見ていた人たちから歓声が上がった。



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