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魔導士は白猫を飼っている  作者: 汐田 伊織
第7章 自意識

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第1話 蚤の市


地獄のような蒸し暑さだった。


梅雨が明けたと思ったのも束の間、急に降った大雨が地面に染み込み、その水蒸気がもわっとまとわりつく。首筋に流れる汗が、じっとりと背中に張りついて気持ち悪い。


めまいがしそうなほどの息苦しさに、思わず浴衣の襟元を引っ張った。



村全体に漂う不愉快極まりない空気を吸い込みながら、育った家に帰ろうとしている。


今朝方突然、ねえさまから呉服店に来てほしいと電話があったのだ。



ソラは相変わらずついて来なかった。





本家にある作業場を覗くと、梅ちゃんとねえさまがたくさんの着物に囲まれて何かを選んでいた。



「おはよう。何かあった?」


「いいから、ちょっと座んなさい」



梅ちゃんに座布団に座るよう指示されたので正座する。


まさかの説教か?

……思い当たるものが多すぎて。



「来週、のみの市があるんだけど、うちの店も出ることになってさ。よかったら、店に立ってくれないかなーって」



ねえさまが眉尻を下げて笑う。



「……店員としてってこと?」



二人とも頷いた。


――予想外すぎて、思わず言葉が詰まった。

頭の中では、ついさっきまで説教の予想をしていたというのに。



首都ミカヅチで夏に開催される蚤の市。

骨董品や手作りの品など、一般人や企業が様々な物を出品する行事だ。


どういう風の吹き回しか、今回は初めてそれに出店するということらしい。



部屋中にかけられた着物や小物は、出品するものってことね。



「ユウナがいたら男性客も話しかけやすいかと思って」


「ああ、なるほど……って、橘屋にも男性従業員いたよね」



二人としか基本、話さないが、橘屋もちゃんとした店なので従業員は何人かいる。辞めていなければその中に男性もいたはずだ。



「そりゃあ、いるけどさ。女性客釣るためでもあるんだから。お願いね」



なんだそれ?



「……俺って、客寄せ枠なのかよ」



冗談めかして言ったけど、ちょっとだけ複雑な気分だった。

依頼料もくれると言うからとりあえず了承したが、理由が納得できない。


かけられた着物をちらりと見る。



「……お嬢ちゃん、誘ってもいい?」


「ぜひ! あ、でも、楽しいかわかんないけどね」



お客さんじゃなくて、店員だもんな。


でも……彼女が着飾った姿で歩き回る姿を見たい。にこにこと笑顔を振りまいてほしい……俺に。


……いや、何を考えているんだ。別に、そういう意味じゃ……。



今、ひどく間抜けな思考回路になっている気がする。落ち着こう。



どうせ出店するのなら売り上げに貢献しようかと思い、つまみ細工という小物を魔法で作った。

つまみ細工とは、小さな布を組み合わせて花などの形を作る技術で、髪飾りや置物なんかに使われる。



今は夏の始めだから、朝顔やひまわりなどを中心にかんざしや耳飾り、帯留めに。


つまみ細工を作り始めると、気づけば無心になっていて、花びらを重ねることが、まるで呼吸のようになっていた。

布を折って、花びらを組み立て、次々と色を合わせていく。気づけば草履や下駄の鼻緒部分まで同じ細工で埋まっていて、華やかな一式が出来上がっていた。



「うわっ、えっ、すごい! えっ、ちょっと! ほしい!!」


「……落ち着いて喋ってくれない?」



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