表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
第7章 自意識

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

199/220

第5話 妄想の被害者


「あっ。先輩、こんにちは。呉服屋さんだったんですか?」


「そう。今日は親父の手伝い。霜月は?」



和やかな雰囲気で話すお嬢ちゃんを見て黙っていると、彼を紹介してくれた。


同じ高校の三年生、南美川なみかわくん。

図書当番で何度か顔を合わせているという。



終始笑顔の二人を交互に見た。



今日のお嬢ちゃんは、紺色の浴衣に大きなひまわりがいくつも描かれているものを着ている。帯は赤色のやわらかい兵児へこ帯で、かわいらしい感じだ。


南美川くんは、黒色の生地に白いひまわりが描かれた浴衣を身につけており、帯は黒色。かっこよさもあり遊び心もある雰囲気に。



……二人で浴衣を合わせてきたように見えて、ちょっと引っかかる。

いや、偶然だろう。そう思おう。


それでも、胸のあたりがちくりと痛んだ。



自分はというと、焦茶こげちゃかすりという、黒い文様がかすれて見える浴衣。そして黄土色の角帯だ。

二人と比べるとずいぶんと大人な佇まいとなっている。


……二人ともなんだか楽しそうだし、仕方ない。ここは年上として空気を読んでおこう。



「あー、じゃあ、邪魔者は退散するね」


「え、行っちゃうんですか?」



お嬢ちゃんが驚いたように声を上げた。


あれ、引き留めてくれるんだ。

……退散と言っても、場所が目の前だから、数歩しか離れていないが。


そのまま若い子たちはその場に置いていき、帯を畳み直している梅ちゃんの所に行った。



「優香ちゃん、いいのかい?」


「学校の先輩なんだって。だから大丈夫」



何が大丈夫なんだ。


喉の奥にざらつくような違和感が広がる。もやもやが胸の奥に引っかかったまま消えない。

口の端から、ため息が零れた。



畳み終わった帯を大きな賞状盆の上に並べ、敷物の隅にそっと置く。


会場は普通の床だったところにわざわざ畳を敷いたらしく、手の込んだ催しであるとわかった。お客さんは入口で靴を脱いで中を見て回る形式だ。


結構時間つぶしはできただろう。

開始時間まであと数分といったところか。



南美川呉服店の方をちらと盗み見ると、まだ二人が楽しそうに話しているのが伺えた。


これは……もしかしてあれか。お嬢ちゃんから学校の話を聞いても同級生のことばかりだったから、年上の恋人ができた可能性は考えていなかった。

でも下の名前で呼んでいなかったから、どうなんだろう?



魔法で新たな髪飾りを作り出しながら悶々とそんなことを考えていると、ねえさまが帳簿を持ってやって来て

「あらー? いいの? 優香ちゃん、なんか楽しそうじゃない?」とかなんとか囁いてくる。



「……突然なに」


「奥手なのも大概にしておきなさいよ」



奥手って。なんなんだ一体。

……放っておいてくれよ、本当に。無視しよう。



「想像してみてよ。好青年くんを連れた優香ちゃんが、ユウナの家に遊びに来る場面を」



……そう言われたら想像してしまった。




「あ、ユウナさん。のみの市のときにできた恋人です。連れてきちゃいました」


「こんにちは。優香がお世話になってるって聞きました。たまに二人で遊びに来させていただきますね!」




……無理。なんか無理。


無性に腹の底が煮えるようなむかむかして、喉が乾く。


……なんなんだよ。



苛立ちが顔に出ていたらしい。にんまりと笑顔を向けてくるねえさまの鼻頭を指で弾いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ