表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
第7章 自意識

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

196/212

第2話 宣伝の下準備


のみの市に、多くの呉服店が参加するらしい。うちが少しでも目立つようにしないとな。


つまみ細工の花束を作り、立体の額縁に入れて看板に見立てた。もちろん『橘屋』と店名も入れてある。


ふ、我ながら上出来。



「ユウナ……本当にすごいねえ」



梅ちゃんが朗らかな笑顔で、作った花の看板を撫でた。



「……いや、そんな大したもんじゃないよ」



口ではそう言いつつ、思わず頬が緩んでしまった。

……本当は少しだけ、胸の奥が温かくなっていた。



「それ気に入ったなら、季節の花で何種類か作ろうか?」


「あら、それいいね。蚤の市終わったら店に飾っておこうかね」



「ああ、なんて惜しい……魔導士の道じゃなくて、うちに勤めていたら心強かったのに……」


「物騒なこと言うなよ……」



小一時間ほど話したあと、実家を出た。


照りつける日差しに思わず顔をしかめる。砂利道が白く光り、じりじりと熱が昇ってくる。



湿気を含んだ空気が肌にまとわりついて不快だ。


そんな中、遠くで蝉の声が響いているのが、やけにのどかに思えた。こちらに飛んでこないことを祈ろう。



――蚤の市で人がたくさん来るとはいえ、シャツやズボンといった服が出回り出した今、着物を買う人の数は明らかに減っている。

うちの品はいいものばかりだから問題ない。


……でも、それだけじゃだめだ。


客の目に止まらなければ、どれほど良い品でも売れない。

代々続いてきた橘屋が、あっけなく消えてしまうなんて、やっぱり嫌だ。


今回は本気で宣伝しよう。



……ミカヅチではたしか、何日か前から劇団が来ていて、公演をしているとかなんとか。目を引くような演出は何かしらの参考になるだろう。


首都ミカヅチ行きの切符を購入し、汽車に乗り込んだ。



……お嬢ちゃんも誘ってみたらよかったかな。

目をきらきらさせながら熱心に音楽劇を見ている様子が、なんとなく頭に浮かぶ。

隣でそんな顔を見られたら、こっちまでうれしくなりそうだ。


想像するだけで、幸せがふわりと胸に灯るような、くすぐったいような気持ちになる。



……一緒に笑って、話して、そのまま帰り道もずっと――いや、何を余計なこと考えているんだ。それでは、ただ彼女と出かけに行っただけになるじゃないか。



首を左右に振り、無理やり気持ちを切り替える。

でも、車窓に映った自分の顔は、どこか不満げで、つい苦笑した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ