第4話 心のざわつき
荷物はいつものように、魔法で作った小型の木製汽車に乗せて先に飛ばしておいた。
建物内で荷物をほどき、着物や小物を配置する。
お嬢ちゃんが畳まれた着物を見て一々感動しているのがかわいい。
こっそり様子を見ていたら、振り返られたときに目が合って、思わず肩が跳ねた。
見すぎていたか……?
なんだか今日は、彼女を変に意識してしまって、心臓が妙な乱れ方をする。
「何かありましたか?」
「……いや、別に。なんとなく、うきうきしているなーと」
「ふふ、バレてしまいましたか」
父親は忙しくてあまり一緒に出かける機会がなかったから、こういう催しに来られることがうれしいと言った。だから余計に、兄の弘清さんと仲がよかったのかもしれない。
自作の看板も設置したところで店の準備は終わってしまった。
開催時刻まで時間がある。
こんなときソラがいてくれたら、肉球を揉みまくって時間をつぶせるのに。
うろうろしながら時間稼ぎの方法を考えていたとき、ねえさまから「優香ちゃん連れてほかの呉服店でも覗いてきたら?」との提案。
「二人とも暇だろうし、ね?」
「いいんですか? 見に行っても」
「うん、大丈夫。みんな喜ぶと思うよ」
会場の入口から順に回ることにした。
畳の上に絨毯が敷かれ、その範囲内で店を展開することになっている。
置いてあるものは上質なものが多い。若い子向けは、振袖や浴衣くらいだろうか。
お嬢ちゃんが店を覗くたびに「かわいらしいお嬢さん」と「華やかな浴衣」という言葉を聞いた。どこを歩いてもこの子に目線が集まる。
「こんなに褒められると、なんだかこそばゆいですね……」
お嬢ちゃんは耳のあたりを軽く掻きながら、苦笑した。
呉服店は横の繋がりが強く、小さい頃から見たことある顔ぶればかりで、同窓会に参加した気分になる。
自分が連れ回される立場なら気まずいだろうが、度胸があるというか……精神面が大人というか、彼女は比較的平気そうでうらやましい。
そのたくましさはどうやったら身につくのか秘訣を聞いてみたい。そんなことしたら、困惑するのは目に見えているけど。
最後は、この界隈で今一番儲かっていると言われている南美川呉服店。うちの店の目の前にある。
橘屋より着物の枚数も多く、店先も色とりどりで華やかだ。
「貸し出しに力を入れたら、一気に盛り上がった店らしいよ」
「……すごいですね」
これは今日、売り上げを持っていかれそうだな……。
かすかな不安が、胸を過ぎる。
「――あれ、霜月?」
首を上げると、浴衣を着た、目鼻立ちのきりっとした好青年が立っていた。
すごい偏見だけど、絶対に運動得意そうだな。
日焼けした肌に、きっちり整えられた短髪。背筋が伸びた立ち姿が、そう思わせる。
なんだろう、こういう系統ってやたら女子に人気あるんだよな……。
見知らぬ青年の登場に、落ち着かない不安が喉の奥をひりつかせた。




