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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
第7章 自意識

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第4話 心のざわつき


荷物はいつものように、魔法で作った小型の木製汽車に乗せて先に飛ばしておいた。



建物内で荷物をほどき、着物や小物を配置する。


お嬢ちゃんが畳まれた着物を見て一々感動しているのがかわいい。


こっそり様子を見ていたら、振り返られたときに目が合って、思わず肩が跳ねた。


見すぎていたか……?

なんだか今日は、彼女を変に意識してしまって、心臓が妙な乱れ方をする。



「何かありましたか?」


「……いや、別に。なんとなく、うきうきしているなーと」



「ふふ、バレてしまいましたか」



父親は忙しくてあまり一緒に出かける機会がなかったから、こういう催しに来られることがうれしいと言った。だから余計に、兄の弘清さんと仲がよかったのかもしれない。



自作の看板も設置したところで店の準備は終わってしまった。


開催時刻まで時間がある。


こんなときソラがいてくれたら、肉球を揉みまくって時間をつぶせるのに。



うろうろしながら時間稼ぎの方法を考えていたとき、ねえさまから「優香ちゃん連れてほかの呉服店でも覗いてきたら?」との提案。



「二人とも暇だろうし、ね?」


「いいんですか? 見に行っても」



「うん、大丈夫。みんな喜ぶと思うよ」



会場の入口から順に回ることにした。


畳の上に絨毯が敷かれ、その範囲内で店を展開することになっている。

置いてあるものは上質なものが多い。若い子向けは、振袖や浴衣くらいだろうか。


お嬢ちゃんが店を覗くたびに「かわいらしいお嬢さん」と「華やかな浴衣」という言葉を聞いた。どこを歩いてもこの子に目線が集まる。



「こんなに褒められると、なんだかこそばゆいですね……」



お嬢ちゃんは耳のあたりを軽く掻きながら、苦笑した。


呉服店は横の繋がりが強く、小さい頃から見たことある顔ぶればかりで、同窓会に参加した気分になる。

自分が連れ回される立場なら気まずいだろうが、度胸があるというか……精神面が大人というか、彼女は比較的平気そうでうらやましい。


そのたくましさはどうやったら身につくのか秘訣を聞いてみたい。そんなことしたら、困惑するのは目に見えているけど。



最後は、この界隈で今一番儲かっていると言われている南美川なみかわ呉服店。うちの店の目の前にある。

橘屋より着物の枚数も多く、店先も色とりどりで華やかだ。



「貸し出しに力を入れたら、一気に盛り上がった店らしいよ」


「……すごいですね」



これは今日、売り上げを持っていかれそうだな……。


かすかな不安が、胸を過ぎる。



「――あれ、霜月?」



首を上げると、浴衣を着た、目鼻立ちのきりっとした好青年が立っていた。



すごい偏見だけど、絶対に運動得意そうだな。


日焼けした肌に、きっちり整えられた短髪。背筋が伸びた立ち姿が、そう思わせる。



なんだろう、こういう系統ってやたら女子に人気あるんだよな……。


見知らぬ青年の登場に、落ち着かない不安が喉の奥をひりつかせた。



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